ハーフマラソン設計|脂肪酸化境界と接地効率 — インストラクター教材 第9章

INSTRUCTOR EDUCATION · CHAPTER 09

ハーフマラソン設計
──脂肪酸化境界と接地効率

ハーフマラソン(21.0975km)は、LT1付近を60-90分間維持する設計が問われる。脂肪酸化能力、Running Economyの長時間維持、グリコーゲン管理の三層を、REDZA・GETTAで編集する。

PERFORMANCE EQUATION
ハーフのタイム×選手の境界突破=LT1×Fat Oxidation×Running Economy(疲労時)×接地時間維持
Race Time
60-70min
エリート目安
FATmax 倍率
2-3x
訓練後
GCT
180-190ms
接地時間
Aerobic %
98%
有酸素
DomainLong Distance · Aerobic Endurance
Distance21.0975 km
Energy98% Aerobic · 2% Anaerobic
Critical脂肪酸化境界の引き上げ
NEURAL CIRCUIT · HALF MARATHON

ハーフマラソンのLT1+RE編集

ハーフはLT1付近を60-90分維持する。脂肪酸化能力と接地効率の両立が問われる。

H1
FATmax編集
低糖質トレ
H2
Z2長時間走
90-150分
H3
接地時間維持
180ms→230ms防止
H4
レースペース
LT2 -2-0%
H5
ラスト3km加速
残脚編集
SECTION 01

脂肪酸化能力の決定的重要性

ハーフマラソンの90分間で、消費されるエネルギーの30-50%は脂肪由来となる。脂肪酸化能力の差は、ペース維持力の差として現れる。

体内のグリコーゲン貯蔵量は限られている。筋グリコーゲンは300-500g、肝グリコーゲンは100g前後。フルパワーで使うと60-90分で枯渇する。ハーフマラソンの後半でグリコーゲンを温存できる選手が、最終的にタイムを縮める。

METABOLIC PRINCIPLE

脂肪酸化能力 (FATmax) は遺伝より訓練の影響が大きい。低強度長時間走行(Z2)、低糖質トレーニング、有酸素ベース構築の累積で、FATmaxは2-3倍に伸びる。

SECTION 02

FATmaxの編集プロトコル

FATmaxを上げる訓練は、長距離選手にとって毎週の習慣となる。

PROTOCOL A
Z2 ロングラン
90-150分のZ2強度走行。心拍145-160、RPE 4-5/10。FATmax の主刺激。週1回が標準。
PROTOCOL B
Train Low
朝食前の60-90分Z2走。グリコーゲン低値での走行で、脂肪酸化シグナルを増強。週1-2回。
PROTOCOL C
Sleep Low
夕方の高強度後、夜の食事を低糖質に。翌朝Z2走。低糖質状態でのミトコンドリア生合成シグナル。
PROTOCOL D
プログレッシブMP
90分走の後半30分をマラソンペースに。脂肪酸化での長時間維持を強化。
SECTION 03

接地時間の維持と疲労時代償

レース後半で接地時間が長くなる選手は、Running Economyが劣化している。これは「フォームが崩れた」のではなく、「神経駆動が劣化した」ということ。

レース前半の接地時間が180msだった選手が、後半で230msに伸びる。この50msの差が、ペースを5-10秒/kmも落とす。疲労状態でも接地時間を保つことが、ハーフマラソン選手の最大の課題となる。

接地時間維持のための三つのドリル

DRILL A
疲労後ドリル──60分Z2走の直後にREDZA着用ドリル20分。疲労状態で神経駆動を編集する稀少なセッション。
DRILL B
マラソンペース後半200m加速──60分テンポ走の最後の200mを5000mペースで疾走。疲労時加速力を編集。
DRILL C
15kmロング・ファルトレック──15kmを連続走行、その中で1km×5本をハーフマラソンペースで挟む。レース展開の予備練習。
TRANSITIONAL DECLARATION

ハーフは、脂肪酸化境界を90分維持する技術である。

ハーフマラソンの90分間で、消費されるエネルギーの30-50%は脂肪由来。FATmaxは遺伝より訓練の影響が大きい。低強度長時間走行、低糖質トレーニング、有酸素ベース構築の累積で、FATmaxは2-3倍に伸びる。

LEVEL EDIT

FATmax編集の四プロトコル

FAT OXIDATION PROTOCOLS

PROTOCOL A
Z2 ロングラン
90-150分のZ2強度走行。心拍145-160、RPE 4-5/10。FATmax の主刺激。週1回が標準。
頻度週1回
PROTOCOL B
Train Low
朝食前の60-90分Z2走。グリコーゲン低値での走行で、脂肪酸化シグナルを増強。週1-2回。
頻度週1-2回
PROTOCOL C
Sleep Low
夕方の高強度後、夜の食事を低糖質に。翌朝Z2走。低糖質状態でのミトコンドリア生合成シグナル。
頻度週1回
SECTION 04

レースペースの戦略設計

ハーフマラソンのレースペースは、選手のFATmaxとLT2の関係で決まる。

選手レベルレースペース vs LT2戦略
エリート(60分台)LT2 +0-2%イーブンペース
サブ70LT2 -2-0%後半5kmで加速
サブ80LT2 -5-3%イーブンペース、ラスト3km加速
サブ90LT2 -8-5%前半保守、後半維持
サブ100LT2 -12-8%FATmax維持優先
SECTION 05

REDZA・GETTAのマラソン系適用

ハーフマラソン以上の長距離選手は、REDZA・GETTAを毎日使うわけではない。戦略的選択が要る。

USE A
朝の足底活性化(5分)──起床後、家の中をREDZAで5分歩く。神経系を起動させる。
USE B
テクニカルドリル(週2回)──REDZA着用は維持。フォーム劣化予防の最重要ドリル。
USE C
イージーラン(週2-3回)──REDZA着用30-50分。ロング走と組み合わせない。
USE D
レース当日アップ──REDZAで足底感覚を最大解像度で起動。レース直前の20分。
SECTION 06

インストラクター運用指針

ハーフマラソン選手の指導は、フルマラソンへの登竜門としての側面も持つ。

FIELD NOTE

ハーフマラソンを「フルマラソンの半分」と捉えると、訓練が中途半端になる。独立した競技として、LT1付近の代謝編集に特化するのが正解。フルマラソンに進む選手は、ハーフで身につけた脂肪酸化能力をベースに、それをさらに長時間域に拡張する。

ハーフマラソンの歴史

HISTORICAL TIMELINE
1990
GAW Mehmet 1:00:55
21世紀の幕開け前夜の記録。
2007
Samuel Wanjiru 58:33
59分切りの先駆け。
2018
Geoffrey Kamworor 58:01
58分突破。
2025
Jacob Kiplimo 56:42 (Barcelona)
ハーフ56分台に到達(非公認)。
2026
Jacob Kiplimo 57:20 (Lisbon)
World Athletics公認の世界記録を樹立。

ハーフマラソン 主要記録

WORLD & NATIONAL RECORDS
種目記録選手
男子ハーフ 57:20 Jacob Kiplimo (UGA) 2026
女子ハーフ 62:52 Letesenbet Gidey (ETH) 2021
日本男子ハーフ 59:25 鈴木健吾 2024
日本女子ハーフ 67:39 新谷仁美 2021

最新研究のサマリー

RESEARCH SUMMARY · 2020-2025
脂肪酸化能力は2-3倍に伸びる
Achten & Jeukendrup (2003) の研究で、訓練未満者と訓練者のFATmaxは大きな差がある。
炭水化物は1時間以上では60-90g/h
Stellingwerff & Cox (2014) のガイドラインで、ハーフマラソンの強度では60-90g/hの炭水化物摂取が推奨。

参考論文・引用文献

PEER-REVIEWED REFERENCES
Fat oxidation during exercise
著者: Achten J, Jeukendrup AE (2003)
掲載: Int J Sports Med, 24(8), 603-608
Carbohydrate intake and endurance
著者: Stellingwerff T, Cox GR (2014)
掲載: Appl Physiol Nutr Metab, 39(9), 998-1011

権威機関・公式情報源

OFFICIAL & AUTHORITATIVE SOURCES
Records
World Athletics Half Marathon records
Jacob Kiplimo 57:20 (2026 Lisbon) が公認世界記録。
公式サイトへ
Federation
Association of International Marathons (AIMS)
国際マラソン連盟。世界中のマラソン・ハーフマラソンを統括。
公式サイトへ
Coaching Body
RRCA (Road Runners Club of America)
米国ロードランニング協会。コーチング教育の標準。
公式サイトへ
International Federation
World Athletics
陸上競技の国際統括団体。世界記録の公認、競技規則の制定、生理学・バイオメカニクス研究の発信源。
公式サイトへ
National Federation
日本陸上競技連盟 (JAAF)
日本国内の陸上競技を統括。日本記録の公認、強化指針、指導者養成プログラムを提供。
公式サイトへ
Sports Medicine
American College of Sports Medicine (ACSM)
米国スポーツ医学会。運動処方ガイドライン、運動生理学の標準的指針を発行する世界的権威機関。
公式サイトへ
Research Society
European College of Sport Science (ECSS)
欧州スポーツ科学会。国際的な研究発表とコンセンサスステートメントの発信源。
公式サイトへ
Research Institute
国立スポーツ科学センター (JISS)
日本のトップアスリート支援研究機関。国内エリート選手の科学的サポートを担う。
公式サイトへ
Academic Database
PubMed (NIH)
米国国立医学図書館の医学・生命科学論文データベース。本ページの引用論文の多くがここで検索可能。
公式サイトへ

よくある質問

FREQUENTLY ASKED QUESTIONS
ハーフマラソンとフルマラソンは同じ訓練でいいですか?
独立した競技として扱うのが正解です。ハーフはLT1付近の代謝編集に特化、フルはより低強度のZ2長時間走の編集に特化。両方を狙うなら、シーズンを分けて。
レース1ヶ月前から30km走は必要ですか?
ハーフ専門なら不要。20-25km走で十分。30km走は身体への負担が大きく、回復に3日以上必要。ハーフ専門なら避ける方がよい。
市民ランナーがハーフサブ80を狙う場合の週走行距離は?
50-70km/週で十分です。質の高いセッション(VO2maxインターバル週1+テンポ走週1+ロングラン週1)で50km、それ以外はリカバリージョグ。
ハーフマラソンのFATmax強度は、どの心拍・ペースで走ればいいですか?
訓練者のFATmaxは概ね最大酸素摂取量の60〜65%(LT1近傍)に出現し、心拍では最大心拍の70〜80%が目安です。脂肪酸化能は可塑的で、2025年の系統的レビュー・メタアナリシスでもFATmax強度での訓練が代謝柔軟性を高めることが確認されています。未訓練者よりも訓練者ほどFATmaxは高強度側へ移動します。
一本歯下駄GETTAは、ハーフマラソンのどの能力に効きますか?
接地時間の短縮と腱弾性(Running Economy)の編集です。筋で地面を押す脚から、腱で弾む脚へ。REDZAで神経駆動を、GETTAで接地の再学習を促し、後半でも接地効率が落ちない脚をつくります。これは腱優位システムへの移行そのものです。
レース当日の補給はどうすればいいですか?
90分前後のレースなら60〜90g/h の炭水化物が目安です(Stellingwerff & Cox, 2014)。サブ90ならジェル1本で足りることもあります。スタート前に十分な水分を摂り、脱水を避けることが後半の接地効率を守ります。
CONCLUSION

ハーフマラソンとは、脂肪酸化境界を
90分間維持する芸術である。

本章では、ハーフマラソンを「フルマラソンの半分」という文脈から解放し、独立した代謝編集の対象として再構築した。

FATmaxの編集、接地時間の維持、レースペース戦略──これらすべては、長距離選手にとっての標準装備となる。

次章はフルマラソン。グリコーゲン枯渇耐性とテンパー設計を解明する。

本章の位置付け:本ページは「一本歯下駄GETTAインストラクター教材 第9章」として、第8章の10000m設計を踏まえた、ハーフマラソン専門設計編です。

適用対象:本プログラムは健康な成人を主な対象としています。

製造販売:合同会社GETTAプランニング