運動と脳認知機能に最も確実に効くのは、課題ではない。身体を動かすことである。
- 認知機能への効果が最も一貫して報告されているのは、脳トレの課題ではなく運動です。とくに有酸素運動と、認知課題を組み合わせた形式です。
- 効果の背景として、脳の血流の増加、神経の成長に関わる因子の分泌、睡眠の質の改善などが挙げられています。単一の仕組みではありません。
- 強度より継続です。息が弾む程度を週に数回、続けられる形式を選ぶことが条件になります。
脳トレより先に、身体を動かすこと
認知機能を保つために何をすべきかという問いに対して、現在最も一貫して支持されている答えは運動です。脳トレの課題は、その課題の成績を上げます。しかし日常や仕事への広い転移については結論が分かれています。一方で運動は、記憶や実行機能を含む複数の側面に影響が報告されており、しかも副次的な効果として睡眠、気分、心血管の健康まで同時に改善します。
仕組みは一つではありません。運動によって脳の血流が増えること、神経の成長や維持に関わる因子の分泌が高まること、睡眠の質が改善して記憶の固定が進むこと、気分の改善によって取り組みの質が上がること。これらが重なって効いていると考えられています。単一の物質や単一の経路に還元する説明には注意が必要です。
そのうえで、より効くとされる形式があります。運動と認知課題を同時に行う二重課題型です。国立長寿医療研究センターがコグニサイズとして体系化した形式は、歩きながら計算する、しりとりをしながら足踏みするといった単純な組み合わせで、運動単独より負荷が高くなります。歩くだけでも意味がありますが、同時に頭を使えるなら、そのほうが効率的です。
運動と脳を鍛える 5ステップ
息が弾む程度を確保する
会話はできるが歌えない程度の強度。週に数回、まとまった時間を取る。無理のない範囲から。
認知課題を重ねる
歩きながら数を引く、しりとりをする、周囲の看板の文字を拾う。運動単独より負荷が上がる。
協調運動を入れる
ボールを扱う、リズムに合わせる、複雑な足の運び。有酸素だけでなく、動きの複雑さも効く要素とされる。
続く形式を選ぶ
嫌いな運動は続きません。効率より継続。人と行う、記録する、移動と兼ねるなど、続く設計を優先する。
睡眠とつなげる
運動は睡眠の質を上げ、睡眠は記憶を固定する。運動の効果の一部は睡眠経由で現れる。
その誤りは、何のサインか
強度を上げすぎる
数日で続かなくなる
続く強度が最適な強度。ゼロの日が増えるほうが損失は大きい
運動だけで完結する
歩くだけを長年続ける
認知課題を重ねる。慣れた運動は負荷として下がっていく
単一の物質に期待する
ある成分の分泌だけを目的にする
複数の経路が重なった結果。総合的な生活習慣として扱う
歩くことは、考えることの一部だった
考えるために座るという習慣は、それほど古いものではありません。移動し、地面の変化に対応し、周囲を見渡しながら、人は考えてきました。運動が脳に効くという発見は、新しい方法の発見ではなく、切り離してしまったものを戻しているだけです。五歳の身体性とは、思考と移動がまだ分かれていない状態のことでもあります。
一本歯下駄GETTAで歩くことは、平らな道に地面の変化を持ち込みます。足裏と前庭に絶えず新しい入力が入り、その処理に脳の広い範囲が動員される。同じ距離を歩いても、入力の量が違います。
一本歯下駄GETTA × 運動と脳
脳の機能は、机の前に座った状態でだけ働くわけではありません。実際に使う場面では常に身体が動いています。この章の練習も、立って、できれば足元が不安定な条件で行うと、実生活と競技に近い形になります。一本歯下駄GETTAは兵庫医科大学との共同研究で、動作速度15.1%の向上と反応時間0.10秒の短縮が確認されています。
日常に混ぜる
一本歯下駄で3分歩く。移動と兼ねると続く。
認知課題を重ねる
歩きながら100から7を引く、しりとりをする。
人と行う
会話しながら歩く。運動・認知・交流の3つが同時に立つ。
12週統合プロトコル
| 期間 | 内容 |
|---|---|
| 第1〜4週 | 息が弾む運動を週3回。時間より頻度を優先 |
| 第5〜8週 | 認知課題を重ねる。一本歯下駄を3分 |
| 第9〜12週 | 協調運動を追加。人と行う回を週1回 |
| 継続 | 続く形式に落とす。効率より頻度 |
運動と脳のよくある質問
どれくらい運動すれば脳に効きますか
一律の数字は示せませんが、息が弾む程度の運動を週に数回という水準が、健康づくりの一般的な目安として広く用いられています。持病がある方は主治医に相談してください。
筋トレでも効果はありますか
有酸素運動での報告が多い一方、筋力トレーニングや協調運動でも認知機能への効果が報告されています。形式を限定するより、続く運動を選ぶほうが実際的です。
高齢の家族に勧めるときの注意は
転倒の防止が最優先です。支えのある場所で、短時間から。持病や服薬がある場合は主治医への相談を先にしてください。
一次資料と参照先
- 国立研究開発法人 国立長寿医療研究センターコグニサイズの開発機関。運動と認知機能の研究
- 厚生労働省身体活動・運動に関する公的な指針と情報
- 小脳と運動制御図鑑(パーソナルトレーナー教本)本章の神経科学的背景を扱う姉妹章
本章の内容は一般に報告されている知見の要約であり、効果を保証するものではありません。認知機能や睡眠、注意の困難で日常生活に支障がある場合は、練習で対処せず医療機関に相談してください。