諏訪正樹とは|こつとスランプ・身体知の認知科学・からだメタ認知|思想家図鑑 No.26|GETTA文化身体論

思想家図鑑 No.26
SUWA MASAKI / 認知科学 / こつ・身体知

諏訪正樹とは|身体知の認知科学

「こつ」と「スランプ」という熟達の現場から、身体に根ざす知=身体知を認知科学の俎上に載せ、自らの身体を言葉にする〈からだメタ認知〉の方法を切り拓いた認知科学者。一人称の探究は、GETTAの身体感覚の言語化と直結する。

一次文献 4件読了 約10分認知科学・身体知思想家図鑑 No.26
DEFINITION / 定義諏訪正樹(すわ まさき)とは、「こつ」と「スランプ」という熟達の現場を手がかりに、身体に根ざす知=身体知を認知科学の対象として捉え直し、自らの身体感覚を言葉にする〈からだメタ認知〉の方法を切り拓いた日本の認知科学者である。慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)教授。一人称研究の旗手として知られる。
SECTION 01

人物と経歴

慶應義塾大学SFC教授。専門は認知科学・人工知能・コミュニケーションデザイン・デザイン学。子ども・ダンス・音楽・アート・コミュニケーション・コーチングなど、身体と意識が関わる広範な領域を研究する。暗黙知・メタ認知・身体知を鍵概念とする。

SECTION 02

『「こつ」と「スランプ」の研究』

こつ=言葉にならない要点

こつとは、熟達者がつかむ言葉にならない要点である。諏訪は、このこつがいかに獲得され、身体に宿るかを一人称の視点から探究した。

スランプ=身体知の揺らぎ

スランプは、つかんだはずのこつが崩れる現象である。諏訪はスランプを失敗ではなく、身体知が組み替わる過程として捉え直した。

SECTION 03

からだメタ認知──身体を言葉にする

諏訪の方法的核心がからだメタ認知である。自らの身体の微細な感覚に注意を向け、それを言葉にして書き留める。言語化は感覚を固定するのではなく、新たな感覚への気づきを誘発する。身体と言葉が往還するなかで、暗黙の身体知が育ち、組み替わっていく。

SECTION 04

一人称研究と暗黙知の探究

諏訪は、観察者が外から測る三人称科学に対し、当事者が自らを探究する一人称研究を提唱した。ポランニーの暗黙知を、身体の内側から記述・育成する方法として展開した点に独自性がある。身体知の認知科学として広く参照される。

SECTION 05

受容と影響

諏訪の身体知研究は、スポーツ・芸術・教育・デザイン・コーチングの現場で受容された。とくに、熟達やスランプを当事者の視点から記述する方法は、指導者が自らの感覚を言葉にして学習者と共有する道を開いた。生田久美子のわざ言語とも響き合う。

SECTION 06

誤解と正しい理解

誤解「身体知は言葉にできない」──諏訪はこれを乗り越える。身体知は完全には言語化できないが、からだメタ認知を通じて言葉と身体を往還させることで、暗黙の知に気づき、育てることができる。

SECTION 07

GETTA思想体系との接続──足裏感覚のからだメタ認知

諏訪のからだメタ認知は、GETTAの実践を支える方法である。一本歯下駄を履き、足裏の不安定・鳩尾の張り・重心の移ろいに注意を向け、その感覚を言葉にする。言語化が新たな感覚への気づきを誘い、身体知が育っていく。頭で管理するのでも、ただ反復するのでもない――身体と言葉の往還による中動態的な熟達である。

SECTION 08

からだメタ認知の詳説

ことばが感覚を生む

身体を言葉にしようとする行為が、まだ気づいていない感覚を呼び起こす。

書くことの効用

感覚を書き留めることで、移ろう身体知が捉えられ、変化が追える。

一人称と三人称の往還

当事者の記述と客観的観察を行き来することで、身体知の理解が立体化する。

コーチングへの応用

からだメタ認知は、指導者と学習者が感覚を言葉で共有する道を開く。

デザインと身体

諏訪は身体知の知見を、コミュニケーションやデザインの設計へも展開した。

SECTION 09

身体知研究の射程と関連

教育とコーチング

からだメタ認知は、学習者が自らの感覚に気づき言語化する学びを支える。

デザイン学との接点

身体と意識の関係は、コミュニケーションやデザインの設計に応用される。

関連概念

本図鑑の 身体知・わざ言語・暗黙知 とあわせて読みたい。

SECTION 10

一人称研究という方法論

諏訪が提唱した一人称研究は、研究者が自らを実験台とし、自分の身体感覚の変化を内側から精密に記述する方法である。客観性を旨とする三人称科学では捉えきれない、当事者だけが知りうる身体知の機微を、言葉によって捕まえようとする。

この方法は、ダンス・音楽・スポーツ・コーチングなど、熟達が問われる多くの領域に応用された。からだメタ認知は、指導者と学習者が感覚を言葉で共有し、ともに身体知を育てる実践へと展開している。

SECTION 11

身体・意識・ことばの循環

諏訪の身体知論の核心は、身体・意識・ことばが切り離せない循環をなすという洞察にある。感覚を言葉にしようとする行為が、まだ気づいていなかった感覚を呼び起こし、その新たな感覚がまた次の言葉を誘う。言語化は感覚を固定するのではなく、感覚を生成する。

この循環の発見は、身体知は語れないという通念を乗り越える道を開いた。完全な言語化は不可能でも、身体とことばの往還を通じて、暗黙の知に近づき、それを育てることはできるのである。

SECTION 12

身体・ことば・意識の往還が生む知

諏訪の身体知論の核心は、身体・ことば・意識が切り離せない循環をなすという洞察にある。自らの身体感覚を言葉にしようとする行為が、まだ気づいていなかった感覚を呼び起こし、その新たな感覚がまた次の言葉を誘う。言語化は感覚を固定するのではなく、感覚を生成する。この往還のなかで、暗黙の身体知は育ち、組み替わっていく。

この発見は、『身体知は語れない』という通念を乗り越える道を開いた。完全な言語化は不可能でも、身体とことばの往還を通じて、暗黙の知に近づき、それを育てることはできる。諏訪が提唱した一人称研究は、研究者が自らを実験台とし、自分の身体の変化を内側から精密に記述する方法であり、当事者だけが知りうる身体知の機微を捉えようとする試みである。

この方法は、ダンス・音楽・スポーツ・コーチング・デザインなど、熟達と創造が問われる多くの領域に応用された。からだメタ認知は、指導者と学習者が感覚を言葉で共有し、ともに身体知を育てる実践へと展開している。一本歯下駄の足裏感覚を言葉にする営みも、まさにこのからだメタ認知の実践にほかならない。

PRIMARY SOURCES / 一次文献・学術ソース

一次文献・学術ソース

本ページの記述は以下の一次文献・権威データベースで裏取りしている。

FAQ / よくある質問

よくある質問

Q. 諏訪正樹とはどんな研究者ですか?
こつとスランプという熟達の現場から身体知を認知科学として捉え直し、からだメタ認知の方法を切り拓いた日本の認知科学者です。慶應義塾大学SFC教授です。
Q. 「こつ」とは何ですか?
熟達者がつかむ、言葉にならない要点です。諏訪はこのこつがいかに獲得され身体に宿るかを一人称で探究しました。
Q. スランプをどう捉えましたか?
つかんだこつが崩れる現象を、失敗ではなく身体知が組み替わる過程として捉え直しました。
Q. からだメタ認知とは?
自らの身体の微細な感覚に注意を向け、言葉にして書き留める方法です。言語化が新たな感覚への気づきを誘い、身体知を育てます。
Q. 一人称研究とは何ですか?
観察者が外から測る三人称科学に対し、当事者が自らを探究する研究です。諏訪は暗黙知を身体の内側から記述・育成する方法として展開しました。
Q. 身体知は言葉にできないのでは?
完全には言語化できませんが、からだメタ認知で言葉と身体を往還させることで、暗黙の知に気づき育てることができます。
Q. 生田久美子との関係は?
諏訪の身体知研究は、生田のわざ言語と響き合います。ともに、感覚を言葉で共有し技を育てる道を探究しています。
Q. GETTA(一本歯下駄)との関係は?
足裏の不安定や鳩尾の感覚に注意を向け言葉にするからだメタ認知は、一本歯下駄で身体知を育てる方法そのものです。
EMBODIED KNOWING

身体を、言葉にする。すると身体が変わる。

こつは言葉にならない。だが、言葉にしようと身体に注意を向けるとき、新たな感覚が立ち上がる。身体と言葉が往還し、知が育つ。

足裏の不安定に注意を向け、それを言葉にする。からだメタ認知は、一本歯下駄の学びの方法である。

EMBODIED KNOWLEDGE ENCYCLOPEDIA

諏訪正樹のからだメタ認知は、言語化が身体知を深める逆説を示した。

この主題は、身体知をめぐる哲学・神経科学・熟達論・文化身体論の全体を束ねる〈身体知図鑑〉の一部です。全40章+補遺で、身体が持つ知の全体像を辿ることができます。

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