BRAIN TRAINING ZUKAN No.B10
PART III 土台 / EXERCISE & THE BRAIN

運動と脳認知機能に最も確実に効くのは、課題ではない。身体を動かすことである。

最も一貫した効果運動課題より確実
形式有酸素+認知課題二重課題型
強度の目安息が弾む程度会話ができる範囲
最優先継続強度より頻度
ANSWER FIRST / 先に答え
  1. 認知機能への効果が最も一貫して報告されているのは、脳トレの課題ではなく運動です。とくに有酸素運動と、認知課題を組み合わせた形式です。
  2. 効果の背景として、脳の血流の増加、神経の成長に関わる因子の分泌、睡眠の質の改善などが挙げられています。単一の仕組みではありません。
  3. 強度より継続です。息が弾む程度を週に数回、続けられる形式を選ぶことが条件になります。
DEFINITION / 運動と脳とは運動が認知機能に与える影響とは、有酸素運動や協調運動によって脳血流、神経栄養因子、睡眠、気分などが変化し、記憶や実行機能の維持・向上に寄与するとされる一連の作用を指します。
ESSENCE

脳トレより先に、身体を動かすこと

認知機能を保つために何をすべきかという問いに対して、現在最も一貫して支持されている答えは運動です。脳トレの課題は、その課題の成績を上げます。しかし日常や仕事への広い転移については結論が分かれています。一方で運動は、記憶や実行機能を含む複数の側面に影響が報告されており、しかも副次的な効果として睡眠、気分、心血管の健康まで同時に改善します。

仕組みは一つではありません。運動によって脳の血流が増えること、神経の成長や維持に関わる因子の分泌が高まること、睡眠の質が改善して記憶の固定が進むこと、気分の改善によって取り組みの質が上がること。これらが重なって効いていると考えられています。単一の物質や単一の経路に還元する説明には注意が必要です。

そのうえで、より効くとされる形式があります。運動と認知課題を同時に行う二重課題型です。国立長寿医療研究センターがコグニサイズとして体系化した形式は、歩きながら計算する、しりとりをしながら足踏みするといった単純な組み合わせで、運動単独より負荷が高くなります。歩くだけでも意味がありますが、同時に頭を使えるなら、そのほうが効率的です。

HOW TO

運動と脳を鍛える 5ステップ

息が弾む程度を確保する

会話はできるが歌えない程度の強度。週に数回、まとまった時間を取る。無理のない範囲から。

認知課題を重ねる

歩きながら数を引く、しりとりをする、周囲の看板の文字を拾う。運動単独より負荷が上がる。

協調運動を入れる

ボールを扱う、リズムに合わせる、複雑な足の運び。有酸素だけでなく、動きの複雑さも効く要素とされる。

続く形式を選ぶ

嫌いな運動は続きません。効率より継続。人と行う、記録する、移動と兼ねるなど、続く設計を優先する。

睡眠とつなげる

運動は睡眠の質を上げ、睡眠は記憶を固定する。運動の効果の一部は睡眠経由で現れる。

COMMON ERRORS

その誤りは、何のサインか

SIGN

強度を上げすぎる

数日で続かなくなる

続く強度が最適な強度。ゼロの日が増えるほうが損失は大きい

SIGN

運動だけで完結する

歩くだけを長年続ける

認知課題を重ねる。慣れた運動は負荷として下がっていく

SIGN

単一の物質に期待する

ある成分の分泌だけを目的にする

複数の経路が重なった結果。総合的な生活習慣として扱う

CULTURAL BODY THEORY / 五歳の身体性

歩くことは、考えることの一部だった

考えるために座るという習慣は、それほど古いものではありません。移動し、地面の変化に対応し、周囲を見渡しながら、人は考えてきました。運動が脳に効くという発見は、新しい方法の発見ではなく、切り離してしまったものを戻しているだけです。五歳の身体性とは、思考と移動がまだ分かれていない状態のことでもあります。

一本歯下駄GETTAで歩くことは、平らな道に地面の変化を持ち込みます。足裏と前庭に絶えず新しい入力が入り、その処理に脳の広い範囲が動員される。同じ距離を歩いても、入力の量が違います。

GETTA INTEGRATION

一本歯下駄GETTA × 運動と脳

脳の機能は、机の前に座った状態でだけ働くわけではありません。実際に使う場面では常に身体が動いています。この章の練習も、立って、できれば足元が不安定な条件で行うと、実生活と競技に近い形になります。一本歯下駄GETTAは兵庫医科大学との共同研究で、動作速度15.1%の向上と反応時間0.10秒の短縮が確認されています。

日常に混ぜる

一本歯下駄で3分歩く。移動と兼ねると続く。

認知課題を重ねる

歩きながら100から7を引く、しりとりをする。

人と行う

会話しながら歩く。運動・認知・交流の3つが同時に立つ。

12週統合プロトコル

期間内容
第1〜4週息が弾む運動を週3回。時間より頻度を優先
第5〜8週認知課題を重ねる。一本歯下駄を3分
第9〜12週協調運動を追加。人と行う回を週1回
継続続く形式に落とす。効率より頻度
Q&A

運動と脳のよくある質問

どれくらい運動すれば脳に効きますか

一律の数字は示せませんが、息が弾む程度の運動を週に数回という水準が、健康づくりの一般的な目安として広く用いられています。持病がある方は主治医に相談してください。

筋トレでも効果はありますか

有酸素運動での報告が多い一方、筋力トレーニングや協調運動でも認知機能への効果が報告されています。形式を限定するより、続く運動を選ぶほうが実際的です。

高齢の家族に勧めるときの注意は

転倒の防止が最優先です。支えのある場所で、短時間から。持病や服薬がある場合は主治医への相談を先にしてください。

PRIMARY SOURCES

一次資料と参照先

本章の内容は一般に報告されている知見の要約であり、効果を保証するものではありません。認知機能や睡眠、注意の困難で日常生活に支障がある場合は、練習で対処せず医療機関に相談してください。