矢田部英正とは|たたずまいの美学・坐の文明・日本人の身体技法・椅子|思想家図鑑 No.27|GETTA文化身体論

思想家図鑑 No.27
YATABE HIDEMASA / 1967– / たたずまい・坐の文明

矢田部英正とは|たたずまいの身体技法

体操競技と整体の経験から、日本人の立ち居振る舞い=たたずまいを身体文化として探究し、坐・歩・呼吸の作法を問い直す身体技法研究家。椅子作家でもある。足元から姿勢を組み直すその仕事は、GETTAの身体観と深く重なる。

一次文献 4件読了 約10分身体文化・身体技法思想家図鑑 No.27
DEFINITION / 定義矢田部英正(やたべ ひでまさ, 1967–)とは、日本人の立ち居振る舞い=たたずまいを身体文化として探究し、坐る・歩く・呼吸するといった日常の作法に宿る身体技法を問い直す日本の身体技法研究家である。日本身体文化研究所代表。筑波大学で体操競技を専門とした後、整体を学び、椅子作家としても活動する。
SECTION 01

人物と経歴

1967年生まれ。筑波大学大学院体育研究科修了。大学では体操競技を専門とし全日本選手権・インカレに出場、選手時代の姿勢訓練が高じて日本の修行・芸道の身体技法研究へ向かった。整体協会で研鑽の後に独立し、日本身体文化研究所を主宰。武蔵野美術大学・放送大学講師、椅子作家としても知られる。

SECTION 02

たたずまいの美学──日常動作に宿る型

立つ・坐る・歩く

矢田部は、立ち居振る舞いという何気ない日常動作に、文化が育んだ精緻な身体技法が宿ることを示した。美しいたたずまいは、無駄なく重力と調和した身体の在り方である。

坐の文明

正座・あぐら・端座――日本の坐の文化は、独自の身体感覚と精神性を育んできた。矢田部は『坐の文明』で、坐ることの身体技法史を描いた。

SECTION 03

椅子と日本人のからだ

椅子作家でもある矢田部は、『日本人の坐り方』などで、洋式の椅子座が日本人の身体に与えた影響を問うた。道具(椅子)が身体技法を規定するという視点は、モースの身体技法論を日本の生活へと具体化したものである。

SECTION 04

主要著作ガイド

主著に『たたずまいの美学』『美しい日本の身体』『日本人の坐り方』『坐の文明』『からだのメソッド――立居振舞いの技術』『椅子と日本人のからだ』がある。いずれも日本の身体文化を主題とする。

SECTION 05

誤解と正しい理解

誤解「たたずまいは生まれつきの美しさ」──正しくない。たたずまいは後天的に習得される身体技法であり、坐・歩・呼吸の作法を通じて誰もが組み直せる。だからこそ身体文化として伝承・更新できる。

SECTION 06

GETTA思想体系との接続──足元から姿勢を組み直す

矢田部の「日常動作に宿る身体技法」は、GETTAの実践そのものである。椅子座と既製の靴で痩せた現代の身体技法を、足元から組み直す――一本歯下駄は、立つ・歩くという日常動作のたたずまいを更新する装置である。重力と調和し、無駄なく釣り合う身体は、矢田部が説く美しいたたずまいと、GETTAが目指す腱優位の身体が出会う地点である。

SECTION 07

日本の身体技法の詳説

重心と垂直軸

美しいたたずまいは、重心が骨格に乗り、無駄な力みのない垂直の軸をもつ。

呼吸と姿勢

坐や立ちの作法は、深い呼吸と分かちがたく結びつく。

履物と歩き

草履・下駄といった履物は、足裏で地を捉える歩きを育ててきた。

道具がからだをつくる

椅子・机・畳――生活の道具系が、日本人の身体技法を形づくってきた。

近代化と喪失

洋式生活への移行は、坐の文化と日常の身体技法を痩せ細らせた。

SECTION 08

たたずまいの射程と関連

健康と姿勢

重心の据わった姿勢は、無理のない身体の使い方と結びつく。

デザインと身体

椅子・家具のデザインは、身体技法を規定する道具系として捉えられる。

関連概念

本図鑑の 身体技法・ナンバ・型 とあわせて読みたい。

SECTION 09

姿勢の文化史と日本のからだ

矢田部は、立つ・坐る・歩くといった基本動作の様式が、歴史と文化のなかで形づくられてきたことを丹念に描いた。畳に坐る生活が育てた重心の低い身体、草履や下駄が促した足裏で地を捉える歩き――日本のからだは、独自の道具系と環境のなかで培われてきた。

近代の洋式生活は、椅子座と革靴を標準とし、こうした身体技法を急速に痩せ細らせた。矢田部の仕事は、失われつつある身体の文化を記録し、その合理を現代に活かす道を探るものである。

SECTION 10

椅子という思想──道具とからだ

椅子作家でもある矢田部にとって、椅子は単なる家具ではなく、身体技法を規定する思想の結晶である。どのような椅子に坐るかは、どのように身体を使うかを決める。彼は、日本人の身体に合った坐の在り方を、職人的な制作と理論的な探究の両面から追求している。

道具が身体をつくるというこの視座は、モースや川田順造の身体技法論を、現代の生活デザインへと具体化したものといえる。

SECTION 11

日本のからだと姿勢の文化史

矢田部は、立つ・坐る・歩くという基本動作の様式が、歴史と文化のなかで形づくられてきたことを丹念に描いた。畳に坐る生活が育てた重心の低い身体、帯が支えた胴の安定、草履や下駄が促した足裏で地を捉える歩き――日本のからだは、独自の道具系と環境のなかで培われてきた身体技法の総体である。美しいたたずまいとは、重力と調和し、無駄な力みのない、釣り合った身体の在り方を指す。

近代の洋式生活は、椅子座と革靴を標準とし、こうした身体技法を急速に痩せ細らせた。重心は浮き、呼吸は浅くなり、足裏は地の感覚を失っていく。矢田部の仕事は、失われつつある身体の文化を記録し、その合理を現代に活かす道を探るものである。椅子作家としての制作も、日本人の身体に合った坐の在り方を追求する実践である。

道具が身体をつくるというこの視座は、モースや川田順造の身体技法論を、現代の生活デザインへと具体化したものといえる。どのような椅子に坐り、どのような履物で歩くかは、どのように身体を使うかを決める。たたずまいの美学は、日々の道具と動作のなかに、身体文化の再生の鍵があることを教えている。

PRIMARY SOURCES / 一次文献・学術ソース

一次文献・学術ソース

本ページの記述は以下の一次文献・権威データベースで裏取りしている。

FAQ / よくある質問

よくある質問

Q. 矢田部英正とはどんな人物ですか?
日本人の立ち居振る舞い=たたずまいを身体文化として探究する身体技法研究家(1967–)です。日本身体文化研究所代表で、椅子作家でもあります。
Q. たたずまいの美学とは何ですか?
立つ・坐る・歩くといった日常動作に宿る身体技法に注目し、重力と調和した無駄のない美しい身体の在り方を論じる矢田部の主題です。
Q. 『坐の文明』の主題は?
正座・あぐら・端座など日本の坐の文化が育んだ身体感覚と精神性を、坐ることの身体技法史として描いた著作です。
Q. 椅子と身体の関係をどう論じましたか?
洋式の椅子座が日本人の身体に与えた影響を問い、道具が身体技法を規定するという視点を示しました。椅子作家としての実践とも結びつきます。
Q. 矢田部とモースの関係は?
道具(椅子・履物)が身体技法を規定するという矢田部の視点は、モースの身体技法論を日本の生活へ具体化したものといえます。
Q. たたずまいは生まれつきですか?
いいえ。たたずまいは後天的に習得される身体技法であり、坐・歩・呼吸の作法を通じて誰もが組み直せます。
Q. 矢田部英正の主著は?
『たたずまいの美学』『美しい日本の身体』『日本人の坐り方』『坐の文明』『からだのメソッド』などです。
Q. GETTA(一本歯下駄)との関係は?
椅子座と既製の靴で痩せた身体技法を足元から組み直す点で、一本歯下駄は矢田部の説く美しいたたずまいの更新と重なります。
THE ART OF BEARING

立つこと、坐ることに、文化が宿る。

何気ない立ち居振る舞いに、文化が育んだ精緻な身体技法が宿る。美しいたたずまいは、重力と調和した無駄のない身体だ。

椅子座と既製の靴で痩せた身体を、足元から組み直す。一本歯下駄は、たたずまいを更新する。