眼と手の協応見えてから動くまで、0.2秒。この0.2秒は削れないが、見る前に動き始めることはできる。
- 眼と手の協応は、見た情報を手や身体の動作に変換する能力です。光が見えてからボタンを押すまでの単純反応時間はおよそ0.2秒で、これ自体は訓練でもほとんど縮みません。
- 縮められるのは、選択肢が多いときの判断の遅れと、動作の立ち上がりです。そして予測によって「見る前に動き始める」ことができます。
- 練習は、出現した標的に触れる、投げられた物を捕る、番号を順に触る、の三つが基本です。
0.2秒は縮まない。だから、先に動く
光が見えてからボタンを押すまでの時間を単純反応時間と呼び、健康な成人でおよそ0.2秒です。網膜から脳、脳から筋肉までの神経伝達の合計であり、訓練で縮む余地はごくわずかです。反応速度を上げたいと考える多くの人が、この縮まない部分を縮めようとして行き詰まります。
一方で、選択肢が増えると反応時間は延びます。右か左か、投げるか止めるか、選択肢の数に応じて判断の時間が加算されるためです。訓練で縮むのはこの判断の時間です。そしてもう一つ、決定的に大きいのが予測です。相手の動きや投球のリズムから次を予測できれば、見えてから動くのではなく、見る前に動き始めることができます。熟練者の反応が速く見えるのは、0.2秒を縮めたからではなく、動き始めが早いからです。
練習は三種です。ランダムな位置に出現する標的に触れる練習は、判断と手の立ち上がりを鍛えます。投げられた物を捕る練習は、飛来物の軌道予測と手の位置決めを結びます。壁に貼った番号を順に触るナンバータッチは、探索、跳躍、手の到達を連続させ、実際の競技の流れに最も近い練習です。
眼と手の協応トレーニングのやり方 5ステップ
標的タッチ
画面のランダムな位置に現れる点を、現れた瞬間に触れる。反応時間を計測し、標的を小さく、制限時間を短くしていく。
キャッチ
仲間に不規則なタイミングでボールを投げてもらい、片手で捕る。慣れたら二個を交互に、さらに軟らかいボールと硬いボールを混ぜる。
ナンバータッチ
壁に1から20までの数字を書いた紙をランダムに貼り、順に指で触れる。眼で探し、視線を跳ばし、手を到達させる一連の流れを速くする。
予測を入れる
投げ手が投げる前に、投げる方向を身体の向きから読んで先に動く。予測が外れたときに立て直せる範囲で、動き始めを早めていく。
不安定な足元で行う
一本歯下駄の上でキャッチとナンバータッチを行う。足元の処理と眼と手の処理を同時に回す。
その誤りは、何のサインか
見てから判断している
毎回同じだけ遅れる
相手の予備動作を読む練習を加える。反応ではなく予測で前に出る
手だけを速く動かす
手は速いが到達位置がずれる
正確さを先に固める。ずれた速さは修正の分だけ遅くなる
座って練習
手は動くが身体が動かない
立位で行う。眼と手の協応は眼と身体の協応の一部
見る前に、身体が動いている
見てから考えて動く。この順序で動いている限り、反応は必ず0.2秒以上遅れます。熟練者の身体は逆の順序で動いています。身体が先に反応し、見るのはその確認です。衝動が先で、探求は後。この衝動と探求の転倒が起きているとき、眼と手は協応しているのではなく、一つの動きの二つの側面になっています。
一本歯下駄GETTAの上でキャッチを行うと、足元が崩れる前に手が出なければ捕れません。考える余地がない条件が、身体の側の反応を引き出します。安定した足元では大脳が先に出てくる。不安定な足元でこそ、身体が先に動く五歳の身体性の順序が戻ってきます。
一本歯下駄GETTA × 眼と手の協応
この章の練習は、椅子に座った状態では眼と姿勢の連結が入りません。立位で、できれば一本歯下駄の上で行ってください。足裏一点の揺れが前庭系と視覚系を同時に働かせ、画面上の練習を競技の条件に近づけます。一本歯下駄GETTAは兵庫医科大学との共同研究で、動作速度15.1%の向上と反応時間0.10秒の短縮が確認されています。
ウォームアップ
一本歯下駄で立ち、両手を前に出して30秒。落ちそうになる方向に手が自然に動くのを確認する。
本練習
一本歯下駄の上で標的タッチ2分、キャッチ2分。
競技への橋渡し
一本歯下駄で立ち、相手の身体の向きを読んで投げられる前に手を出す。予測の練習。
12週統合プロトコル
| 期間 | 内容 |
|---|---|
| 第1〜2週 | 標的タッチ制限0.9秒・キャッチ片手。毎日5分 |
| 第3〜4週 | 制限0.6秒・二個キャッチ・ナンバータッチ追加 |
| 第5〜8週 | 一本歯下駄の上でキャッチとタッチ |
| 第9〜12週 | 予測練習。相手の予備動作から先に動く |
眼と手の協応のよくある質問
反応速度は本当に鍛えられないのですか
単純反応時間そのものはほぼ縮みませんが、競技で問題になるのは判断の時間と動き始めの早さで、これは訓練で大きく変わります。予測を含めた反応の総時間は縮みます。
反射神経がいい人は生まれつきですか
神経伝達の速さには個人差がありますが、競技での反応の速さの大部分は予測と判断の速さで決まり、これは経験と訓練で獲得されます。生まれつきで決まる部分は小さいと考えてください。
子どもの練習に向いていますか
キャッチとナンバータッチは遊びとして行え、子どもの眼と手の協応の発達に適しています。速さより、視線を跳ばして手を出す流れを楽しむことを優先してください。
一次資料と参照先
- 日本スポーツビジョン研究会眼と身体の協応をスポーツビジョンの構成要素として位置づける
- American Optometric Associationスポーツビジョンの領域を1978年から扱う米国検眼協会
- 視覚と眼球運動の身体科学(身体科学フロンティア図鑑)本章の科学的背景。前庭動眼反射、感覚再重み付け、クワイエットアイを扱う姉妹章
本章の数値は一般に報告されている目安であり、測定条件と個人差で変動します。眼の症状や、めまいの症状がある方は実施前に医療機関に相談してください。効果を保証するものではありません。