筋電図(EMG)データが映し出す神経回路の組み換え|インストラクター教材 第1章

EMG SCIENCE / INSTRUCTOR LEARNING

筋電図データが映し出す
神経回路の組み換え──
REDZA・GETTAが書き換える歩行と立ち上がりの設計図

二本歯下駄REDZAを履いた前後の歩行筋電図、そしてREDZA装着の有無によるスクワット時の筋活動。 平均値と波形パターンの両面から、二関節筋協調制御理論・抜重理論・上位中枢の選択性という三本柱を再検討する、 一本歯下駄GETTAインストラクター向け教材。

SUBJECT EMG / 表面筋電図
MUSCLES 下肢主要5筋
TASK 歩行 / スクワット
FOR GETTA認定インストラクター
01 / INTRODUCTION

なぜ筋電図データを指導の言語に翻訳するのか

GETTA・REDZAの効果を「履けば分かる」で済ませてきた時代から、私たちは一歩先へ進みます。 身体の中で起きている神経活動の組み換えを、客観データを通して言語化し、指導の根拠と再現性を持たせる。 この教材は、その翻訳作業のためのテキストです。

指導とは結局のところ、「相手の身体の中で何が起きているのか」を読み取る解像度の勝負です。 感覚的な観察だけに頼ると、その解像度はインストラクターの経験年数に強く依存し、 他の指導者へ転移しにくい。だからこそ、客観データ(筋電図)を仮説のアンカーとして持ち、 そこから観察眼を再構築することに大きな意味があります。

本ページでは、二本歯下駄REDZAを使った検証実験から得られた次の二つのデータを扱います。

DATASET A

REDZAトレーニング前後の歩行筋電図

被験者がREDZAを使った継続的トレーニングを行う前後で、通常の裸足/シューズ歩行中の下肢主要5筋がどう変化したかを比較。 神経回路そのものの長期可塑性を捉えるデータ。

DATASET B

REDZAトレーニング10分の前後におけるスクワット時筋電図

同一被験者が同一動作(スクワット)を、わずか10分のREDZAトレーニングを挟む前後で実施。 短時間の神経適応がどれほど劇的に動員パターンを書き換えるかを捉える、 急性の神経可塑性のデータ。

この二つは、いずれもREDZAトレーニング前後の比較データですが、課題が異なる(歩行とスクワット)ことで、 REDZAが身体に及ぼす作用の普遍性と文脈依存性の両面を同時に映し出します。 とくにスクワットデータは10分という短時間で起きる急性適応を捉えており、 筋肉そのものの肥大や筋力増加では説明できない神経系の即応的書き換えを示唆します。 以下、平均値の解析、波形図の質的解析、そして二関節筋協調制御理論を含む既存の身体運動学との接続を順に進めていきます。

02 / WALKING ANALYSIS

歩行データ解析
大殿筋が消え、ハムストリングスが目覚める

歩行はもっとも頻度の高い動作です。だからこそ、ここで起きた神経回路の組み換えは 被験者の身体運用全体を底支えしている可能性が高い。平均値と波形の両側から読み解きます。

DATASET A — Mean ARV (mV) / 歩行
REDZAトレーニング前後の下肢5筋平均筋活動
トレーニング前
トレーニング後
.126
.039
.082
.130
.059
.051
.046
.080
.116
.134
大殿筋Gluteus Max
外側広筋Vastus Lat
大腿直筋Rectus Fem
ハムストリングスHamstrings
前脛骨筋Tibialis Ant
−69%
大殿筋
+59%
外側広筋
−14%
大腿直筋
+74%
ハムストリングス
+15%
前脛骨筋

平均値が告げる三つの事実

FACT 1

大殿筋の活動が約70%減少した

0.126→0.039。これは下肢で最大の筋肉である大殿筋が、歩行という最も繰り返される動作の中で 「もはや働かなくてよい」状態に変わったことを意味します。 大きな筋肉でゴリ押ししないと進めない歩行から、別の駆動系へ役割が委譲された。

FACT 2

ハムストリングスが約75%増加した

0.046→0.080。眠っていた二関節筋(膝と股関節をまたぐ)が、 歩行サイクルに参加する役者として動員され始めた。 後面チェーンの目覚めを示す最重要シグナルです。

FACT 3

外側広筋も約60%増加し、二関節筋ペアが完成した

0.082→0.130。ハムストリングス(後)と外側広筋(前)の両方が同時に増えたことが決定的に重要。 これは大腿前後の「拮抗ではなく協調」──二関節筋の協調制御が立ち上がった証拠です。

波形が告げる質的変化

平均値は「総量の足し引き」しか映しません。本当に身体の中で起きていることは、 筋活動の時間的なパターン──いつ、どのくらいの強さで、どんなリズムで発火するか──にあります。 以下、実測の生波形データを掲載します。

RAW DATA — WALKING
歩行時の下肢5筋 / トレーニング前後 EMG生波形
上から順に:大臀筋・外側広筋・大腿直筋・ハムストリング・前脛骨筋 / 横軸:時間(秒) 縦軸:筋活動(mV)
REDZAトレーニング前後の歩行時筋電図(EMG)生波形 / 大臀筋・外側広筋・大腿直筋・ハムストリング・前脛骨筋
トレーニング前 トレーニング後 ※ 単発で突出するスパイクは皮膚摩擦によるアーティファクト。除外してベースラインを読む。

① 大臀筋──発火パターンの完全な消失

トレーニング前は鋭いピークが20秒間で15回以上現れる「発火の山岳地帯」。 最大0.9 mVに達する突出ピークを持つ多発的な発火が連続している。 トレーニング後はほぼ平坦な低空飛行(0.1以下)に変わっています。 振幅が小さくなったのではなく、発火パターンそのものが消失した。 これは末梢の筋疲労や筋力低下ではなく、上位中枢からの「大殿筋を呼び出す指令」が出なくなったことを意味します。

② ハムストリングス──「眠っていたものが起きた」

歩行データの中で最も劇的な質的変化。トレーニング前のハムストリングスは 「ほぼ寝ている」状態(0.05ライン上下の低空飛行、最後だけわずかに尾を引く)。 トレーニング後は0.1〜0.3の山が周期的に現れるリズミカルな発火パターンに変わっています。 これは時間軸での「整流」現象──歩行サイクルに同期した協調パートナーへ昇格したサインです。 二関節筋協調制御理論が予測する状態が、実測データに鮮明に立ち上がっている。

③ 外側広筋──ピーク同期の獲得

トレーニング前後で振幅レベルは同程度ですが、トレーニング後の方が ピークの間隔とリズムが整っている。前は不規則な発火、後は周期的な発火。 ハムストリングスと外側広筋という二関節筋ペアが時間的に同期している点が決定的に重要です。

④ 大腿直筋・前脛骨筋──姿勢制御の質的変化

振幅の絶対値は大きく変わらないものの、発火タイミングがより歩行サイクルに整合するように再編されています。 とくに前脛骨筋はトレーニング後に発火の周期性が高まっており、足関節のスムーズな背屈制御の獲得を示唆します。

歩行データの結論

BEFORE — 単関節筋ドミナント
大殿筋ゴリ押しの歩行

大殿筋(単関節筋)が高く突出。前脛骨筋もよく働く。 裏ももは寝ている。「足を持ち上げ、お尻で押す」という非効率なフォーム。 毎歩ごとに大筋群を動員する大消費型。

AFTER — 二関節筋協調
前後協調の効率歩行

大殿筋オフ。代わりに外側広筋(前)とハムストリングス(後)の二関節筋ペアが 同時に高まる協調パターンへ。 大筋群を休ませながら、二関節筋の引き合いで関節角度が自動制御される省エネ型。

03 / SQUAT ANALYSIS

スクワットデータ解析
10分のREDZAトレーニングで身体配列が組み変わる

歩行が動作頻度の高さゆえに身体運用全体を底支えするデータならば、 スクワットは10分という短時間で起こる急性の神経適応を捉えるデータです。 わずか10分のREDZAトレーニングを挟むだけで、同じスクワットの筋動員パターンが質的に書き換わる── この事実が示唆するものを丁寧に読み解きます。

DATASET B — Mean ARV (mV) / スクワット
REDZAトレーニング10分前後のスクワット時筋活動比較
トレーニング前
トレーニング後(10分)
.048
.077
.520
.510
.158
.168
.090
.115
.382
.379
大殿筋Gluteus Max
外側広筋Vastus Lat
大腿直筋Rectus Fem
ハムストリングスHamstrings
前脛骨筋Tibialis Ant
+60%
大殿筋
−2%
外側広筋
+6%
大腿直筋
+28%
ハムストリングス
−1%
前脛骨筋

同じ被験者、同じスクワット──しかし10分で配列が変わる

最初に注目すべきは「変わったもの」と「変わらなかったもの」の組み合わせです。 トレーニング前のスクワットでは、外側広筋(0.52)が突出して働き、大殿筋(0.048)はほとんど寝ている。 これは現代人の典型的な膝主導型スクワットです。膝に負担を集中し、 お尻と裏ももが仕事をしていない非効率パターン。

わずか10分のREDZAトレーニングを挟んだ後、外側広筋と前脛骨筋(主働筋)はほぼ変わらないまま、 大殿筋が60%、ハムストリングスが28%増加します。 つまり、表側(前)の筋肉を増やすことなく、裏側(後ろ)だけが目覚めた。 これがトレーニング科学で「good squat」と呼ばれる股関節主導型スクワットへの自動的なシフトです。

ここで強調したいのは、10分という時間の短さです。10分では筋肥大も筋力増加も起こりません。 したがってこの変化は、筋そのものではなく神経系の動員パターンが組み変わった証拠── 言い換えれば、「使われていなかった神経回路が、使えるようになった」ということです。 これは神経科学でいう「アンマスキング(unmasking)」に近い現象で、 既存の回路が抑制から解放され、表層に立ち上がってきている可能性が高い。

RAW DATA — SQUAT
スクワット時の下肢5筋 / REDZAトレーニング10分前後 EMG生波形
上から順に:大臀筋・外側広筋・大腿直筋・ハムストリング・前脛骨筋 / 横軸:時間(秒) 縦軸:筋活動(mV)
REDZAトレーニング10分前後のスクワット時筋電図(EMG)生波形 / 大臀筋・外側広筋・大腿直筋・ハムストリング・前脛骨筋
トレーニング前 トレーニング後(10分) ※ 単発で突出するスパイクは皮膚摩擦によるアーティファクト。除外してベースラインを読む。

① 大臀筋──同期した発火の出現

スクワット波形のなかで最も美しい変化です。トレーニング前は0.05〜0.2の散発的な小さな山。 10分のREDZAトレーニング後には0.2〜0.4の明確な山が4回、ほぼ等間隔で現れる。 振幅増加よりも「タイミング同期の獲得」が決定的に重要です。 スクワット動作のリズムに大殿筋の発火がぴたりとロックされ、しかもこの変化がわずか10分で起きている

② 外側広筋──最大張力の低下と平坦化

平均値はほぼ同じ(0.520→0.510)ですが、波形を見ると最大ピーク値が明らかに下がっている。 トレーニング前(青)は1.5付近に突出するスパイクが繰り返し出現し、 トレーニング後(オレンジ)は1.0前後でなだらかに揃います。 これは「同じ仕事を、過剰収縮なしに、平坦で安定した出力で行う」状態の獲得です。 スムーズなスクワットの正体は最大筋力ではなく出力の安定性にある──という重要な知見。

③ 大腿直筋──協調的役割への移行

振幅レベルは同程度ですが、トレーニング後は山と谷の境界がより明瞭になり、 スクワットの動作位相に同期しやすい波形に変化しています。 二関節筋(大腿直筋)が単独で頑張る役割から、ハムストリングスとの前後協調パートナーへ移行している兆候。

④ ハムストリングス──ここでもリズム化

歩行と同様、トレーニング後にリズミカルな発火パターンが現れています。 歩行とスクワットという全く異なる動作で、ハムストリングスが両方ともリズムを獲得した事実は、 この二関節筋が動作横断的な協調パートナーとして上位中枢に組み込まれたことを示します。

⑤ 前脛骨筋──仕事の維持

トレーニング前は前半が高く、後半に向かって振幅低下(疲労)。 トレーニング後は前半で控えめにスタートし、後半最後の山が一番高い。 疲労耐性が向上し、後半まで均等に仕事を維持できているパターンです。

歩行とスクワット──大殿筋の正反対の振る舞い

ここで両データを並べると、興味深い事実が浮かび上がります。

CORE INSIGHT

同じ大殿筋が、歩行では消え、スクワットでは現れる

歩行データではトレーニング後に大殿筋が70%減少。 スクワットデータでは10分のトレーニング後に大殿筋が60%増加。 一見矛盾するこの二つの現象は、同じ原理の二つの現れです。 すなわち「使うべきときに使い、使わないときには休ませる」という選択性の獲得。 REDZAは筋肉を強くする/弱くする装置ではなく、「文脈に応じて動員を切り替える上位中枢」を鍛える装置です。 そしてその切り替え能力の獲得が10分という極めて短い時間で起き始めているという事実こそ、 REDZAが末梢の筋ではなく中枢の制御アルゴリズムに作用していることの最も強い傍証です。

04 / HYPOTHESIS

仮説論考
二関節筋協調制御理論との接続と、その先へ

ここからは、データの観察を超えて仮説の領域に入ります。 藤川智彦・大島徹・熊本水頼の二関節筋協調制御理論を骨格に置きながら、 抜重理論・確率共鳴・上位中枢の選択性・文化身体論まで、 GETTA・REDZAの効果を理論体系として再構築する六つの仮説を展開します。

HYPOTHESIS 01

二関節筋協調制御理論の臨床的実証

REDZA・GETTAは、単関節筋優位の身体運用を二関節筋協調優位の運用へ書き換える神経回路再編装置である。

藤川智彦博士、大島徹博士、熊本水頼博士らが提示してきた二関節筋協調制御理論は、 人間の四肢が単関節筋(モノアーティキュラー)と二関節筋(バイアーティキュラー)の協調によって、 出力方向を六角形状に最適化することを示しています。とくに大腿前後では、 外側広筋(単)+大腿直筋(二)+ハムストリングス(二)+大殿筋(単)の四者が織りなす出力分布が 運動効率と関節保護を決定づけます。

今回のデータは、この理論をきわめて鮮明に裏づけています。歩行データでは 「単関節筋(大殿筋)の縦方向押し出し」が消え、「二関節筋(ハムストリングス・外側広筋)の前後協調」へと 駆動の中心が移った。スクワットデータでは、表側の主働筋(外側広筋)を変えずに 裏側の二関節筋(ハムストリングス)と単関節筋(大殿筋)の協調が立ち上がった。

つまり、REDZAは二関節筋の協調が立ち上がる「下流の条件」を構造的に整える装置として機能しています。 支点(下駄の歯)の存在が二関節筋に小さな張力を要求し続け、繰り返し発火させることで 協調回路の優位性を組み替える。道具の構造的拘束が、神経回路の長期可塑性を駆動する── これは制約主導アプローチ(Constraints-Led Approach)とも合流する論点です。

HYPOTHESIS 02

抜重理論の神経基盤——「蹴る」から「抜く」への転換

抜重とは、単関節筋による縦方向プッシュ(蹴る)を二関節筋による対角張力(抜く)に置き換える神経パターン転換である。

GETTAの中核理論である抜重は、これまで「蹴らずに抜く」と表現されてきました。 この表現は感覚的には正しい一方で、神経生理学的にはこれまで定義が曖昧でした。 今回のデータは、抜重に明確な神経基盤を与えます。

歩行で大殿筋がほぼ完全にオフになったことを思い出してください。 大殿筋は股関節を縦方向に伸展させる単関節筋であり、地面を「蹴って」進む動作の主役です。 この主役が舞台から退いた──蹴る回路そのものが脱落したということ。 代わりに登場したのが、ハムストリングスと外側広筋の二関節筋ペア。 この二者は膝と股関節の両方をまたいで対角の張力を作る

縦方向の押し出しではなく、対角方向の張力で身体を運ぶ。これが「抜く」の正体です。 抜重を「単関節筋の縦軸出力を、二関節筋の対角出力で置換する神経パターン転換」と再定義することで、 身体感覚としての抜重は神経筋活動として測定可能・再現可能な現象になります。 指導現場では「お尻を使うな」ではなく「お尻が休むまで二関節筋が引き合うのを待て」と言える。

HYPOTHESIS 03

文脈依存的選択性──上位中枢の制御アルゴリズムが10分で書き換わる

REDZAが鍛えているのは末梢の筋力ではなく、動作の文脈に応じて筋を選び分ける小脳-基底核-皮質の上位制御アルゴリズムであり、その書き換えは10分単位の時間スケールで開始される。

歩行では大殿筋オフ、スクワットでは大殿筋オン。同じ筋肉が、同じ被験者の中で、 動作によって正反対の振る舞いをすることが、なぜ可能なのか。 これは末梢(筋肉そのもの)の説明では原理的に不可能です。 筋肉は中枢からの指令に従うだけで、自分で「いま使うべきか否か」を判断する機能を持たないからです。

したがってこの現象は、上位中枢(小脳-基底核-皮質ループ)が文脈ごとに筋動員パターンを切り替えているという 結論に必然的に行き着きます。歩行のような繰り返し低負荷動作では大筋群を温存し、 スクワットのような筋力発揮場面では大筋群を即座に動員する。 この「文脈依存的な選択性」こそが、人間の運動制御において最も洗練された機能であり、 熟達者と初学者を分かつ最大の差です。

さらに重要なのは、スクワット側のデータが10分のトレーニング前後で取られている事実です。 10分では筋肥大も筋力増加も起こりません。それでも動員パターンが質的に書き換わるということは、 REDZAが作用している層が明確に末梢ではなく中枢であることを示しています。 10分の足底刺激と支点入力で、上位中枢は「いまこの動作には何が必要か」を高速判定する閾値を すでに動かし始めている。これは生田久美子の「わざ言語」でいう「身体が文脈を読む」という事態の、 神経生理学的な開始時点の記述です。

HYPOTHESIS 04

確率共鳴と発火秩序化──ノイズが信号を生む

REDZAの不安定支点構造は適切な「制約ノイズ」として作用し、無秩序な発火を周期的な秩序信号に整流する確率共鳴を引き起こしている。

波形データを並べると、トレーニング前のハムストリングスは「平坦・低活動」、 トレーニング後は「リズミカルな周期発火」へと質的に変化していました。 スクワットの大殿筋も同様で、REDZA装着で4回の動作リズムに同期した山が立ち現れた。 これは単なる「活動量の増減」ではなく、時間軸上の秩序化です。

神経科学では、この現象は確率共鳴(Stochastic Resonance)として知られます。 適切なレベルのノイズが、閾値下にあった微弱信号を検出可能なレベルに押し上げる現象です。 REDZAの不安定な支点構造は、足底にとっての「適切な制約ノイズ」として作用し、 それまで上位中枢が拾えていなかった潜在的な協調パターンを可視化・実装可能にしている可能性があります。

ここから派生する仮説として、REDZAが特に効くのは「眠っていた回路を覚醒させる初期段階」「すでに洗練された回路をさらに精度化する熟達段階」の両端にあり、 その中間段階(慣れて飽和した状態)では効果が頭打ちになる可能性が示唆されます。 この仮説を確かめるには、トレーニング期間別のEMG変化曲線を継続観察する必要があります。

HYPOTHESIS 05

解像度の上昇——アクチビン濃度モデルとの接続

波形のリズム化は時間的解像度の上昇であり、これは神経成長因子(アクチビンを含む)による長期可塑性が支える可能性がある。

「アクチビン濃度=解像度」という命題は、これまで主に身体感覚の表現として用いてきたモデルです。 波形データはこのモデルに、具体的な観測可能性を与えます。 時間軸上で発火がリズム化していくということは、神経回路が「より細かい時間単位での発火制御を獲得した」── すなわち時間的解像度が上昇したことを意味します。

アクチビンを含む神経栄養因子は、シナプス可塑性と長期増強(LTP)に関与することが知られています。 REDZAのような適度な不安定性を持つ持続的入力は、これらの因子の発現を促し、 シナプス結合の選択的強化を駆動する可能性があります。 もしこの仮説が正しければ、REDZAトレーニングの効果は「使うほど解像度が上がる」自己強化型であり、 飽和点が高い場所に設定されている──インストラクターの長期キャリアにおいて、 自分自身の身体が継続的に変化し続ける根拠となります。

この仮説は今後、唾液バイオマーカーや末梢血中の神経栄養因子濃度との相関測定によって 検証可能になっていくでしょう。GETTAの理論体系は、こうした分子レベルの実証へと 橋渡しできる構造をすでに持っています。

HYPOTHESIS 06

文化身体の生成——転移する文化資本としてのEMG

神経回路の発火パターンの整流は、模倣と稽古を介して他者へ伝搬する。これが文化身体・転移する文化資本の生理学的基盤である。

最後に、もっとも射程の長い仮説です。EMGで観測されたリズム化された発火パターンは、 指導者の身体に「保管」されるだけでなく、稽古を通して受講者の身体に転写される性質を持つはずです。 なぜなら、ミラーニューロンを介した「観察による神経賦活」と、 実際の身体動作による「協調筋発火の経験」が、 同じ神経回路を双方向で強化しうるからです。

これはモースのいう「秀でた模倣(prestigious imitation)」を現代の神経科学で更新する論点です。 指導者の身体に刻まれた発火パターン──データとして可視化されたあのリズム──は、 言語を経由せずに、観察と稽古を介して受講者へ伝わる。 これが転移する文化資本生理学的基盤であり、 GETTAインストラクターという存在の本質的な仕事です。

つまり、インストラクターであるあなた自身の身体が抱える発火パターンの精度が、 そのまま指導の質を規定します。受講者は表面的な動作の真似をしているのではなく、 あなたの神経回路の秩序を吸い取っている。 だから、まずインストラクター自身がREDZA・GETTAを履き続け、 自分の身体の中に高解像度の発火パターンを育てる必要がある。 指導とは、高解像度の身体を共有する作業です。

05 / PRACTICE

インストラクター実践指針
この知見を現場の言葉に翻訳する

理論はそれ自体では現場で動きません。受講者の身体に届く具体的な言葉と観察視点に翻訳されてはじめて、 指導の道具になります。EMGデータから導かれる、現場で即時に使える五つの指針。

01
OBSERVATION
「お尻が頑張りすぎていないか」を歩行で見る

受講者の歩行を観察するとき、まず大殿筋の力みの有無に注目する。 前傾姿勢、骨盤の上下動、お尻の硬直は、すべて単関節筋ドミナント歩行のサイン。 REDZA・GETTA着用後にこれらが消えていけば、二関節筋協調回路への移行が起きている。

02
SQUAT
スクワットでは「履いたまま静止する」を入れる

REDZA装着でのスクワットは即時的に股関節主導型へ自動移行する。 この移行を身体に覚え込ませるには、最下点で2〜3秒の静止を入れる。 前脛骨筋・外側広筋の過剰収縮を抑え、大殿筋・ハムストリングスの遅い発火を促す時間が必要。

03
CONTEXT
動作ごとに筋肉が役割を変えることを伝える

「大殿筋は良い・悪い」ではなく、「いつ働き、いつ休むか」が問題であることを 最初に伝える。受講者が「大殿筋を使えていない」と落ち込まないために。 筋肉の評価は文脈依存であり、休めることもまた高度な機能だ。

04
PROGRESSION
「振幅より周期性」を進歩の指標にする

「強く力が入るようになった」よりも、「動作のリズムが整ってきた」 ことを進歩のサインとして拾う。波形のリズム化こそが本質的変化であり、 一見地味なこの変化を見逃さない眼を持つことがインストラクターの専門性。

05
SELF
指導者自身が日常的にREDZA・GETTAを履き続ける

あなた自身の身体に高解像度の発火パターンが宿っていなければ、 それを伝えることはできない。指導とは身体の共有。 毎日履く時間を死守することが、最も効果的なスキルアップ手段。

CONCLUSION

REDZA・GETTAは、筋肉を鍛えない。
神経回路を編集する。

平均値の棒グラフが示したのは「量の変化」でした。 波形図が示したのは「秩序の発生」でした。 両者を重ねると、REDZA・GETTAという道具の本質が立ち上がります。

筋肉を強くする道具は世の中にたくさんあります。けれども、 筋を選び分ける上位中枢のアルゴリズムを書き換える道具は、ほとんどありません。 私たちが扱っているのは、その稀少なカテゴリーの装置です。

だから指導の言葉も「鍛える」ではなく「整える」へ、 「強くする」ではなく「使い分ける」へ、 「意識的にやらせる」ではなく「身体の選択性が働くまで待つ」へ。 言葉が変わるとき、現場が変わります。

あなたの身体に蓄積された高解像度の発火パターンが、 受講者の身体に転写されていくとき、文化身体は世代を越えて伝わる。 このページの最後に書いておきたいのは、ただひとつ── 履き続けること、それ自体が研究と指導の中核である、ということです。

データソース: 本ページに掲載のEMG数値および生波形図は、被験者によるREDZA(二本歯下駄)を用いたトレーニングの前後における歩行筋電図、 および10分のREDZAトレーニングを挟む前後でのスクワット時筋電図測定に基づきます。 生波形画像はオリジナル測定データを直接掲載しており、平均値棒グラフは同データから算出しています。 波形上に時折出現する単発の突出スパイクは皮膚摩擦によるアーティファクトであり、これを除外したベースラインのパターン変化が本解析の対象です。 解析対象筋:大臀筋(Gluteus Maximus)、外側広筋(Vastus Lateralis)、大腿直筋(Rectus Femoris)、 ハムストリングス(Hamstrings)、前脛骨筋(Tibialis Anterior)。

製造販売: 合同会社GETTAプランニング
本教材は一本歯下駄GETTA認定インストラクターの学習用に作成されました。 記載の理論的解釈・仮説は現時点での暫定的見解であり、今後の継続的な検証によって更新されていきます。