日本のさつまいも図鑑
江戸の飢饉を救い、戦後の食卓を支え、いま焼き芋ブームで世界へ。紅はるか、安納いも、鳴門金時、コガネセンガン——400年の食文化を背負う55品種を、図解イラストと系譜図で徹底して学べる勉強図鑑。
この図鑑でわかること(要点)
さつまいもは食感でほくほく系(紅あずま・鳴門金時)/しっとり系(シルクスイート)/ねっとり系(紅はるか・安納いも)に大別される。収穫は秋だが、貯蔵でデンプンが糖化する冬が本当の旬。焼き芋の甘さはβアミラーゼが働く65〜75度帯をゆっくり通過させることで最大化する。保存の適温は13〜15度で冷蔵庫は厳禁。生産量日本一は鹿児島、焼き芋・干し芋文化は茨城。本図鑑は55品種を歴史・食感・産地とともに図解する。
さつまいもとは — 食感の三分類で読む
ヒルガオ科サツマイモ属。中南米原産の根菜は、1600年頃に琉球へ渡り、薩摩から江戸へと北上して「さつまいも」の名を得た。
現代のさつまいも選びの第一言語は食感である。栗のようにほろりと崩れるほくほく系、なめらかなしっとり系、蜜のように濃いねっとり系——同じ「焼き芋」でも三派は別の食べ物に近い。第二の軸は色。黄金の定番に加え、アントシアニンの紫、カロテンのオレンジが食卓と菓子の彩りを広げる。そして第三の軸が用途——食卓に姿を見せない焼酎用・でんぷん用・干し芋用の品種たちまで含めて、初めてさつまいもの全体像になる。
400年の物語 — 救荒作物から焼き芋革命へ
さつまいもの歴史は、日本の危機の歴史と重なっている。
1600年頃に琉球へ、そして薩摩へ。1735年、青木昆陽が江戸で試作し、享保の飢饉に苦しむ庶民の命綱となった。「九里(栗)より(四里)うまい十三里」——江戸から川越までの距離に掛けた焼き芋の宣伝文句は、明治の名品「紅赤」を生んだ川越いも文化の証である。戦時は「沖縄100号」が主食を代替し、1945年には西日本の父「高系14号」が誕生。1984年の「紅あずま」で東の王朝が立ち、2010年の「紅はるか」がねっとり焼き芋革命を起こした。いま、コンビニの焼き芋機から海外輸出まで——救荒作物は、日本発のスイーツになった。
さつまいもの旬は、
収穫の秋ではなく貯蔵の冬である。
焼き芋の科学 — 甘さは温度と時間の関数
「石焼き芋はなぜ甘いのか」には、きちんと答えがある。
βアミラーゼの黄金温度帯
さつまいもの酵素βアミラーゼは、65〜75度前後でデンプンを麦芽糖に変える。石焼きや低温オーブンの「ゆっくり加熱」はこの温度帯の滞在時間を伸ばす技術であり、レンジ急加熱の焼き芋が甘くなりにくい理由もここにある。
キュアリング貯蔵 — 時間という調味料
収穫後、適温適湿で寝かせるとデンプンが糖化し、傷も自己修復される。「甘太くん=40日以上貯蔵」のように、貯蔵日数をブランド基準にする産地も現れた。新物信仰の逆を行く、熟成の作物である。
冷蔵庫に入れてはいけない
熱帯生まれのさつまいもは10度以下で低温障害を起こし、黒変して味が落ちる。適温は13〜15度——「新聞紙に包んで廊下」が科学的に正しい定位置である。
旬カレンダー — 8月の早掘りから翌3月の干し芋まで
秋に掘り、冬に甘くなる。さつまいものカレンダーは貯蔵とともに読む。
産地を知る — 青果・加工・焼酎の三つの地図
鹿児島・茨城・千葉の三強に、種子島・徳島・石川の個性派。さつまいもの地図は用途で読む。
生産量日本一・焼酎の国
シラス台地が育てる日本一の産地。青果の紅さつま、焼酎のコガネセンガン、でんぷんのシロユタカと、用途別の三本柱がそろう総合王国である。
焼き芋と干し芋の首都
紅はるかブランド「紅天使」「紅優甘」を擁し、ひたちなかの干し芋は全国シェアの大半を占める。加工文化の厚みで「食べる産地」の頂点に立つ。
紅あずまの本場
北総台地の畑が関東の焼き芋文化を支える。大栄・香取の直売文化は、ほくほく系の聖地である。
安納いもの島
ねっとり系の原点・安納いもの故郷。島の気候と在来の血が、蜜の食感を生んだ。紫の「種子島紫」も擁する個性の島。
金時ブランドの国々
鳴門金時、五郎島金時、土佐紅——高系14号の選抜系が各地で「金時」の名を磨き、西日本のほくほく文化を守る。
紅芋と新ブランドの南国
紅芋タルトのちゅら恋紅、飫肥杉ならぬ宮崎紅、貯蔵基準の甘太くん。南の産地は加工と観光を結ぶ発想で新しい市場を開く。
品種図鑑 — 全55品種
5つのチャプターで収録。カードの左帯の色はチャプターに対応。イラスト右端の断面色は果肉色を示す。
歴史をつくった品種 — 救荒から主食まで
1600年頃に琉球へ渡り、薩摩から江戸へ。享保の飢饉では青木昆陽の普及で無数の命を救い、戦中戦後は主食の座を担った。「唐芋」「甘藷」「さつまいも」——名前の変遷そのものが、この作物が日本を支えた歴史である。
紅赤
明治31年、一人の農婦が畑で見つけた突然変異が、日本さつまいも史の金字塔になった。美しい紅の皮と上品なほくほく感は「川越いも」の名声そのもの。125年を超えて今も栽培される、生きた文化財である。
- 出回り期
- 9月〜1月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 焼き芋で甘み上品
- 来歴
- 1898年・埼玉県の山田いちが発見。川越いもの代名詞
- 系統
- 八房の突然変異とされる
太白
白い皮に白い果肉——昭和の天ぷらの記憶を宿す古典。淡白な甘さは料理向きで、今も年配世代が名指しで探す懐かしの味。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 淡い上品な甘さ
- 来歴
- 明治期から親しまれた白皮の在来系
七福
七つの福を名に戴く明治の導入品種。多収で作りやすく、各地の在来「〇〇いも」の正体がこれだったという例も多い、隠れた大立者。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 穏やかな甘さ
- 来歴
- 明治期にアメリカから導入された古参
農林1号
国のさつまいも育種「第1号」の名を持つ歴史的品種。戦中戦後の食糧難の時代、米に代わって日本人の胃袋を支えた。素朴な味わいは、飽食の時代にこそ噛みしめたい。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜350g
- 甘さ
- 素朴な甘さ
- 来歴
- 1942年頃命名・国の育成第1号
沖縄100号
戦中戦後の日本で最も多く植えられた品種のひとつ。「この芋で生き延びた」という証言が今も語り継がれる、文字どおり命をつないだ芋である。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜350g
- 甘さ
- 淡い甘さ
- 来歴
- 戦前の沖縄で選抜され本土へ広がった
護国
「国を護る」——名前そのものが時代の証言である。食糧増産の最前線に立った芋の名は、平和な焼き芋の湯気の中でこそ記憶されるべきだろう。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜350g
- 甘さ
- 淡い甘さ
- 来歴
- 戦時に命名・普及した系統
高系14号
鳴門金時も五郎島金時も土佐紅も——西日本の「金時」ブランドの正体は、ほぼすべてこの品種の選抜系である。戦後80年、日本の西半分のさつまいもの父であり続ける、史上最重要品種のひとつ。
- 出回り期
- 9月〜2月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 焼くと濃厚なほくほく
- 来歴
- 1945年・高知県農事試験場育成
- 系統
- ナンシーホール × シャムとされる
ほくほく系 — 栗のような正統派
割れば湯気とともに黄金色の断面、口の中でほろりとほどける粉質の果肉。「栗(九里)より(四里)うまい十三里」と江戸っ子が呼んだのは、この食感である。関東の紅あずま、西日本の高系14号——東西二大王朝がこの章の主役。
紅あずま
関東のさつまいもと言えばこれ、という東の絶対王者。繊維が少なく甘みの乗ったほくほく食感は、大学いも・天ぷら・ふかし芋のすべてで基準となった。紅はるか時代の今も、ほくほく派の支持は揺るがない。
- 出回り期
- 9月〜2月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- ほくほく濃厚
- 来歴
- 農水省(現・農研機構)育成・1984年頃命名
- 系統
- 関東85号 × コガネセンガン
鳴門金時
ミネラルを含む海の砂地が育てる西の横綱。「里むすめ」「松茂美人」などの銘柄で知られ、栗のようなほくほく感と上品な甘さは天ぷら職人の指名率日本一級である。
- 出回り期
- 9月〜2月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 上品なほくほく
- 来歴
- 徳島県・鳴門海峡沿いの砂地で育つ高系14号系ブランド
- 系統
- 高系14号の選抜系
五郎島金時
加賀藩政期から続く金沢の砂丘畑ブランド。地元で「コッボコボ」と表現される強い粉質は、ほくほく系の極北である。加賀野菜の認定を受けた歴史の芋。
- 出回り期
- 9月〜2月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- コッボコボの粉質
- 来歴
- 石川県金沢市五郎島の加賀野菜ブランド
- 系統
- 高系14号の選抜系
土佐紅
高系14号の生まれ故郷・高知が守る本家の味。室戸の砂地などで育ち、いも天文化の土佐で愛され続ける。
- 出回り期
- 9月〜1月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 穏やかな甘さ
- 来歴
- 高知県の高系14号系ブランド
- 系統
- 高系14号の選抜系
紅さつま
さつまいも王国・鹿児島が青果用の看板とする品種。本場の名を背負う端正なほくほく感で、早掘り出荷から年末まで走る。
- 出回り期
- 8月〜12月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- ほくほく甘い
- 来歴
- 鹿児島県の主力青果用
- 系統
- 高系14号系
宮崎紅
日向灘沿いの砂地で育つ宮崎の顔。すっきりした甘さと美しい紅の皮で、青果市場の評価が高い。
- 出回り期
- 8月〜12月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- すっきり甘い
- 来歴
- 宮崎県の高系14号系ブランド
- 系統
- 高系14号の選抜系
紅こがね
関東にありながら西の高系の血を引く、いいとこ取りの流通ブランド。焼き芋・ふかし芋で安定の実力を見せる。
- 出回り期
- 9月〜2月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- ほくほく安定
- 来歴
- 茨城の青果ブランドとして流通
- 系統
- 高系14号系とされる
紅乙女
ほくほく系の名脇役。乙女の名のとおり癖のないやさしい甘さで、毎日の味噌汁や煮物に寄り添う。
- 出回り期
- 9月〜1月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- やさしい甘さ
玉乙女
玉ぞろいの美しさが身上のほくほく系。焼き芋屋の店先で形の揃った列を作る、見た目の優等生。
- 出回り期
- 9月〜1月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- やさしい甘さ
あまあかり
灯りのように明るい黄金の断面を持つほくほく系。名前どおりの素直な甘さで直売所の常連となっている。
- 出回り期
- 9月〜1月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 明るい甘さ
大栄愛娘
紅あずま王国・千葉の名産地、大栄地区の愛されブランド。北総台地の畑が育てる上品なほくほくは、関東の焼き芋文化の土台である。
- 出回り期
- 9月〜1月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- ほくほく上品
- 来歴
- 千葉県・大栄地区(成田)のブランド
ねっとり・しっとり系 — 焼き芋新時代
2010年デビューの「紅はるか」が、日本の焼き芋を書き換えた。蜜のように濃く、スプーンで食べるクリームのような食感——コンビニの焼き芋機とともに広がった新時代の主役たちと、その先駆者・安納いもがここに並ぶ。
紅はるか
「既存品種よりはるかに優れる」の名のとおり、日本の焼き芋を塗り替えた革命児。貯蔵で糖化した果肉は蜜のように濃く、ねっとり食感のブームとコンビニ焼き芋の時代を作った。輸出でもアジアの焼き芋市場を席巻中。
- 出回り期
- 10月〜3月(貯蔵熟成後が本領)
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 焼き芋は蜜のような甘さ
- 来歴
- 農研機構九州沖縄農業研究センター育成・2010年品種登録
- 系統
- 九州121号 × 春こがね
紅天使
紅はるかを貯蔵と選別で磨き上げた茨城発のブランド。「品種名ではなくブランド名で焼き芋を選ぶ」時代を切り開いた、さつまいもマーケティングの成功例である。
- 出回り期
- 10月〜3月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 蜜たっぷり
- 来歴
- 茨城・ポテトかいつかのブランド(品種は紅はるか)
- 系統
- 紅はるか
甘太くん
「40日以上の貯蔵」を基準化した大分の紅はるかブランド。時間という調味料をルール化した設計で、焼けば蜜があふれる。
- 出回り期
- 11月〜3月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 糖度40度級の焼き上がりも
- 来歴
- 大分県のブランド(品種は紅はるか・40日以上貯蔵)
- 系統
- 紅はるか
紅優甘
焼き芋の一大産地・行方(なめがた)が掲げる紅はるかブランド。スーパーの焼き芋機ブームを最前線で支えた名前である。
- 出回り期
- 10月〜3月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 蜜のような甘さ
- 来歴
- 茨城・JAなめがたのブランド(品種は紅はるか)
- 系統
- 紅はるか
安納紅
ねっとり系ブームのすべてはこの芋から始まった。兵士が戦地から持ち帰った一個の芋が種子島で育まれ、クリームのような食感と橙色の蜜果肉が「安納いも」の伝説になった。焼き芋史を二分する存在。
- 出回り期
- 10月〜2月
- 大きさ
- 150〜250g
- 甘さ
- ねっとり濃蜜
- 来歴
- 鹿児島県種子島・安納地区の在来から選抜(戦後スマトラ島から持ち帰られた芋が起源とされる)
安納こがね
安納紅の白皮バージョン。皮の色が違うだけで中身は同じ蜜世界——という分かりやすい兄弟対決が、売り場の楽しみを増やす。
- 出回り期
- 10月〜2月
- 大きさ
- 150〜250g
- 甘さ
- ねっとり濃蜜
- 来歴
- 種子島・安納紅の白皮系
- 系統
- 安納いも系
安納もみじ
紅葉の名を持つ安納ファミリーの新顔。在来ゆずりの濃蜜はそのままに、形や収量を磨いた現代版である。
- 出回り期
- 10月〜2月
- 大きさ
- 150〜250g
- 甘さ
- ねっとり濃蜜
- 来歴
- 安納系の選抜
- 系統
- 安納いも系
シルクスイート
名前がそのまま食感の説明になっている、しっとり系の完成形。絹のようになめらかな舌ざわりは繊維感ゼロで、紅はるかと焼き芋人気を二分する。冷やし焼き芋との相性も抜群。
- 出回り期
- 10月〜3月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 絹のようななめらか甘さ
- 来歴
- カネコ種苗・2012年頃デビュー
- 系統
- 春こがね × 紅まさり
紅まさり
シルクスイートの親としても名を残す、しっとり系の先駆け。蒸し芋にしたときの上品な甘さは、茨城の蒸かし文化とともに愛されてきた。
- 出回り期
- 10月〜2月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- しっとり上品
- 来歴
- 農研機構育成・茨城で普及
ひめあやか
「小さいことは良いことだ」を掲げて設計された小ぶり品種。一人で食べ切れるサイズと上品な甘さで、女性客の支持を集める。
- 出回り期
- 10月〜2月
- 大きさ
- 100〜200g
- 甘さ
- 小ぶりで上品
- 来歴
- 農研機構育成
クイックスイート
デンプンが低温で糊化する特性を持ち、電子レンジ加熱でも甘くなるよう設計された科学の芋。「石焼きでなければ甘くない」の常識に、品種改良で答えを出した。
- 出回り期
- 10月〜2月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- レンジでも甘い
- 来歴
- 農研機構育成
あまはづき
「貯蔵しないと甘くならない」というさつまいもの宿命に挑んだ最新世代。収穫直後から甘く、焼き芋シーズンを秋の入り口へ前倒しする。葉月(8月)に甘い、が名の由来。
- 出回り期
- 8月〜12月(早掘りでも甘い)
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 貯蔵前から高糖度
- 来歴
- 農研機構育成・2019年頃登録
からゆたか
しっとり系の層を厚くする新顔。焼いても蒸してもむらのない甘さで、産地の選択肢を広げている。
- 出回り期
- 10月〜2月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- しっとり甘い
EAT, THEN STAND ── 食べる身体は、立つ身体
食べる身体は、立つ身体である。
品種を選ぶ目と、足裏の解像度は同じ神経系にある。
食の図鑑の次に、身体の道具を。
紫・オレンジ・カラフル系
アントシアニンの紫、カロテンのオレンジ。色は栄養の在り処であり、菓子職人のパレットでもある。「紫は甘くない」の常識を壊した「ふくむらさき」、沖縄の紅芋文化、鹿児島の隼人いも——色の数だけ物語がある。
パープルスイートロード
「紫芋はきれいだが甘くない」という長年の常識に最初に風穴を開けた品種。紫の王道(ロード)の名のとおり、菓子用だった紫芋を食卓へ連れ出した。
- 出回り期
- 9月〜1月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 紫としては甘い先駆
- 来歴
- 農研機構育成
ふくむらさき
焼けばねっとり甘い、初めての本格甘系紫芋。断面の濃紫はアントシアニンの色で、「映えて、しかも旨い」という二刀流により紫芋の歴史を書き換えた。
- 出回り期
- 10月〜2月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 紫芋の常識を超える甘さ
- 来歴
- 農研機構育成・2019年頃登録
アヤムラサキ
濃いアントシアニンを持つ色素・加工用の代表。紫芋パウダー、ジュース、菓子の紫色の多くはこの芋に由来する。食べる絵の具である。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 甘みは控えめ(色素用)
- 来歴
- 農研機構育成
ムラサキマサリ
芋焼酎「赤霧島」の原料として名を馳せる紫芋。アントシアニンが醸す独特の華やかな香味は、焼酎ファンの秋の楽しみとなった。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 加工向き
- 来歴
- 農研機構育成
山川紫
鹿児島・山川に伝わる在来の濃紫。派手さより滋味の芋で、郷土菓子や芋焼酎の世界で静かに生き続ける。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 淡い甘さ
- 来歴
- 鹿児島県山川地方の在来
種子島紫
安納いもの島にはもうひとつの顔がある。しっとりした島の紫芋は、蒸すとほのかな甘さと美しい藤色の断面を見せる。
- 出回り期
- 9月〜1月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- ほんのり甘い
- 来歴
- 種子島の在来系
ちゅら恋紅
沖縄土産の代名詞・紅芋タルトの紫餡は、主にこの品種から生まれる。美(ちゅ)ら島の恋の名を持つ芋は、観光文化と農業を結ぶ架け橋である。
- 出回り期
- 9月〜1月
- 大きさ
- 150〜250g
- 甘さ
- 紅芋菓子の甘さの核
- 来歴
- 沖縄県の紅芋主力品種
宮農36号
ちゅら恋紅と並ぶ沖縄紅芋のもう一方の主力。ポリフェノール豊かな紫餡の供給源として、島の菓子文化を根底で支える。
- 出回り期
- 9月〜1月
- 大きさ
- 150〜250g
- 甘さ
- 菓子用の定番
- 来歴
- 沖縄で普及する紅芋系統
あやこまち
にんじん色の断面が美しいカロテン系の小町。彩りサラダや天ぷらで、食卓のオレンジ担当を務める。
- 出回り期
- 9月〜1月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- カロテンの甘み
- 来歴
- 農研機構育成
ハロウィンスウィート
「かぼちゃのようなさつまいも」というキャッチコピーごと名前になった愉快な品種。カロテン由来の風味と鮮橙の断面は、10月の売り場の主役である。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- かぼちゃのような甘さ
ベニハヤト
カロテン系育種の先駆けとなった80年代生まれ。オレンジ果肉の栄養価を早くから掲げた、機能性さつまいもの元祖である。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- やさしい甘さ
- 来歴
- 農研機構育成(1980年代)
隼人いも
「にんじん芋」の愛称で親しまれる薩摩の在来。大学いもにすると本領を発揮する素朴な味で、九州の台所の記憶を今に伝える。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 150〜300g
- 甘さ
- 素朴な甘さ
- 来歴
- 鹿児島の在来(にんじん芋)
ヒタチレッド
さつまいも大国・茨城のカロテン系。焼き芋王国の懐の深さを示す、彩り部門の担当である。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- ほんのり甘い
- 来歴
- 茨城で流通するカロテン系
紅きらら
きらきらと明るい橙の断面が名の由来。しっとり軽い口あたりで、カロテン系入門の一本。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- さっぱり甘い
フルーツこがね
果物の名を冠する爽やか系。冷やしてサラダやスイーツに使うと、名前の意味が腑に落ちる。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 果物のような爽やかさ
マロンゴールド
「十三里」の伝統に正面から挑む栗風味の黄金芋。白っぽい皮からは想像できない濃い黄色の粉質果肉が自慢である。
- 出回り期
- 9月〜1月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 栗のような風味
加工と食文化の品種 — 焼酎・でんぷん・干し芋
本格芋焼酎の香りはコガネセンガンから、干し芋の甘さはタマユタカから生まれる。食卓に姿を見せないまま日本の食文化を支える裏方の品種たち——さつまいもの世界の奥行きは、この章にある。
コガネセンガン
「森伊蔵」「魔王」「霧島」——本格芋焼酎の名だたる銘柄の原料は、ほぼこの黄金千貫である。でんぷんの塊のような白い大芋は、蒸留を経て華やかな芋の香りに化ける。日本の酒文化を支える影の主役。
- 出回り期
- 8月〜11月(焼酎仕込みの秋)
- 大きさ
- 200〜400g
- 甘さ
- でんぷん質豊富
- 来歴
- 農水省育成・1966年命名
シロユタカ
鹿児島のでんぷん工場を支える白い働き者。春雨やわらび餅風菓子の「さつまいもでんぷん」の多くは、この芋から生まれる。
- 出回り期
- 8月〜11月
- 大きさ
- 200〜400g
- 甘さ
- でんぷん用
- 来歴
- 農研機構育成
タマユタカ(玉豊)
日本の干し芋の大半を長年担ってきた伝統品種。生では地味だが、蒸して干せば別人級の飴色の甘さに変わる。ひたちなかの冬の風物詩・芋干し場の主である。
- 出回り期
- 収穫10〜11月・干し芋は12月〜3月
- 大きさ
- 200〜400g
- 甘さ
- 干すと濃厚な甘さ
- 来歴
- 茨城県ひたちなか周辺で干し芋用として定着
泉13号
干し芋通が最後に指名する幻の古典。栽培が難しく数は少ないが、その干し芋は上品な甘さと深い旨みで別格とされる。「いずみ」の名は干し芋界のロマネ・コンティである。
- 出回り期
- 干し芋は12月〜3月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 干し芋の最高峰
- 来歴
- 茨城の干し芋文化を築いた古典
ほしキラリ
干し芋のために国が設計した新世代。きらりと透ける飴色の仕上がりが名の由来で、タマユタカからのバトンを受けつつある。
- 出回り期
- 干し芋は12月〜3月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- 干し芋用の新星
- 来歴
- 農研機構育成
ジェイレッド
カロテンを活かしたジュース・ペースト用の設計品種。さつまいもが飲み物になる時代の先駆けである。
- 出回り期
- 9月〜12月
- 大きさ
- 200〜300g
- 甘さ
- ジュース向き
- 来歴
- 農研機構育成
カイアポ芋(シモン芋)
ブラジルからやって来た白い芋。甘さより健康食品としての利用で知られ、さつまいも文化の国際的な広がりを教えてくれる。
- 出回り期
- 10月〜1月
- 大きさ
- 200〜400g
- 甘さ
- 甘みは控えめ
- 来歴
- ブラジル由来
灯籠蜜いも
灯籠の明かりのような飴色の蜜をまとうブランド蜜芋。焼き上がりの断面から滴る蜜が、ねっとり時代の到達点を見せる。
- 出回り期
- 10月〜2月
- 大きさ
- 150〜250g
- 甘さ
- 蜜芋ブランド
- 来歴
- 蜜芋系のブランドとして流通
焼き芋の甘さは、
65度の時間がつくる。
全55品種 早見表
食感・果肉色・出回り期・持ち味を一覧比較。行頭の色はチャプターを示す。
| 品種・ブランド | 食感 | 果肉 | 出回り期(目安) | 持ち味 |
|---|---|---|---|---|
| 紅赤 | ほくほく | 黄肉 | 9月〜1月 | 明治の金字塔 |
| 太白 | ほくほく | 白肉 | 9月〜12月 | 白いさつまいも |
| 七福 | ほくほく | 黄肉 | 9月〜12月 | 明治の導入種 |
| 農林1号 | ほくほく | 黄肉 | 9月〜12月 | 戦時の主食 |
| 沖縄100号 | ほくほく | 黄肉 | 9月〜12月 | 戦後を救った芋 |
| 護国 | ほくほく | 黄肉 | 9月〜12月 | 時代を映す名 |
| 高系14号 | ほくほく | 黄肉 | 9月〜2月 | 西日本の父 |
| 紅あずま | ほくほく | 黄肉 | 9月〜2月 | 東日本の王 |
| 鳴門金時 | ほくほく | 黄肉 | 9月〜2月 | 西の横綱 |
| 五郎島金時 | ほくほく | 黄肉 | 9月〜2月 | 加賀野菜 |
| 土佐紅 | ほくほく | 黄肉 | 9月〜1月 | 生みの親の地元 |
| 紅さつま | ほくほく | 黄肉 | 8月〜12月 | 本場の青果用 |
| 宮崎紅 | ほくほく | 黄肉 | 8月〜12月 | 日向の砂地 |
| 紅こがね | ほくほく | 黄肉 | 9月〜2月 | 関東の高系 |
| 紅乙女 | ほくほく | 黄肉 | 9月〜1月 | 乙女の名 |
| 玉乙女 | ほくほく | 黄肉 | 9月〜1月 | 端正な玉 |
| あまあかり | ほくほく | 黄肉 | 9月〜1月 | 甘い灯り |
| 大栄愛娘 | ほくほく | 黄肉 | 9月〜1月 | 千葉の名産地 |
| 紅はるか | ねっとり | 黄肉 | 10月〜3月(貯蔵熟成後が本領) | 焼き芋革命の主役 |
| 紅天使 | ねっとり | 黄肉 | 10月〜3月 | 紅はるかブランド |
| 甘太くん | ねっとり | 黄肉 | 11月〜3月 | 貯蔵基準ブランド |
| 紅優甘 | ねっとり | 黄肉 | 10月〜3月 | なめがたブランド |
| 安納紅 | ねっとり | 橙肉 | 10月〜2月 | ねっとりの元祖 |
| 安納こがね | ねっとり | 橙肉 | 10月〜2月 | 白皮の安納 |
| 安納もみじ | ねっとり | 橙肉 | 10月〜2月 | 安納の新顔 |
| シルクスイート | しっとり | 黄肉 | 10月〜3月 | しっとり絹食感 |
| 紅まさり | しっとり | 黄肉 | 10月〜2月 | 蒸し芋の名手 |
| ひめあやか | しっとり | 黄肉 | 10月〜2月 | 小さな姫 |
| クイックスイート | しっとり | 黄肉 | 10月〜2月 | 電子レンジ設計 |
| あまはづき | しっとり | 黄肉 | 8月〜12月(早掘りでも甘い) | 貯蔵いらずの新星 |
| からゆたか | しっとり | 黄肉 | 10月〜2月 | しっとり新顔 |
| パープルスイートロード | ほくほく | 紫肉 | 9月〜1月 | おいしい紫の先駆 |
| ふくむらさき | ねっとり | 紫肉 | 10月〜2月 | 甘い紫の革命 |
| アヤムラサキ | 加工向き | 紫肉 | 9月〜12月 | 色素の芋 |
| ムラサキマサリ | 加工向き | 紫肉 | 9月〜12月 | 赤霧島の原料 |
| 山川紫 | ほくほく | 紫肉 | 9月〜12月 | 薩摩の在来紫 |
| 種子島紫 | しっとり | 紫肉 | 9月〜1月 | 島の紫 |
| ちゅら恋紅 | しっとり | 紫肉 | 9月〜1月 | 紅芋タルトの中身 |
| 宮農36号 | しっとり | 紫肉 | 9月〜1月 | 沖縄紅芋の主力 |
| あやこまち | しっとり | 橙肉 | 9月〜1月 | オレンジ小町 |
| ハロウィンスウィート | しっとり | 橙肉 | 9月〜12月 | かぼちゃ風味 |
| ベニハヤト | しっとり | 橙肉 | 9月〜12月 | カロテン系の先駆 |
| 隼人いも | しっとり | 橙肉 | 9月〜12月 | 薩摩の在来オレンジ |
| ヒタチレッド | しっとり | 橙肉 | 9月〜12月 | 常陸の紅 |
| 紅きらら | しっとり | 橙肉 | 9月〜12月 | きらめく断面 |
| フルーツこがね | しっとり | 橙肉 | 9月〜12月 | フルーツ感覚 |
| マロンゴールド | ほくほく | 黄肉 | 9月〜1月 | 栗風味 |
| コガネセンガン | 加工向き | 白肉 | 8月〜11月(焼酎仕込みの秋) | 芋焼酎の絶対王者 |
| シロユタカ | 加工向き | 白肉 | 8月〜11月 | でんぷんの主力 |
| タマユタカ(玉豊) | 加工向き | 白肉 | 収穫10〜11月・干し芋は12月〜3月 | 干し芋の伝統 |
| 泉13号 | 加工向き | 白肉 | 干し芋は12月〜3月 | 幻の干し芋 |
| ほしキラリ | 加工向き | 黄肉 | 干し芋は12月〜3月 | 干し芋新世代 |
| ジェイレッド | 加工向き | 橙肉 | 9月〜12月 | ジュース用 |
| カイアポ芋(シモン芋) | 加工向き | 白肉 | 10月〜1月 | 健康食文化 |
| 灯籠蜜いも | ねっとり | 橙肉 | 10月〜2月 | 蜜芋ブランド |
選び方と保存・焼き方
良い芋を選び、正しく寝かせ、ゆっくり焼く。さつまいもは段取りの果菜である。
紡錘形でずっしり、ひげ根が少ない
中央がふっくらした紡錘形で、持って重い芋は繊維が少なく味が濃い。ひげ根の穴が深く多いものは繊維質な傾向。
蜜のしみ・黒い固まりは甘さの証
切り口や皮に黒い蜜の固まりがにじんだ芋は糖度が高い当たり。皮の色つやが均一で傷のないものを選ぶ。
用途で品種を選ぶ
ねっとり焼き芋なら紅はるか・安納、天ぷら・大学いもなら紅あずま・鳴門金時、スイートポテトならシルクスイート。食感三分類が最短の指名買いガイドになる。
冷蔵庫NG・13〜15度で寝かせる
新聞紙に包んで室内の涼しい場所へ。買ってすぐより1〜2週間おいた方が甘くなることも多い。土付きは洗わず保存が長持ちのコツ。
160〜170度で60〜90分
家庭のオーブンなら低温でじっくりが黄金律。アルミホイルを巻き、竹串がすっと通ってから10分の余熱で蜜が回る。
冷やし焼き芋という新常識
焼いた芋を冷蔵庫で冷やすと、甘みの輪郭が立ちスイーツ感が増す。ねっとり系との相性は抜群で、夏のさつまいもの楽しみ方として定着しつつある。
さつまいものよくある質問
さつまいもの品種はいくつありますか?
一番甘いさつまいもはどれですか?
なぜさつまいもは貯蔵すると甘くなるのですか?
焼き芋がねっとり甘くなる科学的な理由は何ですか?
紅はるかと紅あずまの違いは何ですか?
安納芋はなぜねっとり甘いのですか?
紫芋は甘くないと聞きましたが本当ですか?
さつまいもの保存方法を教えてください。
さつまいもの生産量日本一はどこですか?
公的情報源と図鑑シリーズ
品種の正式情報は農林水産省の品種登録データベースへ。目安値は公的情報・産地公開情報を基礎にレンジで表記した。
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JAPAN CROPS ENCYCLOPEDIA — GETTA 勉強図鑑シリーズ
最終更新:2026年8月13日/目安値(糖度・果重・時期)は産地・天候により変動します
FROM THE TABLE TO THE DOOR ── 台所の次に、玄関に一足
台所の次に、玄関に一足。
食で整えた身体を、足元で仕上げる。
今日から、家で。



