ティール組織とは?──世界最大規模のティール組織図鑑|文献・論文・事例・批判的考察|合同会社GETTAプランニング

ティール組織とは?──世界最大規模のティール組織図鑑|文献・論文・事例・批判的考察|合同会社GETTAプランニング
WORLD’S LARGEST TEAL ENCYCLOPEDIA

ティール組織とは何か。
世界の最前線を、図鑑にする。

フレデリック・ラルー『Reinventing Organizations』(2014)を起点に、オランダ・米国・英国・ドイツ・デンマーク・フィンランド・フランス・ベルギーから日本まで、20カ国以上の自主経営組織研究を網羅。学術論文・書籍・公的レポート・先進企業事例を一覧化し、関連理論まで体系化した日本最大規模の図鑑。

さらに本記事は、ティール組織の構造的限界を文化身体論から論理的に検証し、大脳設計の組織モデルでは届かない次なる地平──身体知に根ざした組織パラダイム──への道筋を提示します。

12事例
Pioneer Cases
20カ国
Research Coverage
50+
Papers and Books
10
Encyclopedia Sections
01
PROLOGUE ── 序章

なぜ今、ティール組織が世界の経営者を惹きつけるのか

2014年、ベルギー出身のフレデリック・ラルー(Frederic Laloux/元マッキンゼー・アンド・カンパニー アソシエイトパートナー)が著した『Reinventing Organizations』は、組織開発の世界に静かな地殻変動を起こしました。出版後10年で累計100万部超、世界20カ国以上で翻訳された本書は、日本でも2018年に英治出版より邦訳刊行され、嘉村賢州氏の解説を得て経営者・人事責任者・組織開発実務家の必読書となっています。

CONTEXT 01 ── 時代背景

なぜピラミッド型組織は機能不全に陥っているのか

ラルーは「組織はその時代の支配的な世界観の表現である」と主張します。産業革命期に確立されたヒエラルキー型組織は、長期計画とスケールの実現には有効でしたが、VUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代には機能不全に陥りつつあります。ピラミッドの底辺の人々は無力感と諦念に苛まれ、頂点の人々はストレスと政治と相互不信に圧迫される──ラルー本人がマッキンゼー時代に経営層との対話を通じて目撃した光景でした。

CONTEXT 02 ── 研究方法

12の先進事例をどう抽出したか

ラルーは「設立から5年以上、社員数100名以上、ティール段階の経営慣行を相当数実装している組織」という条件で世界中から50以上の組織を予備調査し、最終的に12のパイオニア企業を3年かけて深く取材・分析しました。学校から家族経営、上場企業まで業種は多岐にわたり、規模も100名から40,000名(AES)まで幅広い。これらの企業は互いに存在を知らずに、似た原理に到達していました。

In Evolutionary Teal, we shift from external to internal yardsticks in our decision-making.
(進化的ティール段階では、意思決定の物差しが外部から内部へと転換される。)— Frederic Laloux『Reinventing Organizations』(2014)
CONTEXT 03 ── 知的系譜

ケン・ウィルバーとクレア・グレイヴスの影響

ラルーの色分けモデルは、米国の哲学者ケン・ウィルバー(Ken Wilber)のインテグラル理論、心理学者クレア・W・グレイヴス(Clare W. Graves)の「人間存在のレベル理論」、それを発展させたドン・ベッククリス・コーワンのスパイラルダイナミクス(Spiral Dynamics)に思想的な源泉を持ちます。ラルー自身が認めるように、ティール組織論は単独の発想ではなく、半世紀にわたる発達心理学・意識研究の系譜の上に構築されています。

CONTEXT 04 ── 日本での受容

日本でなぜここまで支持されたのか

日本では2018年の邦訳以降、嘉村賢州氏(NPO法人場とつながりラボhome’s vi 代表理事/東京工業大学リーダーシップ教育院)、武井浩三氏(ダイヤモンドメディア創業者)、佐宗邦威氏(BIOTOPE代表)、入山章栄氏(早稲田大学)らによって理論と実践の橋渡しが進みました。ホワイト企業大賞2017受賞のダイヤモンドメディアを筆頭に、ガイアックス、ネットプロテクションズ、面白法人カヤックなど多くの日本企業が独自にティール的経営を模索しています。関連する身体論からの組織思想はGETTAの思想体系転移する文化資本でも展開しています。

02
EVOLUTIONARY MODEL ── 5段階モデル

組織の進化──5つのパラダイムを色で読む

ラルーは人類の組織発達を5段階に区分し、各段階に色を割り当てました。これは「過去のすべてを否定して新しいものに置き換える」のではなく、各段階が持つ価値を含みながら超えていく(include and transcend)という発達モデルです。各段階は約10万年の歴史の中で、特定の課題に応答するために生まれてきました。

RED ── 衝動型

レッド組織
「狼の群れ」

B.C.10000〜/登場:マフィア・ギャング・ストリートギャング

恐怖に基づく支配。リーダーがメンバーを力で従わせる構造。短期志向で、混沌とした環境では強いが、複雑性に弱い。階層は流動的で、リーダーの力が衰えると即座に崩壊する。

ブレイクスルー:分業/指揮権の集中
AMBER ── 順応型

琥珀組織
「軍隊」

B.C.4000〜/登場:軍隊・カトリック教会・公的機関

厳格なヒエラルキーと役割の固定化。形式化されたプロセスで長期計画を実現。安定性と再現性に優れるが、変化への適応は遅い。「正しい一つのやり方」を信じる。

ブレイクスルー:長期視点/ピラミッド階層
ORANGE ── 達成型

オレンジ組織
「機械」

産業革命〜/登場:多国籍企業・現代資本主義企業

現代の支配的パラダイム。組織を機械として捉え、目標達成・効率・競争を重視。階層は維持されるが、メリットクラシー(実力主義)で個人の達成が報酬される。「より速く、より多く、より大きく」。

ブレイクスルー:イノベーション/成果主義/メリットクラシー
GREEN ── 多元型

グリーン組織
「家族」

20世紀後半〜/登場:価値観経営企業・NPO・社会的企業

ピラミッドは残るが、文化と権限委譲を重視。多様性とステークホルダーモデル、ボトムアップ意思決定。社員はファミリー。サウスウエスト航空、ベン&ジェリーズ、スターバックスなどが典型例。

ブレイクスルー:権限委譲/ステークホルダー/企業文化
TEAL ── 進化型

ティール組織
「生命体」

21世紀〜/登場:Buurtzorg・Morning Star・Patagonia等

組織を生命体と捉え、複雑適応系として運営。固定的階層を解体し、自己組織化する流動的な仲間関係(peer relationships)で成り立つ。3つのブレイクスルー(自主経営/全体性/進化目的)を実装。

ブレイクスルー:自主経営/全体性/進化目的

ORGANIZATIONAL EVOLUTION ── 組織進化の螺旋

RED 衝動型 B.C.10000 AMBER 順応型 B.C.4000 ORANGE 達成型 産業革命〜 GREEN 多元型 20C後半〜 TEAL 進化型 21C〜 COMPLEXITY ↑ 複雑性

出典:Frederic Laloux『Reinventing Organizations』(2014) を基に作成。各段階は前段階を含みながら超える「include and transcend」モデル。

03
THREE BREAKTHROUGHS ── 3つのブレイクスルー

ティール組織を定義する三つの構造的飛躍

ラルーがティール組織から抽出した三つの本質的特徴。これらは互いに依存しあう三本柱(pillars)であり、一つだけを取り出して導入しても機能しません。Morning Starが自主経営は徹底するが他二つは弱い、というラルー本人の指摘も重要です。

01

自主経営

SELF-MANAGEMENT

階層やコンセンサスではなく、ピア(仲間)関係に基づく組織運営。中間管理職を廃し、固定的な組織図をなくす。「上司なしのリーダーレス」ではなく、「全員がリーダー」のシステム。Morning Star社の創業者Chris Ruferは「うちでは全員がマネージャーだ。なぜなら全員が業務遂行の責任を負い、同僚に対して説明責任を持つから」と語ります。

KEY MECHANISM助言プロセス(Advice Process):意思決定者は影響を受ける関係者と専門家に「助言」を求めるが、最終決定は本人が下す。コンセンサスではなく、分散的決定。
02

全体性

WHOLENESS

職場で「プロのマスク」をかぶることをやめ、人間の全体性(理性・感情・直感・スピリチュアリティ)を持ち込む。従来の組織が「仕事に必要な部分」だけ切り取って雇用してきたことへの根本的な異議申し立て。心理的安全性(Psychological Safety)と密接に関連するが、それを超えて、人間そのものの統合性を回復させる試み。

KEY PRACTICESチェックイン/チェックアウト・ミーティング、ストーリーテリング、リフレクション・スペース、葛藤解決プロセス、自己評価360度フィードバック等。
03

進化目的

EVOLUTIONARY PURPOSE

組織を「魂を持った存在」として捉え、その存在目的(purpose)に耳を澄ませる。経営者がトップダウンで戦略を立てるのではなく、「組織はどう生きたがっているか」を聴き取り、それに従う。ラルーはこれを「listening to life how it wants to be lived」と表現します。固定的な戦略計画から、感知と応答(sense and respond)への転換。

KEY PRACTICESパーパス・ジャーニー、組織を擬人化した対話、「empty chair」(不在の声を聴く座)、戦略計画ではなく方向感覚(north star)、競合ではなく協働。
「機械的な組織観の時代は終わりつつある。組織は生きている。組織は方向性を感知する能力を持っている。経営者はそれに耳を傾けることができる──エンジニアではなく、庭師のように。」— Frederic Laloux インタビュー(2024年、Conscious Entrepreneur Podcast)
04
PIONEER CASES ── 世界の先進12事例

ラルーが3年かけて取材した12のパイオニア企業

ラルーが詳細にケーススタディした12組織。業種は在宅看護、トマト加工、自動車部品、アパレル、教育、エネルギー、精神医療など多岐にわたる。クリックして詳細を読み、参考文献・公式サイトリンクを参照ください。

2006年、看護師Jos de Blok(ヨス・デ・ブロック)が「管理職のいない看護組織」というコンセプトでオランダのアルメロで4名の看護師と創業。20年弱で看護師10,000名以上、850以上の自主経営チームに成長。一チームは10〜12名の看護師で50〜60名の患者を担当し、ケアプラン・採用・予算・スケジュールの全てを自主決定する。

実証された成果(KPMG調査・2015)

  • 間接費比率:8%(業界平均25%を大幅に下回る)
  • 同等ケアに要する時間が業界平均より少ない
  • 患者の自立回復が早く、緊急入院・入院期間ともに減少
  • オランダ「Best Employer」を5年中4回受賞
  • 2008年・2013年に患者満足度全国一位

組織原理

「Humanity over Bureaucracy(官僚制より人間性)」をテーゼに掲げる。バックオフィスは50名のみで10,000名を支援。テクノロジー・プラットフォーム「Buurtzorg Web」が情報共有とピアラーニングを支える。日本・スウェーデン・英国・米国・ノルウェーなど25カ国以上で導入実験が進行中。

REFERENCES ── 参考文献・リンク
  • Buurtzorg公式サイト(オランダ語/英語):buurtzorg.com
  • Gray, B.H. & Sarnak, D. O. (2015). “Home Care by Self-Governing Nursing Teams: The Netherlands’ Buurtzorg Model” Commonwealth Fund:commonwealthfund.org
  • Kreitzer, M. J., et al. (2015). “Buurtzorg Nederland: A Global Model of Social Innovation” PMC4311562
  • Kruse, F. M., et al. (2024). “Implementing Buurtzorg-derived models in the home care setting: a Scoping Review” PMC11080323
  • de Blok, J. & Pool, A. (2010) 『Buurtzorg: Menselijkheid boven Bureaucratie』(オランダ語原著)
  • Nandram, S. S. (2015) “Organizational Innovation by Integrating Simplification: Learning from Buurtzorg Nederland” Springer

1970年、Chris Rufer(クリス・ルーファー)が創業した米国カリフォルニア州のトマト加工会社。世界の加工トマト全消費量の約40%を扱う巨大企業でありながら、肩書きも管理職も存在しない。約500名の正社員と季節従業員で構成され、年間売上は約7億ドル超。

独自の運営システム

  • CLOU(Colleague Letter of Understanding):各人が同僚と直接交渉して、自分の役割・責任・KPIを明文化した「相互理解の手紙」を結ぶ
  • 「全員がマネージャー」原則:誰もが業務に必要なリソース調達権を持ち、同僚への説明責任を負う
  • 給与は同僚レビューで決定。給与査定パネルが従業員主導で運営される
  • 葛藤は当事者間で解決、必要なら第三者調停(mediation)に進む明示的プロセス

マネジメント研究の権威Gary Hamel教授がHBR誌でMorning Starを「マネジメントなしの経営」と評した際、Rufer本人は「違う、全員がマネージャーだ」と訂正したエピソードは有名です。

REFERENCES ── 参考文献・リンク
  • Morning Star Self-Management Institute:self-managementinstitute.org
  • Morning Star公式:morningstarco.com
  • Hamel, G. (2011). “First, Let’s Fire All the Managers” Harvard Business Review, December 2011
  • Hamel, G. & Zanini, M. (2020) 『Humanocracy: Creating Organizations as Amazing as the People Inside Them』Harvard Business Review Press
  • Frédéric Laloux, “Reinventing Organizations” Chapter 2.2 (Morning Star case)

フランス北部Hallencourtの銅合金鋳造メーカー。自動車向けギアフォークの製造で世界市場の約50%を持つ。1983年に新CEOとして就任したJean-François Zobrist(ジャン=フランソワ・ゾブリスト)が階層を解体し、自主経営型ミニファクトリー組織に転換。

変革の前提

Zobristが繰り返し述べた哲学:「人間は本質的に善であり、信頼に値する」。これに基づき、タイムレコーダー廃止、目標設定の現場委譲、生産計画の自主決定、利益分配の透明化などを実装。

  • 20以上の自律的「ミニファクトリー」(顧客別・製品別)に組織を分解
  • ミニファクトリーごとにリーダーを置くが、リーダーは管理者ではなく「コーチ・調整者」
  • 従業員の遅刻・欠勤がほぼゼロ、不良品率が業界最低水準
  • 30年以上にわたり中国・インドからの低価格競争に勝ち続けた稀有な事例
REFERENCES ── 参考文献・リンク
  • FAVI公式サイト:favi.com
  • Zobrist, J-F. (2014) “How I Defeated the Pyramid: A Liberating Approach to Management” (英訳版)
  • Carney, B. M. & Getz, I. (2009) 『Freedom, Inc.』Crown Business

1973年、登山家Yvon Chouinard(イヴォン・シュイナード)が創業。アウトドアアパレル業界のグローバルブランドであり、ティール的経営の先駆者として知られる。2022年、シュイナード家族は会社の所有権をすべて環境保護を使命とする信託・NPOに譲渡し、世界に衝撃を与えた。

進化目的(Evolutionary Purpose)の徹底

2018年に企業ミッションを「最高の製品を作り、不必要な悪影響を最小限に抑え、ビジネスを手段として環境危機の解決に取り組む」から「私たちは故郷である地球を救うためにビジネスを行う」へと変更。「Black Friday」に「Don’t Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」という反消費広告を展開。

  • 従業員のワーク・ライフ・バランス重視(オフィスにサーフボード置き場・育児施設)
  • 「Let My People Go Surfing」という有名な人事ポリシー
  • 売上の1%を環境保護団体へ寄付(1% for the Planet設立企業)
  • 修理推奨・リサイクル製品ライン(Worn Wear)
REFERENCES ── 参考文献・リンク
  • Patagonia公式:patagonia.com
  • Chouinard, Y. (2005) 『Let My People Go Surfing』Penguin Books
  • Chouinard, Y. & Stanley, V. (2012) 『The Responsible Company』Patagonia Books
  • “Earth Is Now Our Only Shareholder” (2022) Patagonia公式声明:patagonia.com/ownership

1990年、Joachim Galuska医師が創業した精神医療・心理療法の病院グループ。ドイツ・バイエルン州を中心に約600名のスタッフを擁し、年間約7,000名の患者を治療する。「医師―患者」の従来モデルを超え、「人間―人間」の関係性を中核に据えた医療を実装

独自の組織慣行

  • 毎週月曜の全員集会(Großgruppenmeditation/200名以上の瞑想会)
  • 意識発達と組織発達を統合した独自モデル「Mindful Organization」
  • クリエイティブ・カンファレンス、ストーリーテリング、社員主導のフィードバックプロセス
  • 医療の意思決定を医師と看護師の協働へ大幅に分散
REFERENCES ── 参考文献・リンク
  • Heiligenfeld Kliniken公式:heiligenfeld.de
  • Galuska, J. (2017) 『Den Menschen verpflichtet: Werteorientierte Unternehmensführung』(ドイツ語)
  • Galuska, J., et al. “Mindful Organization Development: Heiligenfeld Hospitals” (Conference papers)

1970年、Robert Koski(ロバート・コスキ)が創業した油圧スクリューバルブ製造企業。ニューヨーク証券取引所上場の公開企業でありながら、ティール的経営原理を実装した稀有な事例。タイトル・職位・組織図は最小化され、自然に形成されるネットワーク的組織で運営された。

  • 形式的肩書きなし、組織図なし、職務記述書なし
  • 給与は本人と同僚との対話で決定
  • 40年以上にわたり利益を出し続け、業界平均を上回る成長率
  • 2018年にHelios Technologies社へ社名変更し、買収統合へ
REFERENCES ── 参考文献・リンク
  • Helios Technologies(旧Sun Hydraulics):heliostechnologies.com
  • Koski, R. (2009) “Doing the Right Things Right” Sun Hydraulics社史

1981年創業、Dennis BakkeとRoger Santが共同創業した米国の電力企業。最盛期には世界31カ国・40,000名のスタッフを抱える巨大組織でありながら、ラジカルな自主経営を実装。財務・投資判断のような重要決定すら現場の従業員へ委ねた。

The “Honeycomb” Organization

蜂の巣型組織と呼ばれる構造で、各発電所が10〜20名の自主経営チームで運営された。1990年代の絶頂期には毎年20%超の成長を続けたが、2001年エンロン破綻と電力市場危機を契機に従来型組織へ後退。それでも初期20年の成功はティール組織が大規模・上場・規制業界でも機能しうることの実証として残る。

REFERENCES ── 参考文献・リンク
  • AES Corporation公式:aes.com
  • Bakke, D. W. (2005) 『Joy at Work』PVG
  • Bakke, D. W. (2013) 『The Decision Maker』PVG

2007年、ベルリンに設立されたプロテスタント系中等学校。創設者Margret Rasfeldが「教師―生徒」関係を脱構築し、生徒主導の学習プロセスを設計。従来の時間割・科目・テストを大幅に見直し、自己組織化された学びを実装。世界の教育者から注目を浴びる。

  • 「Learning Office」と「Buchstabenfest」など独自のプログラム
  • 学年混合のチーム(家族)で課題を協働で解決
  • 「責任」「挑戦」を中核科目とする
  • 「Ich-Stärken」(自己の強み)を重視したパーソナル成長
REFERENCES ── 参考文献・リンク
  • ESBZ公式:ev-schule-zentrum.de
  • Rasfeld, M. & Breidenbach, S. (2014) 『Schulen im Aufbruch』Kösel-Verlag

1976年、オランダの起業家Eckhart Wintzenが創業したITコンサルティング企業。「細胞分裂モデル」と呼ばれる独自の組織原理を実装し、ピーク時は20年間以上にわたって40カ国・10,000名規模で成長を続けた。

細胞分裂モデル

「各ユニットは50名を超えると分裂する」というシンプルな原則で組織を運営。各ユニットが独立した損益責任・採用権限・営業権限を持ち、自然な拡大とともに分裂を繰り返した。1996年Philipsとの合弁を経て、新オーナーがオレンジ型のマネジメントへ戻したことで、わずか数か月でティール文化が消失した──ラルーが警告する「経営者・株主の意識が伴わない場合の崩壊リスク」の代表事例。

REFERENCES ── 参考文献・リンク
  • Wintzen, E. (2007) “Eckart’s Notes” Lemniscaat(オランダ語原著/英訳あり)

1985年、Tami Simonが創業したスピリチュアル系出版・オンラインコース提供企業。米国コロラド州ボルダーに拠点を置く。「全体性」を組織の中核に据えた経営を実装し、ヨガ・瞑想・ストーリーテリングを業務時間内に組み込む。

  • 「Office Pets」制度:従業員は自宅の犬を出社時に連れてこられる
  • 毎週の「Body, Heart, and Soul」ミーティング
  • 360度ピア・フィードバックを年次で実施
  • 「Insights at the Edge」ポッドキャスト等で世界中の意識研究を発信
REFERENCES ── 参考文献・リンク
  • Sounds True公式:soundstrue.com
  • Simon, T. (2017) “Insights at the Edge” Sounds True Podcast

1970年、Bob Fishmanが創業した米国フィラデルフィア拠点の社会福祉NPO。14州で4,000名以上のスタッフを擁する大規模NPOでありながら、各サービスユニットが「自治都市国家」のように自主運営される構造を実装。精神保健、知的障害支援、ホームレス支援、依存症支援、教育など幅広いサービスを提供。

独自の前提

RHDは「すべての人は本質的に善で、信頼に値し、自分自身の最善を願う」という「ヴァリュー・プレジデント」(Bill of Rights and Responsibilities)を宣言文として持ち、すべての判断の参照軸とする。

REFERENCES ── 参考文献・リンク
  • RHD公式:rhd.org
  • Fishman, R. (2009) 『The Voice of Innovation: Stories from RHD』RHD Publications

2007年、Brian Robertsonが前職Ternary Software社での経験をもとに体系化した「ホラクラシー」という組織OS(Operating System)を提供する企業。世界1,000社以上がホラクラシーを採用。Zappos(米国靴EC、Amazon傘下)が2014年に1,500名規模で導入したことで世界的注目を集めた。

ホラクラシーは厳密な憲章(Holacracy Constitution)に基づき、ロールとサークルで構成された組織構造を持つ。ガバナンス・ミーティングとタクティカル・ミーティングという二つの会議体で運営する。Mediumも一時採用していたが2016年に撤回。Zapposは現在も継続中だがアプローチを進化させている。後述するが、ホラクラシーの厳格なルールベース性は「自主経営」の精神と緊張関係にあるとの批判もある

REFERENCES ── 参考文献・リンク
  • Holacracy.org(公式・憲章・ガイド):holacracy.org
  • Robertson, B. J. (2015) 『Holacracy: The New Management System for a Rapidly Changing World』Henry Holt
  • 邦訳:『HOLACRACY(ホラクラシー):役職や部署のない全く新しい働き方』PHP研究所(2016)
  • Krasulja, N., Vasiljevic-Blagojevic, M. & Radojevic, I. (2016) “Holacracy – The New Management System” ResearchGate
  • Bernstein, E., et al. (2016) “Beyond the Holacracy Hype” Harvard Business Review, July-August 2016
05
GLOBAL RESEARCH MAP ── 国別研究マップ

世界20カ国以上で進む自主経営組織研究の地理学

ティール組織研究は欧州・北米を中心に拡張中。各国がそれぞれの労働文化・社会保障制度・組織思想史の文脈で独自の発展を見せています。日本最大規模の研究マップとしてここに集約します。

🇳🇱
オランダ
NETHERLANDS

Buurtzorgを生んだ自主経営の聖地。Nyenrode Business UniversityのSharda Nandram教授による「Integrating Simplification」研究がこの国の理論的厚みを担う。BSO/Originなど1980年代からの蓄積。

🇺🇸
アメリカ
UNITED STATES

Morning Star、Patagonia、Sun Hydraulics、AES、Sounds True、RHD、HolacracyOneなど多数の事例。Ken Wilberのインテグラル理論、Clare Gravesのスパイラルダイナミクス、Robert Keganの成人発達理論など、ティール組織を支える発達心理学の本拠地。

🇬🇧
イギリス
UNITED KINGDOM

Mary Parker Follettに遡る集団的自治の伝統。Henley Business Schoolなどでティール組織研究が活発化。Self-Management Instituteが英国チームを設置。NHS(国民保健サービス)の改革運動と接続。

🇩🇪
ドイツ
GERMANY

Heiligenfeld(精神医療)、ESBZ(教育)など先進事例。EWMD/Bertelsmann Stiftungによる組織変革研究。Otto Scharmer(U理論)の出身国でもあり、現象学的組織論との接続が強い。

🇩🇰
デンマーク
DENMARK

高い社会的信頼と「Janteloven」文化が独特の自主経営観を育む。Copenhagen Business Schoolでのティール組織研究。LEGO・Maersk等の組織開発文脈で実践事例が蓄積。

🇫🇮
フィンランド
FINLAND

教育のフィンランドモデルとティール的自主経営の親和性。Aalto UniversityのProfessor Esa Saarinen系の哲学的経営論。Reaktor(ソフトウェア企業)など実装組織が複数。

🇫🇷
フランス
FRANCE

FAVI(Zobrist)、Poult、Chronoflex(Hervé)など「Entreprise libérée(解放された企業)」運動の本拠地。Isaac GetzとBrian M. Carney共著『Freedom, Inc.』が世界的ベストセラー。LIPの自主管理運動など労働思想史の蓄積。

🇧🇪
ベルギー
BELGIUM

フレデリック・ラルー本人の出身国(ベルギー人、ニューヨーク在住)。「The Reinventing Organizations Map」ハブとしての役割。Ministry of Social Securityなど公的機関の自主経営化実験も進行。

🇯🇵
日本
JAPAN

2018年英治出版による『ティール組織』翻訳出版以降、書籍売上累計15万部超。嘉村賢州(場とつながりラボhome’s vi)が解説者・実践者として中心的役割。ダイヤモンドメディア(武井浩三)、ガイアックス、ネットプロテクションズなど実装企業が登場。詳細はSEC 08。

🇸🇪
スウェーデン
SWEDEN

高い労働組合率と参加型経営の歴史。SkandiaのIntellectual Capital研究、HandelsbankenのSelf-Management的支店運営など独自展開。Buurtzorgモデルの北欧導入実験の中心地。

🇨🇭
スイス
SWITZERLAND

Freitag、Mobiliarなど中堅企業での実装事例。ザンクトガレン大学のJohannes Rüegg-Stürm教授による「組織のシステム理論」研究がティール組織議論の理論的基盤の一つに。

🇧🇷
ブラジル
BRAZIL

Ricardo Semler氏のSemco S.A.が1980年代から実装した「産業民主主義」が、ティール組織の歴史的先駆として頻繁に引用される。著書『Maverick』『The Seven-Day Weekend』は世界10万部超のロングセラー。

06
RELATED THEORIES ── 関連理論

ティール組織を支える10の理論的源流

ティール組織は単独で生まれた概念ではなく、20世紀後半から積み重ねられてきた発達心理学・組織論・経営思想の交差点に立っています。源流となる10の理論を体系的に整理します。

THEORY 01

スパイラルダイナミクス

SPIRAL DYNAMICS / Clare W. Graves → Don Beck & Chris Cowan

心理学者Clare W. Gravesが1950〜70年代に発展させた成人発達理論。人間の意識を8つの段階(ベージュ・紫・赤・青・橙・緑・黄・ターコイズ)に分類し、螺旋的に発展すると考える。Don BeckとChris Cowanが1996年に『Spiral Dynamics』として体系化。ラルーの5段階モデルの直接的源泉。

→ spiraldynamics.org
THEORY 02

インテグラル理論

INTEGRAL THEORY / Ken Wilber

Ken Wilberが構築したメタ理論(理論の理論)。AQAL(All Quadrants, All Levels)フレームワークで意識・文化・行動・社会システムを統合的に把握する。ラルーは『Reinventing Organizations』でWilberの色分けを直接引用。Wilber本人もラルーの著書に序文を寄稿。

→ integrallife.com
THEORY 03

ホラクラシー

HOLACRACY / Brian Robertson, 2007

Brian Robertsonが体系化した組織OS。憲章ベースで「サークル」と「ロール」によって組織を構成し、ガバナンス・ミーティングとタクティカル・ミーティングで運営。ティール組織の自主経営を実装する代表的なフレームワーク。Zappos約1,500名規模で導入。後述(SEC 09)するが、その厳格性自体に批判もある。

→ holacracy.org
THEORY 04

ソシオクラシー

SOCIOCRACY / Gerard Endenburg, 1970s

オランダの電気技術者Gerard Endenburgが1970年代に体系化した合意形成型組織運営。「同意(consent)」を意思決定原理とし、サークル構造とダブルリンクで組織を結ぶ。ホラクラシーの直接的前身。Sociocracy 3.0(S3)として現代的に再編集されている。

→ sociocracy30.org
THEORY 05

心理的安全性

PSYCHOLOGICAL SAFETY / Amy Edmondson, 1999-

ハーバード・ビジネススクールのAmy Edmondson教授が提唱。「対人関係のリスクを取っても安全だと感じられる集団的な信念」と定義。Googleのプロジェクト・アリストテレスで第一要因と判明。ティール組織の「全体性」の前提条件と理解されている。

→ amycedmondson.com
THEORY 06

自己決定理論

SELF-DETERMINATION THEORY / Deci & Ryan, 1985-

Edward DeciとRichard Ryanによる動機づけ理論。人間には「自律性(autonomy)」「有能感(competence)」「関係性(relatedness)」という三つの基本心理欲求があり、それが満たされる時に内発的動機が生まれる。ティール組織の自主経営は、この三欲求を構造的に充足する装置と解釈できる。

→ selfdeterminationtheory.org
THEORY 07

X理論・Y理論

THEORY X & Y / Douglas McGregor, 1960

MITスローン・スクールのDouglas McGregor教授が提唱。「人間は本質的に怠惰で命令されないと働かない」(X)と「人間は本来主体的で創造的に働きたい」(Y)という二つの人間観を対比。ティール組織は徹底的にY理論側に立つ組織観であり、FAVIのZobristは「人間は本質的に善である」を経営原則とした。

→ Harvard Business Review
THEORY 08

サーバントリーダーシップ

SERVANT LEADERSHIP / Robert K. Greenleaf, 1970

AT&Tに長く勤めたRobert K. Greenleafが1970年に発表したエッセイ「The Servant as Leader」が起点。リーダーはまず奉仕者であり、メンバーの成長を最優先する。ティール組織における「リーダーシップの分散」「権限ではなく影響力」というあり方の理論的祖。

→ greenleaf.org
THEORY 09

学習する組織

THE LEARNING ORGANIZATION / Peter Senge, 1990

MITスローン・スクールのPeter Senge教授による『The Fifth Discipline』(1990)で提唱。自己マスタリー、メンタルモデル、共有ビジョン、チーム学習、システム思考の5つの規律。ティール組織の前駆的概念であり、Sengeはラルー本に推薦文を寄せている。

→ The Systems Thinker
THEORY 10

U理論

THEORY U / Otto Scharmer, 2007

MITのC. Otto Scharmer博士が提唱。「過去のパターンを断ち、出現しつつある未来から学ぶ」プロセスをU字型で表現。Presencing(現前化)、Letting Goとの統合的な手法。ティール組織の「進化目的」(耳を澄ます経営)の方法論的基盤。Presencing Instituteを通じて世界的に実践されている。

→ presencing.org
07
LITERATURE ── 文献・論文集

日本最大規模のティール組織関連文献ライブラリ

書籍・査読論文・公的レポート・関連ウェブサイトを四つに分類して集約。研究者・実践者・経営者がそれぞれの目的で深掘りできるよう設計しています。

FOUNDATIONAL TEXTS ── 基礎テキスト
  • Laloux, F. (2014) 『Reinventing Organizations: A Guide to Creating Organizations Inspired by the Next Stage of Human Consciousness』Nelson Parker(原著)
  • Laloux, F. (2016) 『Reinventing Organizations: An Illustrated Invitation』Nelson Parker(イラスト版)
  • フレデリック・ラルー著/鈴木立哉訳/嘉村賢州解説 (2018)『ティール組織──マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』英治出版(日本語版)
  • Wilber, K. (1995) 『Sex, Ecology, Spirituality: The Spirit of Evolution』Shambhala
  • Wilber, K. (2000) 『A Theory of Everything』Shambhala
  • Beck, D. E. & Cowan, C. C. (1996) 『Spiral Dynamics』Wiley-Blackwell
  • Senge, P. M. (1990) 『The Fifth Discipline』Doubleday
  • Scharmer, C. O. (2007) 『Theory U: Leading from the Future as It Emerges』Berrett-Koehler
  • Robertson, B. J. (2015) 『Holacracy』Henry Holt
  • Hamel, G. & Zanini, M. (2020) 『Humanocracy』Harvard Business Review Press
  • Carney, B. M. & Getz, I. (2009) 『Freedom, Inc.』Crown Business
  • Semler, R. (1993) 『Maverick』Warner Books
  • Semler, R. (2003) 『The Seven-Day Weekend』Portfolio
  • Edmondson, A. C. (2018) 『The Fearless Organization』Wiley
  • Greenleaf, R. K. (1977) 『Servant Leadership』Paulist Press
  • Kegan, R. & Lahey, L. (2016) 『An Everyone Culture』Harvard Business Review Press
  • Nandram, S. S. (2015) 『Organizational Innovation by Integrating Simplification: Learning from Buurtzorg Nederland』Springer
  • Pink, D. H. (2009) 『Drive: The Surprising Truth About What Motivates Us』Riverhead Books
  • Deci, E. L. & Ryan, R. M. (1985) 『Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior』Plenum
  • de Blok, J. & Pool, A. (2010) 『Buurtzorg: Menselijkheid boven Bureaucratie』Boom Lemma
  • 武井浩三・天外伺朗 (2019)『自然経営──だれもが起業家でいられる組織のつくり方』内外出版社
  • 嘉村賢州・吉原史郎ほか (2019)『実践 ティール組織』英治出版
  • 吉原史郎 (2018)『実務でつかむ! ティール組織』大和出版
  • 佐宗邦威 (2019)『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』ダイヤモンド社
  • 入山章栄 (2019)『世界標準の経営理論』ダイヤモンド社
PEER-REVIEWED RESEARCH ── 査読論文
  • Wyrzykowska, B. (2019) “Teal Organisations: Literature Review and Future Research Directions” Central European Management Journal, 27(4), 124-141
  • Bernstein, E., Bunch, J., Canner, N. & Lee, M. (2016) “Beyond the Holacracy Hype” Harvard Business Review, July-August 2016
  • Hamel, G. (2011) “First, Let’s Fire All the Managers” Harvard Business Review, December 2011
  • Kreitzer, M. J., et al. (2015) “Buurtzorg Nederland: A Global Model of Social Innovation” Global Advances in Health and Medicine, 4(1), 40-44
  • Kruse, F. M., et al. (2024) “Implementing Buurtzorg-derived models in the home care setting: a Scoping Review” BMC Health Services Research
  • Krasulja, N., Vasiljevic-Blagojevic, M. & Radojevic, I. (2016) “Holacracy – The New Management System” ResearchGate
  • Edmondson, A. C. (1999) “Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams” Administrative Science Quarterly, 44(2), 350-383
  • Lee, M. Y. & Edmondson, A. C. (2017) “Self-managing organizations: Exploring the limits of less-hierarchical organizing” Research in Organizational Behavior, 37, 35-58
  • Schell, S. & Bischof, N. (2022) “Change the way of working. Ways into self-organization with the use of Holacracy” European Management Review, 19(1), 123-137
  • Gray, B. H. & Sarnak, D. O. (2015) “Home Care by Self-Governing Nursing Teams: The Netherlands’ Buurtzorg Model” Commonwealth Fund Case Study
  • Romme, A. G. L. (1996) “Making Organizational Learning Work: Consent and Double Linking between Circles” European Management Journal, 14(1), 69-75
  • de Morree, P. (2017) “Buurtzorg: No managers, no overheads, just superb home care” Corporate Rebels Reports
  • Getz, I. (2009) “Liberating Leadership: How the initiative-freeing radical organizational form has been successfully adopted” California Management Review, 51(4), 32-58
  • Eckstein, J. (2020) “Sociocracy: An Organization Model for Large-Scale Agile Development” XP Conference 2020
  • Ackoff, R. L. (1994) “The Democratic Corporation” Oxford University Press
  • Kegan, R., Lahey, L., et al. (2014) “Making Business Personal” Harvard Business Review, April 2014
  • Csikszentmihalyi, M. (2003) “Good Business: Leadership, Flow, and the Making of Meaning” Viking
  • Pisano, G. P. (2019) “The Hard Truth About Innovative Cultures” Harvard Business Review, January-February 2019
  • Birkinshaw, J. (2010) “Reinventing Management: Smarter Choices for Getting Work Done” Jossey-Bass
  • Spreitzer, G. M. (1995) “Psychological Empowerment in the Workplace: Dimensions, Measurement, and Validation” Academy of Management Journal, 38(5), 1442-1465
PUBLIC REPORTS ── 公的・調査レポート
  • KPMG (2015) “The Buurtzorg Model” – 経営効率・従業員満足度の実証研究
  • Commonwealth Fund (2015) “International Innovation: The Buurtzorg Model”
  • Deloitte (2017) “Global Human Capital Trends: Rewriting the rules for the digital age”
  • McKinsey & Company (2018) “The five trademarks of agile organizations”
  • BCG (2019) “Six Steps to Bridge the Responsible AI Gap”(自主経営とガバナンスの議論)
  • Boston Consulting Group (2020) “How Holacracy Helped a Global Tech Firm Transform”
  • Gallup (2017) “State of the Global Workplace”
  • European Foundation for the Improvement of Living and Working Conditions (Eurofound) – 労働者参加型経営の調査多数
  • OECD (2019) “Innovation Strategy” – 自主経営型組織のイノベーション能力分析
  • WHO (2018) “Models of self-managed care for older adults” – Buurtzorgモデル評価
  • 厚生労働省 (2020)『健康経営優良法人』各種報告書
  • 経済産業省 (2018)『組織開発に関する調査』
  • 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)「自主管理型労働の国際比較」
RELATED WEBSITES ── 公式・関連サイト
08
JAPAN PRACTICES ── 日本の実践

日本に根づいたティール組織──実装企業と思想家

2018年の日本語版出版以降、累計15万部を超える反響と共に複数の実装企業と理論的紹介者が現れました。日本固有の組織文化(年功序列・終身雇用・空気を読む文化)の中でティール組織がどう変容して根づいているか、五つの代表的な実践を紹介します。

NPO法人場とつながりラボhome’s vi代表理事。東京工業大学リーダーシップ教育院特任准教授。英治出版版『ティール組織』の解説者として日本でのティール組織の紹介・浸透の中心的役割を担う。組織開発・場づくり・コミュニティ・変容のファシリテーションを長く実践しており、「全体性(Wholeness)」を日本語で深く翻訳した第一人者。

2017年からラルー本人と直接対話を重ね、日本のコンテキストに合わせた「実装可能なティール組織」の伝え方を模索。書籍『実践 ティール組織』(共著)、講演・ワークショップを通じて全国の経営者・実践者に影響を与え続けている。

REFERENCES
  • 場とつながりラボhome’s vi 公式:homes-vi.org
  • 嘉村賢州・吉原史郎ほか『実践 ティール組織』英治出版(2019)
  • 英治出版『ティール組織』日本語版解説(2018)

不動産情報サービス「ダイヤモンドメディア」を2007年に共同創業。「役職なし」「給与公開」「経費自由」「働く場所・時間自由」「予算なし」など徹底した自主経営型組織を実装。ホワイト企業大賞2017受賞、社員の離職率1%という結果を出した。日本のティール組織実装の代表事例として頻繁に引用される。

現在は退任し、複数のティール型組織の支援・投資・教育活動を展開。著書『自然経営──だれもが起業家でいられる組織のつくり方』(天外伺朗との共著)、『管理なしで組織を育てる』はティール組織日本実装のスタンダード参照書となっている。

REFERENCES
  • 武井浩三・天外伺朗『自然経営』内外出版社(2019)
  • 武井浩三『管理なしで組織を育てる』大和書房(2021)
  • ホワイト企業大賞 2017受賞

1999年創業のIT企業(東証グロース上場・本社東京)。代表取締役社長CEO上田祐司氏のもと、「人と人をつなげる」を軸に、ソーシャルメディア・シェアリングエコノミー・ブロックチェーン領域で事業展開。組織内の意思決定権限を徹底的に分散し、社員の起業を積極支援する「カーブアウトオプション」制度を運営。

子会社化した企業も独立採算で運営させ、経営の自由度を最大化する「分社経営」がティール組織的特徴を持つ。「全員が起業家」を文化として制度化した日本企業の代表事例。

REFERENCES
  • 株式会社ガイアックス 公式:gaiax.co.jp
  • 『日経ビジネス』ガイアックス特集記事(複数)

「NP後払い」で知られる後払い決済サービス企業(東証プライム上場)。マネージャー職を撤廃し、「カタリスト」と呼ばれるピア評価者システムへ移行。意思決定の分散と評価の民主化を進めた日本のティール組織実装の先行事例。

新卒採用でも自主経営文化を強くアピールしており、ホラクラシー的な要素を取り入れた独自運営。「Natura」と呼ばれる組織運営の自主規律を内製。

REFERENCES
  • 株式会社ネットプロテクションズ 公式:corp.netprotections.com
  • 『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2019年9月号「自律する組織」特集

日本でティール組織を経営理論・戦略論と接続している主要思想家・研究者群。

  • 佐宗邦威(株式会社BIOTOPE代表・戦略デザイナー):『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』(ダイヤモンド社・2019)でティール組織と「VISION DRIVEN」型経営の接続を提示。
  • 入山章栄(早稲田大学ビジネススクール教授):『世界標準の経営理論』(ダイヤモンド社・2019)で組織進化論・心理的安全性・自己決定理論を学術的に体系化。
  • 天外伺朗(土井利忠/元ソニー上席常務):燃える組織・実存的経営研究の長老。武井浩三との共著『自然経営』。
  • 吉原史郎(ティール組織ラボ):『実務でつかむ! ティール組織』(大和出版・2018)で日本企業向けの実装フレームを提供。
  • 篠田真貴子(エール株式会社取締役):「LISTEN」を核にした組織変革論。ティール組織の「全体性」と接続。
REFERENCES
  • 佐宗邦威『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』ダイヤモンド社(2019)
  • 入山章栄『世界標準の経営理論』ダイヤモンド社(2019)
  • 吉原史郎『実務でつかむ! ティール組織』大和出版(2018)
09
CRITICAL ANALYSIS ── 構造的限界

ティール組織はなぜ「設計されると壊れる」のか

ティール組織は確かに既存の経営パラダイムを大きく揺さぶりました。だが、世界中の実装事例の累積と20年の研究を経た今、ある構造的限界が露わになっています。ラルー本人が「Tealをモデル化するな」と繰り返し警告したにもかかわらず、なぜモデル化は止まらないのか──その問いに、合同会社GETTAプランニング(代表 宮崎要輔・文化身体論研究者)の研究知見から論理的に応答します。

構造的限界 ── 七つのロジカル・ステップ

STEP 01

ラルー本人が警告している矛盾

フレデリック・ラルーは2016年以降、繰り返しこう発言しています。「Tealをゴールにしないでほしい。Tealは段階の名前であり、ゴールではない」「私は方法論を提供したのではなく、観察を共有しただけだ」。にもかかわらず、世界中の経営者・コンサルタント・人事担当者は「ティール組織になる方法」を求め続けている。この時点で、すでに本質との乖離が始まっています。

STEP 02

「意識の進化」モデルは依然として大脳の言語

ティール組織の思想的源流(Ken Wilber/Clare Graves/Robert Kegan)はすべて「意識(consciousness)の発達段階」を扱う理論です。意識・認知・価値観・世界観──これらはすべて大脳が書き換わることで組織が変わるという設計思想に立っています。しかし、人間は意識的に「自分の在り方」を選択しているのではない。日常の振る舞いの大半は、身体に刻まれたハビトゥスから自動的に立ち上がっています。

STEP 03

ホラクラシーの厳格な憲章は自主経営の精神と矛盾する

世界1,000社以上が採用するホラクラシーは、Brian Robertsonによる詳細な「Holacracy Constitution(ホラクラシー憲章)」を採択しなければ運用できません。この憲章は数十ページに及ぶルールベースの統治規約です。「自主経営を実現するために、極めて厳格なルールに従う」──ここに最大の自己矛盾があります。Mediumが2016年に撤退した最大の理由はまさにこの「Holacracy疲れ」でした。HBRの2016年論考「Beyond the Holacracy Hype」も同じ点を批判しています。

STEP 04

「自主経営」「全体性」「進化目的」はすべて名詞

ラルーが挙げた三つのブレイクスルーは、「Self-management」「Wholeness」「Evolutionary Purpose」という三つの名詞でした。名詞は、それを「定義」し「導入」し「達成」する大脳的操作の対象になります。しかし、組織の生命は本来、動詞でしか動いていない──self-managing、whole-ing、purpose-emerging。動詞の状態を、組織が常時「醸している」かどうか。それが本質であり、名詞化された瞬間に静態的な「制度」へと退化します。

STEP 05

真の自己組織化は「能動」ではなく「中動態」

古代ギリシア語には能動態と受動態の中間に位置する「中動態(middle voice)」がありました。「私が走る」(能動)でも「私は走らされる」(受動)でもなく、「走ることが私を通って起きている」という動詞の様態です。哲学者・國分功一郎氏が再評価したこの概念こそ、自主経営の本質に近い。にもかかわらず、ティール組織の議論はほぼ全て能動態(私が/チームが/組織が~する)で記述されている。動詞の様態が誤って翻訳されたまま実装されているのです。

STEP 06

「個人能力開発」を超えても「組織能力開発」に留まっている

ティール組織の議論は確かに「個人をどう育てるか」を超えて「組織がどう生きているか」へ視座を上げました。しかし依然として「組織能力をどう開発するか」という能力開発の枠を出ていません。能力(capability)は名詞であり、開発(development)は能動的操作です。本来必要なのは、転移する文化資本──師から弟子へ、先輩から後輩へ、身体から身体へと移し替わる文化が組織内で流通している状態であり、それは「開発」できるものではなく「醸される」ものです。

STEP 07

「組織は生きている」と語りながら、身体を扱っていない

ラルーは「組織は生命である」「庭師のように耳を傾けよ」と詩的に語りました。しかし、組織の構成員である一人一人の人間の身体が研修・実装の射程にほとんど入っていません。「組織は生きている」と言いながら、その生命を構成する人間の鳩尾の発火、小脳-腹のループ、呼吸の深さ、身体の発酵構造には触れない。ここに、ティール組織議論の最も大きな盲点があります。生命を語るなら、身体から始めなければなりません。

CONVENTIONAL ── 意識設計型

ティール組織の標準アプローチ

「組織の意識段階を引き上げる」ことを起点に、自主経営・全体性・進化目的という三つの構造を設計し、ホラクラシーやソシオクラシーで運用する。

  • 大脳・意識の進化が起点
  • 名詞化された制度として定義
  • 能動態の経営記述
  • 個人・組織能力の開発が射程
  • 意識のアップデートを通じて文化が変わるという前提
  • 研修は「気づき」「対話」「ワーク」中心
  • 身体は議論のほぼ外
VS
NEXT PARADIGM ── 身体醸成型

文化身体論からの次なる道

構成員一人一人の鳩尾の発火、小脳-腹のループ、転移する文化資本の流通から組織を醸成する。意識ではなく身体を起点とし、設計ではなく発酵が中心になる。

  • 小脳-腹のループ・身体知が起点
  • 動詞の様態として運用
  • 中動態の経営記述
  • 文化資本の身体間転移が射程
  • 身体から立ち上がる文化が意識を変えるという順序
  • 研修は「身体配列」「型」「間」「呼吸」中心
  • 身体が出発点であり経由点である

ティール組織を否定する立場ではありません。ティール組織が開いた地平を引き受けたうえで、「設計しなくても組織が自己組織化する条件」を、身体の側から探究するアプローチです。

10
NEXT PARADIGM ── 次なる道

組織が「醸される」ための身体知研修

合同会社GETTAプランニング(代表 宮崎要輔・文化身体論研究者)は、20年以上にわたるプロアスリート指導の現場知見と、文化身体論の研究から、組織が自己組織化するための「身体の側からのアプローチ」を体系化してきました。Jリーグ112名以上、プロ野球45名以上のトップアスリートの身体配列を整えてきた現場知が、企業組織の自己組織化にも応用可能であることが、複数の導入企業で確認されています。

PROGRAM ── プログラム概要

身体知研修|組織が自己組織化するための実装プログラム

  • 射程経営者・幹部層・チームリーダー・人事責任者を中心に、組織全体で実施可能
  • 構造5段階構造(進化/中動態/流動/統合/突破)/4規律(身・間・型・腹)
  • 特徴座学ではなく身体配列から始まる。一本歯下駄GETTAを使った身体メタ認知の獲得
  • 実績Jリーグ112名以上、プロ野球45名以上の選手指導/認定インストラクター230名以上のネットワーク
  • 監修合同会社GETTAプランニング代表・文化身体論研究者 宮崎要輔(追手門学院大学大学院修士/社会学)
  • 投資税込77万円〜/カスタマイズ可(規模・期間・実施形態)

研修プログラムの詳細は身体知研修ピラーページ、思想的背景はGETTA思想体系、文化資本論は転移する文化資本もご参照ください。

FAQ ── よくある質問

ティール組織についてのよくある質問

AIO(AI Overview)検索で頻出する質問に、研究的厳密さで応答します。各回答はJSON-LD構造化データと完全に同期しています。

Q1. ティール組織とは何ですか?
ティール組織とは、ベルギーの元マッキンゼー・アンド・カンパニーのコンサルタント、フレデリック・ラルーが2014年の著書『Reinventing Organizations』で提唱した次世代型の組織モデルです。組織を機械ではなく生命体として捉え、固定的階層を解体し、(1)自主経営(Self-management)、(2)全体性(Wholeness)、(3)進化目的(Evolutionary Purpose)の三つのブレイクスルーを実装する組織形態を指します。色分けされた組織発達の5段階(Red→Amber→Orange→Green→Teal)のうち、最も進化した段階に対応するのがTeal(青緑)です。
Q2. ティール組織の代表的な事例にはどのようなものがありますか?
オランダの在宅看護組織Buurtzorg(看護師1万名以上・850チーム以上の自主経営)、米国のトマト加工最大手Morning Star(管理職ゼロ・約500名)、フランスの自動車部品メーカーFAVI、米国アウトドアアパレルPatagonia、ドイツの精神医療グループHeiligenfeld、米国電力企業AES(最盛期4万名)、ベルギーIT企業BSO/Originなど、ラルーが3年かけて取材した12のパイオニア企業が代表事例です。日本ではダイヤモンドメディア(武井浩三氏創業/ホワイト企業大賞2017)、ガイアックス、ネットプロテクションズなどが知られています。
Q3. ティール組織の3つのブレイクスルー(特徴)とは何ですか?
(1) 自主経営(Self-management):ピア(仲間)関係に基づく組織運営で、中間管理職を廃し、固定的な組織図をなくす。「全員がマネージャー」のシステム。(2) 全体性(Wholeness):職場で「プロのマスク」をかぶることをやめ、人間の理性・感情・直感・スピリチュアリティの全体性を持ち込む。心理的安全性を超えた人間の統合性の回復。(3) 進化目的(Evolutionary Purpose):組織を魂を持った存在として捉え、その存在目的に耳を澄ませる経営。「組織はどう生きたがっているか」を聴き取る。この三つは互いに依存しあう三本柱です。
Q4. ティール組織とホラクラシーの違いは何ですか?
ティール組織はラルーが観察に基づき抽出した組織発達段階の概念であり、特定の方法論ではありません。一方ホラクラシー(Holacracy)はBrian Robertsonが2007年に体系化したティール組織を実装する代表的な「組織OS」で、Holacracy Constitution(憲章)に基づきサークルとロールで運営される厳密なフレームワークです。Zappos約1,500名規模で導入された一方、Mediumは2016年に撤退するなど、その厳格性ゆえの「Holacracy疲れ」も指摘されています(HBR 2016「Beyond the Holacracy Hype」参照)。
Q5. ティール組織の限界や批判には何がありますか?
主な限界として(1)ラルー本人が「Tealをモデル化するな」と警告するにもかかわらず方法論として消費される矛盾、(2)思想的源流(Ken Wilber、Clare Graves、Robert Kegan)がすべて意識・認知の発達理論であり、依然として大脳設計の言語であること、(3)ホラクラシーの厳格な憲章が自主経営の精神と矛盾する自己矛盾、(4)「自主経営」「全体性」「進化目的」が名詞化され制度として静態化する問題、(5)真の自己組織化が必要とする「中動態」の動詞様態が能動態で誤訳されている問題、(6)身体・ハビトゥス・身体知が議論の射程外であること、などが挙げられます。詳細はSEC 09をご参照ください。
Q6. ティール組織を学ぶための代表的な書籍は何ですか?
原書:Frederic Laloux『Reinventing Organizations』(Nelson Parker, 2014)、イラスト版『Reinventing Organizations: An Illustrated Invitation』(2016)。日本語版:フレデリック・ラルー著/鈴木立哉訳/嘉村賢州解説『ティール組織──マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』英治出版(2018)。日本の実践書:嘉村賢州・吉原史郎ほか『実践 ティール組織』英治出版、武井浩三・天外伺朗『自然経営』内外出版社、吉原史郎『実務でつかむ! ティール組織』大和出版など。関連理論ではKen Wilber『A Theory of Everything』、Don Beck『Spiral Dynamics』、Brian Robertson『Holacracy』が必読です。
Q7. ティール組織を企業で実装するにはどうすればよいですか?
ラルー本人は「Tealはゴールではなく観察である」と繰り返しており、画一的な方法論はありません。実装のヒントとしては(1)助言プロセス(Advice Process)の導入から始める、(2)権限と意思決定の透明性を高める、(3)チェックイン/チェックアウトなど全体性を扱うミーティング設計、(4)組織のパーパスへの定期的な対話、(5)経営者自身の発達段階の深化、などが挙げられます。一方で構造的限界(大脳設計・名詞化)を超えるには、合同会社GETTAプランニングの身体知研修のように、構成員一人一人の身体・小脳-腹のループ・転移する文化資本から醸成するアプローチが補完的に有効です。
Q8. 日本でティール組織を実装している代表的な企業はどこですか?
日本の代表的なティール組織実装企業としては、ダイヤモンドメディア(武井浩三氏創業/2017年ホワイト企業大賞受賞)、ガイアックス(東証グロース上場・上田祐司CEO/カーブアウトオプション制度)、ネットプロテクションズ(東証プライム上場・「カタリスト」ピア評価制度)、面白法人カヤック、サイボウズなどが挙げられます。理論的紹介者として嘉村賢州氏(場とつながりラボhome’s vi)、吉原史郎氏、武井浩三氏、佐宗邦威氏(BIOTOPE)、入山章栄教授(早稲田大学)、天外伺朗氏が代表的な思想家・実践者として知られています。