17の筋肉が付着する、
浮遊する骨。
鎖骨とのみ関節を持つ「浮遊骨」。肩甲骨の自由は、足裏から始まる──GETTAの下肢刺激がスパイラルラインを通じて肩甲骨を解放する科学。
肩甲骨は浮いている
肩甲骨は胸郭背面を浮遊する骨であり、17もの筋肉が付着する運動連鎖の要である。肩甲骨は鎖骨とのみ関節を持ち(肩鎖関節)、胸郭上を滑走する「浮遊骨」としての特異な存在である。
なぜ「浮いている」のか
肩甲骨の特異性は、骨格的な拘束が極めて少ないことにある。17の筋肉が綱引きすることで位置と動きが決まる。これが肩甲骨の高い自由度を生み、同時に不安定性の原因でもある。
足裏から肩甲骨へ
スパイラルライン(SPL)は対側の足→腸脛靭帯→外腹斜筋→反対側内腹斜筋→前鋸筋→菱形筋を結ぶ。GETTAの歩行がこの回旋連鎖を活性化し、肩甲骨に「下からの命令」を送る。
肩甲骨を「肩で鍛える」のは古い発想である。肩甲骨を「足裏から醸す」のがGETTAの新しい発想である。下肢の機能不全が肩甲骨を縛り、下肢の解放が肩甲骨を自由にする。── 機能解剖学的観点からのGETTA研究
肩甲骨制御の4主要筋
17筋のうち、肩甲骨制御の核心となる4筋を取り上げる。
僧帽筋
上部・中部・下部に分かれ、肩甲骨の位置制御の主役。下部線維の弱化が肩甲骨の不安定性を招く。GETTAの歩行における腕振りが僧帽筋全体の協調的活動を促進する。
前鋸筋
肩甲骨を胸郭に密着させ、上方回旋を担う。プッシュ動作の要。弱化すると翼状肩甲となる。GETTAの体幹回旋運動が前鋸筋を反射的に活性化する。
菱形筋
肩甲骨の内転(寄せる動き)を担う。デスクワーカーでは伸張位で弱化しがち。GETTAの歩行での腕振り時に、肩甲骨の内転相で活性化する。
スパイラルライン
対側の足→腸脛靭帯→外腹斜筋→反対側内腹斜筋→前鋸筋→菱形筋。GETTAの歩行がこの回旋連鎖を全体的に活性化し、肩甲骨に「下からの命令」を送る。
GETTAが肩甲骨を解放する3つの機序
GETTAは肩甲骨を直接ターゲットにしないが、最も効率的に肩甲骨機能を改善する。
スパイラルライン活性化
GETTAの歩行は対側下肢の回旋を引き出す。これがスパイラルラインを活性化し、肩甲骨周囲筋まで連鎖的に活性化する。
胸椎モビリティ向上
GETTAの歩行は胸椎の回旋を引き出す。胸椎の動きが回復すると、肩甲骨が自由に動けるスペースが生まれる。
姿勢全体の最適化
GETTAの不安定面立位は全身姿勢を最適化する。猫背パターンが解消し、肩甲骨が「中立位」に戻る。
投球とGETTAの関係
投球動作は下肢からの力の伝達で成り立つ。地面反力→骨盤回旋→体幹回旋→肩甲骨→上腕→前腕→ボール。GETTAは下肢-体幹の伝達効率を高め、結果として球速の向上、肘・肩の負担軽減を生む。
FROM ANATOMY TO INTERVENTION ── 解剖を、明日のセッションへ
肩甲骨の安定は、立位の安定から始まる。
足裏から手までの連鎖を、揺れが作る。
評価と再教育を同時に行う最小の不安定面。
対象別肩甲骨アプローチ
デスクワーカー・投球選手・水泳選手──目的別の肩甲骨改善プログラム。
姿勢の根本解決
猫背・前傾姿勢のクライアントへ。
- 壁立ち姿勢で肩甲骨位置を評価
- GETTA静的立位で姿勢の中間位を体感
- 下部僧帽筋の活性化エクササイズ追加
- 週3回×8週で姿勢が変わる
姿勢改善は習慣の改善を要する。
下肢から見直すアプローチ
野球・テニス選手の肩・肘負担軽減。
- GETTA歩行+意図的な腕振り
- 下肢→体幹→上肢の連鎖を意識化
- 投球動作模擬をGETTA上で
- オフシーズンに集中導入
投球は全身運動。下肢から見直す。
陸上トレーニングでの統合
水泳選手の陸上トレーニング設計。
- GETTA上での体幹回旋
- 陸上での回旋連鎖を意識化
- ローテーターカフ強化との併用
- 週3回×10分で十分
水中で得られない「重力下での連鎖」を陸で養う。
前鋸筋機能不全
翼状肩甲のあるクライアントへ。
- 前鋸筋テスト(プッシュアップ+プラス)
- GETTA上での前鋸筋エクササイズ
- 胸椎モビリティの確保
- 週3-4回×8-12週
前鋸筋機能の回復には時間がかかる。
段階的な可動域回復
五十肩のクライアントへの慎重な導入。
- 医師の診断必須
- 急性期は禁忌
- 回復期で段階的にGETTA導入
- 可動域トレーニングを併用
無理は禁物。段階的に。
| 肩甲骨の動き | 主動筋 | 拮抗筋 | GETTAでの活性化 |
|---|---|---|---|
| 挙上 | 僧帽筋上部・肩甲挙筋 | 僧帽筋下部 | 姿勢制御で抑制 |
| 下制 | 僧帽筋下部・小胸筋 | 僧帽筋上部 | 下部僧帽筋を活性化 |
| 内転 | 菱形筋・僧帽筋中部 | 前鋸筋 | 腕振りで活性化 |
| 外転 | 前鋸筋 | 菱形筋 | プッシュ動作で活性化 |
引用文献・推奨書籍
本図鑑の内容は以下の学術文献・書籍に基づいて構成されている。さらに深く学びたいトレーナーは原典に当たることを推奨する。
- Kibler, W. B. (1998). The role of the scapula in athletic shoulder function. American Journal of Sports Medicine, 26(2), 325-337.
- Cools, A. M., et al. (2014). Rehabilitation of scapular dyskinesis. British Journal of Sports Medicine, 48(8), 692-697.
- Ludewig, P. M. & Reynolds, J. F. (2009). The association of scapular kinematics and glenohumeral joint pathologies. Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy, 39(2), 90-104.
- Myers, T. W. (2014). Anatomy Trains. Churchill Livingstone.
- 『肩甲骨と上肢の連動』Sports Medicine Today (2021)
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上肢連動を足裏から。
教本の実技装置。
指導者がまず自分の足で確かめる3モデル。


