脳もまた、リズムの群れである
脳の神経同期
脳の中では、無数のニューロンがリズムを刻んでいる。そして時に、それらは発火のタイミングを揃える。脳波のガンマ同期、情報の統合——脳を「結合振動子の群れ」として捉える視点から、神経同期を解き明かす。
01神経同期とは何か
神経同期(neural synchrony)
神経同期とは、多数のニューロンが発火やリズムを揃える現象で、脳を結合振動子系として捉える観点から研究される。
私たちの脳は、ニューロンの電気的な発火によって動いています。その活動を頭皮上から記録したものが脳波です。脳波には、ゆっくりしたデルタ・シータ波から速いガンマ波まで、いくつものリズムの帯があります。
これらのリズムは、多数のニューロンが発火のタイミングを揃える(同期する)ことで生まれます。脳もまた、結合した振動子の群れなのです。本図鑑の蔵本モデルや位相同期の数理は、脳の活動を理解する有力な道具になっています。
とりわけ注目されるのがガンマ帯同期です。離れた脳領域がガンマ波で同期することが、ばらばらの情報を一つの知覚へ束ねる役割を担うという「同期による統合(binding)」仮説があります。ただしこれは有力ですが、なお議論のある仮説であり、本ページはそれを明示します。
02離れたニューロン群が、位相を揃える
下図は、異なる脳領域の二つのニューロン群が、結合を介して発火の位相を揃えていく様子です。同期が領域間の情報のやりとりを助けると考えられています。
二つの領域が同じリズムで発火すると、情報のやりとりの窓が開くと考えられている(communication through coherence 仮説)。
THE BRAIN AS A FIELD
思考とは、
ニューロンの群れが揃うその瞬間かもしれない。
一つのニューロンに思考は宿らない。だが無数のニューロンが発火のリズムを揃えたとき、そこに知覚が、注意が、意識が立ち現れる。脳は、結合振動子の群れが奏でる同期の場である。本図鑑が見てきた田んぼやホタルの数理が、頭蓋の内側でもはたらいている。
03脳波の帯——デルタからガンマまで
脳波は周波数帯で分類されます。深い眠りのデルタ波、まどろみのシータ波、リラックスのアルファ波、覚醒・集中のベータ波、そして高度な情報処理に関わるとされるガンマ波。それぞれが、異なるスケールのニューロン同期に対応します。
これらは固定的ではなく、課題や状態に応じて立ち現れたり消えたりします。脳は、複数の同期リズムを動的に切り替えながら情報を処理している——そう考えると、脳もまた一つの自己組織化系です。
04思想体系との接続
神経電気発火——大脳から小脳へ
この図鑑のデザインそのものが、神経の電気発火を主題にしている。そして宮崎要輔の身体論は、意識的な大脳制御から無意識的な小脳制御への移行を重視する。神経同期の研究は、リズムの揃いが脳のはたらきの核にあることを示し、身体の自己組織化(No.14)と地続きの問いを投げかける。
05よくある質問
神経同期とは何ですか?
多数のニューロンが発火やリズムを揃える現象です。脳を結合振動子系として捉える観点から研究されます。
ガンマ同期とは何ですか?
約30〜80Hzのガンマ波で離れた脳領域が同期する現象で、情報統合に関わるとされますが、なお議論のある仮説です。
脳波の種類は?
デルタ・シータ・アルファ・ベータ・ガンマなどの帯があり、それぞれ異なるスケールの神経同期に対応します。
身体とどう関係しますか?
リズムの揃いは脳のはたらきの核にあり、大脳から小脳への制御移行という身体の自己組織化と通じます。
07さらに広く、深く学ぶ
08主要参考文献
- Gray, C. M., Singer, W. (1989) “Stimulus-specific neuronal oscillations in cat visual cortex,” PNAS.
- Fries, P. (2005) “Neuronal communication through neuronal coherence,” Trends Cogn. Sci.(仮説段階).
- Buzsáki, G. (2006) Rhythms of the Brain, Oxford University Press.
監修・著:合同会社GETTAプランニング 宮崎要輔|一本歯下駄GETTAは合同会社GETTAプランニングが開発・製造・販売する登録商標製品です。