種子骨(しゅしこつ/母趾種子骨・内側種子骨〈脛側〉・外側種子骨〈腓側〉/Sesamoid bones)とは|腱に埋まる小さな滑車・母趾球の支点・短母趾屈筋腱・windlass機構・high gear push-off・二分種子骨・種子骨炎・ターフトウ・一本歯下駄GETTA|機能解剖図鑑|GETTA文化身体論図鑑

機能解剖図鑑 / 前足部・第1列

SESAMOID BONES / 母趾球の滑車

種子骨とは|腱に埋め込まれた小さな骨が、母趾球で「蹴り出し」を生む

歩行の最後、体重は母趾のつけ根=母趾球へ集まり、そこから地面を後ろへ送る。その一点の足裏に、ゴマ粒ほどの二つの骨が埋まっている。種子骨である。腱の中に潜み、荷重を受け、腱を守り、てこの腕を延ばして蹴り出しの力を増幅する——小さいが、前足部推進の要となる滑車。ここでは母趾種子骨の解剖・発生・血行・臨床・生体力学を一次文献にもとづいて解き、一本歯下駄GETTAの身体論へつなぐ。

所属:前足部・第1中足骨頭の足底側構成:内側(脛側)/外側(腓側)2種子骨埋没:短母趾屈筋(FHB)の2腱の中機能:滑車・荷重分散・腱の保護

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DEFINITION

種子骨(しゅしこつ/sesamoid bone)とは、腱の中に埋め込まれた小さな骨の総称であり、ゴマ(胡麻)の粒に似た形からこの名を持つ。全身で最大の種子骨は膝の膝蓋骨(お皿)であり、足の母趾のつけ根には内側(脛側)と外側(腓側)の2個の母趾種子骨が存在する。これらは第1中足骨頭の足底側にあって短母趾屈筋(FHB)の2本の腱の中に埋まり、長母趾屈筋(FHL)の腱が2つの種子骨のあいだの溝を通る。種子骨は、腱を骨との摩擦から守り、腱の牽引方向を変え、てこの腕(モーメントアーム)を延ばして力を増幅し、母趾球にかかる大きな荷重を受け止めて分散する“滑車”として働く、蹴り出し(push-off)の支点である。

SECTION 01

種子骨とは何か——腱に潜む小さな骨

種子骨とは、腱の走行の途中に組み込まれた独立した小さな骨である。関節をまたぐ腱が骨の角を乗り越える場所で、腱が擦り切れたり食い込んだりしないよう、腱の内部に骨が生まれて“当て木”となる。同時にその骨は、腱が骨から離れる高さをかせぎ、力の向きを変える滑車として働く。手の母指や膝、そして足の母趾——大きな力が集中し、腱が鋭く曲がる場所にこそ種子骨は現れる。

名の由来——ゴマ粒という比喩

「種子骨」という語は、その形が植物の種子、とりわけゴマの粒に似ることに由来する。英語のsesamoidも、ギリシャ語で胡麻を意味するsēsamon(セサモン)に、「〜に似た」を表す接尾辞-oidが付いたものであり、和名はその直訳にあたる。小ささと、腱に包まれて半ば隠れているさまが、この控えめな名によく表れている。

最大の種子骨は膝蓋骨

人体で最大の種子骨は、膝の前面にある膝蓋骨(しつがいこつ/お皿)である。大腿四頭筋の腱の中に埋まり、膝を伸ばす力のてこの腕を延ばす、まさに種子骨の原理をそのまま拡大した骨だ。母趾種子骨は膝蓋骨をごく小さくしたようなもので、はたらきの論理は同じである——腱に埋まり、支点を持ち上げ、力を増幅する。膝で起こることが、足の母趾でも起こっている。

足の種子骨の顔ぶれ

足で常に見られる種子骨は、母趾のつけ根(第1中足趾節関節)の内側・外側の2個である。人によっては、第2〜5趾のつけ根や母趾の指節間関節、あるいは長腓骨筋腱が立方骨の下を回る部分(腓骨種子骨=os peroneum)にも小さな種子骨や過剰骨が現れる。しかし機能的にもっとも重要で、ほぼ全員に備わるのが、この母趾の2個である。本図鑑はこの母趾種子骨を主役に据える。

SECTION 02

母趾種子骨の解剖——内側(脛側)と外側(腓側)

母趾種子骨は、第1中足骨頭の足底側に並ぶ二つの卵円形の小骨である。内側にあるものを内側種子骨(脛側種子骨/tibial sesamoid)、外側にあるものを外側種子骨(腓側種子骨/fibular sesamoid)と呼ぶ。「脛側」「腓側」は、すね(脛骨)側・そとくるぶし(腓骨)側という体の内外の呼び分けである。二つのうち内側(脛側)種子骨のほうがやや大きく、体重をより多く受ける位置にある。

短母趾屈筋の2本の腱に埋まる

2個の種子骨は、短母趾屈筋(FHB)の内側頭・外側頭それぞれの腱の中に埋め込まれている。FHBは母趾を足裏側へ曲げる(底屈させる)足の内在筋で、その腱が第1中足骨頭の下を通って母趾の基節骨底に停止する。腱がもっとも強く骨頭に押しつけられる位置に、ちょうど当て木のように種子骨が入っている。だから種子骨は関節の“床”であると同時に、FHBという筋の“先端の骨”でもある。

中足骨頭下面の稜(crista)と二つの溝

第1中足骨頭の足底面には、中央に縦に走る稜(crista=隆起)があり、その両側にゆるやかな溝がある。内側種子骨と外側種子骨は、この二つの溝にそれぞれはまり込み、背面(上面)で中足骨頭と関節をなす。稜はレールの働きをして、種子骨が横へ滑り出ないよう軌道を保つ。外反母趾で母趾が外へ傾くと、この稜を乗り越えて種子骨が外側へずれてしまうことがある。

長母趾屈筋腱は二つの種子骨のあいだを通る

母趾の末節骨(爪のある骨)まで達して母趾を最後にぐいと曲げる長母趾屈筋(FHL)の腱は、内側種子骨と外側種子骨のちょうど中間の溝(種子骨間溝)を通り抜ける。二つの種子骨はFHL腱にとって左右のガードレールであり、腱を正しい軌道に導く滑車として働く。蹴り出しの最後の一押しを担うFHL腱を、種子骨は摩擦と圧迫から守っている。

SECTION 03

種子骨複合体——底側板・靭帯・内在筋の網

種子骨は単独で浮いているのではない。周囲の靭帯・線維軟骨板・内在筋腱と一体となった“種子骨複合体(sesamoid complex)”として、母趾のつけ根を足裏側から支える一枚の受け皿を形づくる。

底側板(plantar plate)という厚い床

第1中足趾節関節の足裏側には、底側板(plantar plate)と呼ばれる厚い線維軟骨の板がある。二つの種子骨はこの底側板に組み込まれ、足底腱膜・関節包・側副靭帯とつながって、関節が上へ反りすぎる(過伸展する)のを防ぐ受動的なストッパーとなる。種子骨は、この床の中に置かれた二つの“重し”だと考えるとよい。

種子骨間靭帯で連結される

内側種子骨と外側種子骨は、種子骨間靭帯(intersesamoid ligament)という短い靭帯でたがいに結ばれ、その背側の溝がFHL腱のトンネルとなる。二つの種子骨は別々の骨でありながら、この靭帯によって一つの機能単位としてふるまう。

母趾外転筋・母趾内転筋の停止

母趾を内側へ広げる母趾外転筋の腱は内側種子骨に、母趾を第2趾側へ引き寄せる母趾内転筋の腱は外側種子骨に、それぞれ停止する。左右から引く二つの内在筋が種子骨を介して母趾のつけ根を挟み込み、母趾の位置と横アーチの張りを保っている。種子骨は、これら足内在筋の力が集まって母趾へ伝わる中継点でもある。

SECTION 04

機能①:滑車としてのてこ——力を増幅する

種子骨の第一の役割は、腱の滑車として、母趾を曲げる力のてこの腕(モーメントアーム)を延ばすことである。これは種子骨がなぜ蹴り出しに不可欠かを説明する、もっとも重要な力学である。

支点を持ち上げれば、同じ力がより大きな回転を生む

短母趾屈筋の腱がもし中足骨頭の表面をそのまま這っていたら、腱と関節の回転中心との距離はごく短い。種子骨はその腱を骨頭から一段下(足裏側)へ押し下げ、回転中心から腱までの距離=てこの腕を延ばす。てこの腕が延びれば、同じ筋張力でもより大きな回転力(トルク)が母趾に生まれる。種子骨は、母趾を底屈させる力を底上げする“下駄”のように働く。

膝蓋骨との相同——原理は同じ

この仕掛けは、膝で膝蓋骨が大腿四頭筋のてこの腕を延ばして膝を伸ばす力を増幅するのと、まったく同じ原理である。膝という大きな関節で起こることが、母趾という小さな関節でも、二つの小さな種子骨によって起こっている。人体は、力の集中する場所で同じ解決策——腱の中に骨を置く——を繰り返している。

SECTION 05

機能②:荷重の受け皿と腱の保護

種子骨の第二の役割は、母趾球に集まる大きな荷重を受け止めて分散し、その下を通る腱と骨頭を摩擦・外傷から守ることである。

母趾球にかかるピーク荷重を受ける

歩行の立脚後期(地面を蹴る局面)には、足裏の圧力のピークが母趾と第1中足骨頭の下に現れる。日本足の外科学会の解説では、蹴り出しの際に体重のおよそ半分を超える荷重が母趾球にかかるとされる。種子骨は、この集中荷重を第1中足骨頭に直接ぶつけず、いったん受け止めてクッションのように分散する。硬い地面と骨頭のあいだに挟まる二つの座布団である。

長母趾屈筋腱と骨頭を守る

二つの種子骨のあいだの溝を通る長母趾屈筋(FHL)腱は、蹴り出しのたびに強く張られ、骨頭に押しつけられる。種子骨はこの腱を骨との直接の摩擦から隔て、骨頭下面が繰り返しの圧で傷むのを防ぐ。滑車であると同時に、腱と骨の双方を守る緩衝材でもある。

衝撃吸収という第三の顔

走行や跳躍で母趾球が地面をとらえるとき、種子骨は最初に地面反力を受ける骨の一つとなる。線維軟骨と靭帯に囲まれた種子骨複合体は、この衝撃をいったん受け止めて上位の骨格へ伝える衝撃吸収装置として働く。小さいがゆえに、この役割は障害(種子骨炎・骨折)とも背中合わせである。

INTERLUDE / 支点という思想

力は、太い筋からではなく、小さな支点から生まれる。ゴマ粒ほどの二つの骨が、蹴り出しの通り道を決めている。

種子骨は、何かを新しくつくり出す骨ではない。ただ、腱の力が地面へ抜ける最後の一点で、その力の向きと大きさを静かに整えているだけだ。支点が正しくそこにあること——それだけで、同じ筋張力がより大きな推進へ変わる。身体は、いちばん力の集まる場所に、いちばん小さな骨を置いた。

SECTION 06

蹴り出しの支点——high gear と low gear

蹴り出しは、いつも同じ経路を通るわけではない。1979年、F. ボイセン=モラーは『Journal of Anatomy』誌(129巻165-176頁)で、前足部の推進に二つの“ギア”があることを記述した。種子骨は、その強いギアの支点にあたる。

二つのギア——母趾側か、外側列か

ボイセン=モラーは、推進の軸が前足部で切り替わることを示した。荷重が母趾側の第1・第2列を通り、横断軸がより直交する強く効率的な推進をhigh gear(ハイギア)、荷重が第2〜5列の外側寄りを通る弱い推進をlow gear(ローギア)と呼ぶ。速く力強く地面を押すとき、身体はハイギアを使う。

種子骨はハイギアの支点

ハイギア推進の支点は、まさに母趾球=第1中足骨頭と種子骨複合体である。ここが安定して荷重を受けられなければ、推進は弱いローギアへ落ちる。種子骨は、身体がもっとも強く地面を押す瞬間に、その力が通る一点を支える骨だと言える。母趾球で地面を押す感覚とは、突きつめれば種子骨で地面を押す感覚にほかならない。

SECTION 07

windlass機構と種子骨——足を硬いレバーへ

蹴り出しの力は、筋がねじ伏せる力だけでは生まれない。足そのものが硬いレバーに組み変わることで、蓄えたばねが効率よく地面へ返る。その硬化のスイッチがwindlass(ウィンドラス=巻き上げ機)機構であり、種子骨はその前方の滑車の一部である。

母趾の背屈が足底腱膜を巻き取る

1954年、J. H. ヒックスは『Journal of Anatomy』誌(88巻25-30頁)で、母趾が背屈すると踵から母趾へ張られた足底腱膜が中足骨頭に巻き取られるように緊張し、内側縦アーチが挙上して足全体が硬く締まる仕組みを記述した。船の巻き上げ機の把手を回すと綱がドラムに巻きつく力学になぞらえた呼び名である。

種子骨は巻き上げの前方支点

足底腱膜の一部は種子骨と底側板を介して母趾の基節骨へつながる。母趾が背屈すると、種子骨は中足骨頭の前方をまわり込むように動き、腱膜が巻き取られる支点として働く。種子骨がなめらかに動き、正しい位置にあることが、windlass機構が確実に起動する条件である。種子骨の障害や外反母趾による位置ずれは、この“足を硬くする仕掛け”を鈍らせる。

SECTION 08

発生と骨化——多中心骨化と二分種子骨

種子骨は、生まれつき完成した骨として現れるのではない。幼少期に軟骨から複数の中心で骨化し、ときに一つに癒合しきらないまま分かれて残る。この発生の事情が、後述する二分種子骨という正常変異を生む。

骨化はおよそ6〜10歳

母趾種子骨は、およそ6〜10歳ごろに一つまたは複数の骨化中心から骨化する(女児のほうがやや早い傾向がある)。それ以前はレントゲンに写らない軟骨として存在し、母趾球の荷重を受けながら少しずつ骨へ置き換わっていく。

二分種子骨(bipartite sesamoid)

複数の骨化中心がひとつに癒合しなかった場合、種子骨は二つ(あるいはそれ以上)に分かれたまま残る。これを二分種子骨(多分種子骨)と呼ぶ。頻度は報告により幅があるが、およそ7〜30%の人に見られ、とくに内側(脛側)種子骨に多く、両側の足に対称的に現れやすい。これは病気ではなく正常変異である。

骨折との鑑別——縁と対称性

二分種子骨は、レントゲンで骨折と紛らわしい。鑑別の目安として、二分種子骨は分かれ目の縁がなめらかで丸く、反対の足にも同様の分裂が見られることが多いのに対し、骨折は縁が鋭くぎざぎざで、多くは片側のみに生じる。母趾種子骨の形態異常を検証した日本の臨床研究でも、分裂・欠損・低形成といった発育上の変異が一定の割合で確認されている。誤って骨折と診断しないため、両側の比較が重視される。

SECTION 09

血行と脆弱性——分水嶺と骨壊死

種子骨が障害を起こしやすく、いったん傷むと治りにくい背景には、その乏しく偏った血流がある。小さな骨であるがゆえに、血の巡りの“分水嶺”に置かれている。

血流は主に近位・足底側から入る

種子骨への血液供給は主に骨の外を走る血管(骨外性)に頼り、そのおもな流入は近位(かかと寄り)と足底側からとされる。固有底側動脈や第1底側中足動脈といった細い枝が、種子骨の一端から内部へ入り込む。骨の反対側までは血管が届きにくく、内部に血流の乏しい領域(分水嶺)が残りやすい。

骨折が血流を断つと骨壊死へ

この偏った血流のために、種子骨骨折はしばしば治りが悪い。骨折線が数少ない血管の入口を断ってしまうと、遅延癒合・偽関節(骨がつながらない)や、骨の一部が血流を失って死ぬ骨壊死(無腐性壊死・AVN)に至ることがある。小ささと血流の乏しさが、種子骨障害を厄介にしている。

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SECTION 10

臨床——種子骨炎・骨折・ターフトウ・外反母趾

母趾球という荷重と摩擦の集中点にあるため、種子骨はさまざまな障害の舞台となる。ここでは代表的なものを、原語のまま挙げる。

種子骨炎(sesamoiditis)

種子骨とその周囲の腱・軟部組織に生じる炎症・痛みの総称で、ランニングやダンス、つま先立ちの多い動作など、母趾球への繰り返す荷重で起こる。母趾のつけ根の足裏側の痛みと腫れが主症状である。

種子骨骨折・疲労骨折

高所からの着地などの一度の外力による急性骨折と、繰り返す負荷による疲労骨折がある。前述のとおり血流が乏しいため、癒合が遷延しやすい。二分種子骨との鑑別が治療方針を左右する。

ターフトウ(turf toe)

ターフトウとは、第1中足趾節関節が過度に背屈(反り返り)を強いられて起こる、底側板・種子骨複合体の損傷である。人工芝(turf)上の競技で母趾を突き上げるように痛めることからこの名がある。種子骨複合体の断裂を伴えば、蹴り出しの支点そのものが不安定になる。

外反母趾と種子骨の亜脱臼

外反母趾では母趾が外側へ傾き、第1中足骨頭が内側へ張り出す。すると種子骨は中足骨頭下面の稜を乗り越えて相対的に外側へずれ(亜脱臼)、滑車としての軌道が乱れる。母趾球という支点が横へ逃げるため、windlass機構とハイギア推進が損なわれる。

SECTION 11

GETTA思想体系との接続——母趾球という「支点」を呼び覚ます

ここまでは、確立された解剖学・生体力学にもとづく事実である。以下は、それらの事実をGETTAの身体論がどう読み解くかという解釈であり、確立された臨床知見とは区別される仮説的な位置づけであることを、あらかじめ断っておく。

支点が硬くなければ、身体は前へ進めない

下腿三頭筋が生み、アキレス腱が蓄えた弾性は、母趾球という一点を通って地面へ返る。種子骨は、その最終の栓である。GETTAの言葉でいえば、これは筋で固める力ではなく、構造が生む剛性から推進を得る「腱優位システム」の最終段にあたる。支点が締まるか緩むかで、一歩の質が決まる。

足裏の「解像度」を上げる一点

GETTAの身体論は、足裏から鳩尾までの感覚の“解像度”を高めることを説く。種子骨が受ける母趾球の圧は、その解像度のもっとも遠位にある入力点の一つである。地面のわずかな傾きや硬さを母趾球で読み、微細に押し返す——この能動でも受動でもない調整は、GETTAが「中動態」と呼ぶ身体のあり方に通じる。さらに、一本歯の生む小さなゆらぎが弱い感覚入力を増幅するという「確率共鳴」の見立ては、母趾球の受容を鋭くする仮説として語られる。

一本歯下駄GETTAは支点を集約する

GETTAの解釈では、一本歯下駄の一本の歯は支点を母趾球〜前足部へ集約し、踵で休むことを許さず、母趾の背屈とwindlassの起動を毎歩要求する。現代の履物と平らな床が眠らせがちな母趾球の支点機能を、種子骨のレベルから呼び覚ます装置だと位置づける。ただし装置の効果そのものは、ここまで述べた解剖・力学の解釈にもとづく仮説的な位置づけである。実践知の各論は、姉妹サイト pipotore.com にゆずる。

DECLARATION / 最小にして本質

推進は、母趾のつけ根から始まる。地面を後ろへ送る最後の支点が硬くなければ、身体は前へ進めない。

下腿が生み、アキレス腱が蓄えた弾性は、母趾球という一点——二つの種子骨——を通って地面へ返る。この最小の栓が締まるか緩むかで、一歩の質が決まる。一本歯下駄GETTAが要求するのは、この最小にして本質的な支点を、毎歩、目覚めさせつづけることである。

REFERENCES

一次文献・参考文献

本ページは母趾種子骨の解剖・発生・血行・生体力学・臨床像を、Bojsen-Møller(1979)・Hicks(1954)などの一次文献、日本足の外科学会・日本臨床整形外科学会の解説、Europe PMC掲載のオープンアクセス論文、および解剖事典(Wikipedia・コトバンク)にもとづき記述し、URLの生存と書誌を実測・確認した教育目的の機能解剖図鑑である。GETTA思想体系との接続節はGETTAによる解釈・仮説であり、確立された臨床知見とは区別される。

FAQ

よくある質問

種子骨とは何ですか?

種子骨(しゅしこつ)とは、腱の中に埋め込まれた小さな骨で、ゴマの粒に似た形からこの名があります。腱を骨との摩擦から守り、腱の牽引方向を変え、てこの腕を延ばして力を増幅する滑車として働きます。人体で最大の種子骨は膝の膝蓋骨(お皿)で、足では母趾のつけ根に2個あります。

母趾の種子骨はいくつあり、どこにありますか?

母趾のつけ根(第1中足趾節関節)の足底側に2個あります。内側にあるものを内側種子骨(脛側種子骨)、外側にあるものを外側種子骨(腓側種子骨)と呼びます。ともに第1中足骨頭の下面で、短母趾屈筋の2本の腱の中に埋まっています。

種子骨は何のためにあるのですか?

主に三つの働きがあります。第一に、短母趾屈筋腱のてこの腕(モーメントアーム)を延ばして母趾を曲げる力を増幅する滑車として働きます。第二に、母趾球にかかる大きな荷重を受け止めて分散し、下を通る長母趾屈筋腱と中足骨頭を摩擦や外傷から守ります。第三に、地面反力を受ける衝撃吸収装置として働きます。

内側種子骨と外側種子骨の違いは何ですか?

内側種子骨(脛側種子骨)はすね側にあり、やや大きく、体重をより多く受けます。母趾外転筋の腱が停止します。外側種子骨(腓側種子骨)は小指側にあり、母趾内転筋の腱が停止します。二つは種子骨間靭帯で連結され、そのあいだの溝を長母趾屈筋腱が通ります。

二分種子骨とは何ですか。骨折とどう見分けますか?

二分種子骨とは、複数の骨化中心が一つに癒合せず、種子骨が二つに分かれたまま残る正常変異です。およそ7〜30%の人に見られ、内側種子骨に多く、両側対称に現れやすいのが特徴です。骨折は分かれ目の縁が鋭くぎざぎざで多くは片側のみに生じるのに対し、二分種子骨は縁がなめらかで反対側の足にも同様に見られるため、両足の比較が鑑別に役立ちます。

種子骨はいつ骨化しますか?

母趾種子骨はおよそ6〜10歳ごろに、一つまたは複数の骨化中心から骨化します(女児のほうがやや早い傾向があります)。それ以前はレントゲンに写らない軟骨として存在します。骨化中心が癒合しきらないと二分種子骨になります。

種子骨に多い障害は何ですか?

代表的なものに、種子骨とその周囲の炎症である種子骨炎(sesamoiditis)、急性骨折と疲労骨折、血流不足による骨壊死(無腐性壊死・AVN)があります。種子骨は近位・足底側からの乏しい血流に頼るため、いったん骨折すると遅延癒合や偽関節、骨壊死に至りやすいのが特徴です。

ターフトウ(turf toe)とは何ですか?

ターフトウとは、母趾のつけ根の関節(第1中足趾節関節)が過度に背屈を強いられて起こる、底側板・種子骨複合体の損傷です。人工芝の競技で母趾を突き上げるように痛めることからこの名があります。種子骨複合体が断裂すると、蹴り出しの支点そのものが不安定になります。

外反母趾は種子骨にどう影響しますか?

外反母趾では母趾が外側へ傾き、第1中足骨頭が内側へ張り出します。すると種子骨は中足骨頭下面の稜(隆起)を乗り越えて相対的に外側へずれ(亜脱臼)、滑車としての軌道が乱れます。母趾球という支点が横へ逃げるため、windlass機構による足の硬化とハイギア推進が損なわれやすくなります。

一本歯下駄GETTAは種子骨とどう関係しますか?

GETTAの解釈では、一本歯下駄の一本の歯が支点を母趾球〜前足部へ集約し、踵で休むことを許さず、母趾の背屈とwindlassの起動を毎歩要求します。これにより、現代の平らな床で眠りがちな母趾球の支点機能を種子骨のレベルから呼び覚ます装置だと位置づけます。ただしこれは解剖・力学の解釈にもとづく仮説的な位置づけであり、確立された臨床知見とは区別されます。

GLOSSARY

用語集

種子骨(sesamoid bone)
腱の中に埋め込まれた小さな骨。摩擦を減らし、腱の牽引方向を変え、てこの腕を延ばして力を増幅する滑車として働く。最大の種子骨は膝蓋骨。
母趾種子骨(hallux sesamoids)
母趾のつけ根、第1中足骨頭の足底側にある内側・外側の2個の種子骨。短母趾屈筋腱に埋まり蹴り出しの支点となる。
内側種子骨(脛側種子骨/tibial sesamoid)
母趾種子骨のうち内側(すね側)にあるもの。やや大きく荷重が多く、二分種子骨や障害が生じやすい。母趾外転筋腱が停止。
外側種子骨(腓側種子骨/fibular sesamoid)
母趾種子骨のうち外側(小指側)にあるもの。母趾内転筋腱が停止する。
短母趾屈筋(FHB)
母趾を底屈させる足内在筋。2本の腱の中に内側・外側種子骨を含み、種子骨を介して母趾球を地面へ押しつける。
長母趾屈筋(FHL)
下腿から起こり、二つの種子骨のあいだの溝を通って母趾末節骨に至る筋。蹴り出しの最後のひと押しを担う。
種子骨間靭帯(intersesamoid ligament)
内側種子骨と外側種子骨を連結する短い靭帯。背側の溝が長母趾屈筋腱のトンネルとなる。
底側板(plantar plate)
第1中足趾節関節の足裏側にある厚い線維軟骨板。種子骨を組み込み、関節の過伸展を防ぐ。
二分種子骨(bipartite sesamoid)
骨化中心が癒合せず種子骨が二つに分かれた正常変異。約7〜30%に見られ内側に多く両側対称。骨折との鑑別が要る。
種子骨炎(sesamoiditis)
種子骨と周囲組織の炎症・痛み。母趾球への繰り返す荷重で生じ、つけ根の足裏側が痛む。
ターフトウ(turf toe)
第1中足趾節関節の過伸展による底側板・種子骨複合体の損傷。蹴り出しの支点を不安定にする。
high gear push-off
荷重が母趾側の第1・第2列を通る強い推進。その支点が母趾球=種子骨複合体。ボイセン=モラー(1979)。

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