胸鎖乳突筋
胸鎖乳突筋の解剖学的位置

胸鎖乳突筋の神経-筋-腱-骨スキーマ
起始から停止への張力線、神経入力、運動出力を進化思考3色で可視化。シアン=感覚入力、オレンジ=協調制御、パープル=統合・進化。
SENSORY 神経入力
副神経 (CN XI)・C2-C3前枝(proprioceptive)
COORDINATION 筋腱
起始:胸骨頭:胸骨柄前面/鎖骨頭:鎖骨内側1/3上面
停止:側頭骨乳様突起・後頭骨上項線外側
INTEGRATION 運動出力
対側回旋・同側側屈(片側)/頸部屈曲(両側)/吸気補助
胸鎖乳突筋とは
胸鎖乳突筋(SCM)は頸部前外側の最も浅層に位置する筋で、胸骨頭・鎖骨頭の二頭から起始し、側頭骨乳様突起と後頭骨上項線外側に停止します。副神経(CN XI)支配で僧帽筋と共通の独特解剖。Forward head postureの代表的短縮筋で、Texting neck(スマホ首)の中核病態。
日常生活では頭部の三次元位置決め、視線方向制御、深呼吸時の吸気補助で持続的活動。スポーツでは武道(頭部位置決め)、レスリング、ラグビーで動員。「Sternal head」と「Clavicular head」の二頭間で副神経の解剖学的キーポイント。
臨床的にはWhiplash(頸椎捻挫)の責任筋、Torticollis(斜頸:先天性筋性斜頸でSCM短縮)、Cervicogenic headache(頸原性頭痛)の中核病態。Spinal accessory nerve palsy で僧帽筋とともに侵される。GETTAでは姿勢制御で評価。
解剖学的基本データ
触診法
関連競技動作
- 武道・頭部位置決め
- レスリング・組み付き
- ラグビー・タックル
- ボクシング・頭部位置
- 体操・倒立姿勢制御
臨床的意義
鍛えるな、育てよ。
胸鎖乳突筋は GETTAで「育つ」。
胸鎖乳突筋・国家試験形式クイズ
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胸鎖乳突筋の深部機能解剖学
アナトミートレイン(属する筋膜連結線)
属する線:Superficial Front Line (SFL) — 浅前線(頸部成分)
線内での役割:SFLの頸部主成分。胸骨頭・鎖骨頭の二頭起始、副神経(CN XI)共通支配で僧帽筋とペア。Forward head posture病態筋。
機能的意味:SFLの「Head positioning master」。Forward head posture病態の中核。
筋膜連結(連動する組織)
- 僧帽筋: 副神経共通支配
- 斜角筋: 頸部側屈共同
- 板状筋: 後面拮抗
- 深層頸屈筋: 拮抗
キネティックチェーン(運動連鎖機能)
Open Kinetic Chain(OKC):OKCで頭部対側回旋・同側側屈・頸部屈曲。
Closed Kinetic Chain(CKC):CKCで頭部位置制御。
上肢機能における役割:Forward head postureの中核病態筋。Texting neckの主役。
パワー伝達:胸骨柄・鎖骨内側1/3→SCM→側頭骨乳様突起・後頭骨上項線外側。
単関節筋としての協調制御
関与関節:頸椎, 頭蓋
協調メカニズム:僧帽筋との「副神経支配ペア」。両側収縮で頸部屈曲、片側収縮で対側回旋+同側側屈。
拮抗ペア:板状筋(対側回旋では拮抗)・深層頸屈筋
筋の協調(Synergy & Force Couple)
共同筋(Synergists)
- 僧帽筋: 副神経共通
- 斜角筋: 頸部側屈共同
- 板状筋: 浅深協働(同側で拮抗的)
拮抗筋(Antagonists)
- 深層頸屈筋: 拮抗
- 板状筋: 対側回旋で拮抗
フォースカップル
SCM+僧帽筋上部+肩甲挙筋 = 「Janda上交差短縮triad」。
AT/PT 国家試験対策・臨床学習
頻出キーワード
臨床評価テスト
- Resisted cervical flexion+contralateral rotation
- SCM palpation
- Forward head posture measurement
- CCFT (Cranio-Cervical Flexion Test)
機能不全パターン
Congenital muscular torticollis:新生児・乳児のSCM短縮。Whiplash injury:交通外傷・スポーツ外傷でSCM評価必須。Cervicogenic headache:SCM慢性緊張による頭痛。Forward head posture:SCM胸骨頭短縮+深層頸屈筋弱化のパターン。
リハビリテーション戦略
SCM stretching+深層頸屈筋強化(CCFT-based exercise)+姿勢矯正。Janda上交差症候群矯正プログラム。
Clinical Pearls(臨床的真珠)
- Forward head postureの中核病態筋
- Texting neckの主役
- Cervicogenic headacheの責任筋
エビデンスベース(主要文献)
- Falla D 2004: Deep cervical flexor weakness
- Jull G 2008: Whiplash and SCM
- Janda V 1988: Upper crossed syndrome
筋膜的連結・固有受容覚的役割
筋膜的連結:SCM筋膜は頸部前外側筋膜・副神経経路と統合。SFL頸部中継器。
固有受容覚的役割:頭部位置覚の主要なproprioceptive contributor。
胸鎖乳突筋(Sternocleidomastoid/SCM)は、胸骨頭と鎖骨頭の2頭で起こり側頭骨乳様突起に停止する頸部前外側の表層筋。両側収縮で頚椎を屈曲、片側収縮で対側回旋+同側側屈を生み、呼吸補助筋としても働く。運動は副神経(脳神経XI)、知覚・固有受容は頚神経叢(C2–C3)が支配し、前庭系と結ばれた頭部位置覚のセンサーでもある。
首の筋は、平衡器官の出力先だった。
前庭への刺激は、胸鎖乳突筋の運動ニューロンを電気的に活性化する。臨床ではこの反応を使ってSCMから直接記録を取り、前庭機能を測る——VEMP(前庭誘発筋電位)。
つまりこの筋は「首を動かす筋」である前に、身体の傾きを姿勢へ翻訳する変換器だ。足裏に生まれた微細な揺らぎは、前庭系と固有受容を介して頚部センサー網へ届く。微弱なノイズが姿勢制御の信号を増幅する——確率共鳴は、足裏から鳩尾、そして首まで一続きに働いている。
FROM ANATOMY TO INTERVENTION ── 解剖を、明日のセッションへ
胸鎖乳突筋は、揺れの中で本来の役割に戻る。
起始・停止・神経支配の次は、実際に働く環境。
評価と再教育を同時に行う最小の不安定面。
胸鎖乳突筋のよくある質問
作用・神経支配・触診から、頭痛・前庭系・一本歯下駄トレーニングとの関係まで。検索意図の高い7問に、一次情報と身体理論の両面で答えます。
両側が同時に収縮すると頚椎を屈曲(あごを引く)し、片側だけが収縮すると「対側への回旋+同側への側屈」を生みます。さらに胸郭を引き上げる呼吸補助筋としても働き、努力性吸気に関与します。1つの筋が局面によって屈曲・回旋・側屈・呼吸補助を担い分ける——この多義性が胸鎖乳突筋の本質です。
運動は副神経(脳神経XI)が支配し、知覚と固有受容は頚神経叢(C2–C3前枝)が担う「二重支配」です。動かす神経と感じる神経が分かれている——つまりSCMは単なる動筋ではなく、頭部の位置を絶えず脳へ報告するセンサー器官でもあります。この知覚経路こそGETTAの身体理論が着目する点です。
起始は2頭に分かれ、胸骨頭が胸骨柄前面、鎖骨頭が鎖骨内側1/3上面から起こります。停止は側頭骨の乳様突起と後頭骨上項線の外側部です。胸骨・鎖骨という体幹の起点から、頭蓋の側後方へと斜めに走るこの走行が、首を「ねじる・倒す・うなずく」三方向の自由度を生みます。
顔を触れたい筋と反対側へ回旋させ、軽くあごを上げると、胸骨頭の腱が頸部前面にロープ状に浮き出ます。そこから鎖骨頭へ指を滑らせると、2頭を分けて確認できます。乳様突起(耳の後ろの硬い隆起)を起点に下方へたどるのも確実な方法です。
関係します。SCMのトリガーポイントは前頭部・眼周囲・耳奥へ関連痛を放散させ、緊張型頭痛の一因となります。加えてSCMは前庭系(平衡感覚)と神経的に結ばれており、頭部位置覚の乱れがふらつき・めまい感に関与することが知られています。
前庭への刺激は胸鎖乳突筋の運動ニューロンを電気的に活性化します。臨床ではこの反応を利用して前庭機能を測るVEMP(前庭誘発筋電位)検査が行われ、SCMから直接記録を取ります。SCMは「首を動かす筋」である以前に、平衡器官の出力先——身体の傾きを姿勢へ翻訳する変換器なのです。
一本歯下駄は接地点を一点に絞り、足裏に微細な不安定性=ノイズを与えます。このノイズは前庭系と固有受容を介して頭頸部へ伝わり、胸鎖乳突筋を含む頚部センサー網の感度を引き上げます。微弱な揺らぎが姿勢制御の信号を増幅する——確率共鳴の原理が、足裏から鳩尾、そして首まで一続きに働きます。
解像度の最上層に、胸鎖乳突筋がある
GETTAの身体理論では、解像度は足裏から鳩尾へと七層に積み上がる。その層を頭頸部まで延ばしたとき、最後に立ち上がるセンサーが胸鎖乳突筋だ。頭の位置覚が定まって初めて、下層の解像度が姿勢として結実する。
足裏 — ノイズの発生源
一本歯下駄の一点接地が微細な不安定性を生み、固有受容入力を増幅する。確率共鳴の起点。
鳩尾 — 体軸の結節点
下肢からの信号が体幹へ束ねられ、抗重力の軸が立ち上がる。腱優位システムが弾みを生む層。
頸部・胸鎖乳突筋 — 位置覚の頂点
前庭と固有受容を束ね、頭部の傾きを姿勢へ翻訳する。能動でも受動でもなく、揺らぎに応答して姿勢が定まる——中動態の身体性が、ここで完成する。
一次情報・主要文献
本ページの解剖記述は、国際的に参照される一次解剖学リソースに基づいています。原典で深く確かめたい方へ。
協働する関連筋へ
胸鎖乳突筋は単独では働きません。頭頸部の回旋・伸展で協働・拮抗する筋を解剖図鑑で横断的に学べます。
首の解剖を、全身の再設計につなげる。
胸鎖乳突筋を「位置覚の変換器」として捉え直したなら、次は身体全体で確かめる番です。一本歯下駄GETTAのトレーニング体系と完全ガイドが、足裏から首までの一続きを実践に落とし込みます。
EIGHT PILLARS / 思想体系の入口
getta.jp の8本の柱へ
この図鑑は孤立した教材ではない。「鍛えるな育てよ」「転移する文化資本」「中動態の身体」——一本歯下駄GETTAを支える思想体系の8本の柱へ、ここから直接到達できる。
思想全体像
転移する文化資本
文化資本理論完全解説
総合案内
一本歯下駄完全ガイド
トレーニング体系
宮崎要輔
GETTAコンセプト
CHOOSE YOUR FIRST STEP
3つのモデルから、最初の一歩を選ぶ
GETTA / TOTONOE / REDEZA。あなたの身体性と目的に応じて、最適な一本歯下駄を選んでください。
胸鎖乳突筋とは何か
胸鎖乳突筋とは、胸骨柄と鎖骨内側1/3の二頭に起こり、側頭骨乳様突起と後頭骨上項線外側に停止する頸部前外側の長大な筋である。運動は副神経(CN XI)、位置覚・固有受容は頸神経叢C2–C3が担う二重支配を受け、一側収縮で反対側回旋+同側側屈、両側収縮で頸部屈曲・環椎後頭関節での頭部伸展と吸気補助を行う。すなわち、重力下で頭位を定める抗重力制御の最前線に立つ筋である。
姿勢制御・神経支配と GETTA身体論
SCMは単なる「首を回す筋」ではない。運動指令(CN XI)と位置覚(C2–C3)が一本の筋の中で分業する稀有な構造をもち、頭位という体軸の頂点を制御する。ここでは神経支配・代表的病態・呼吸補助という四つの臨床的論点を一次資料で確認し、そこから一本歯下駄GETTAの身体論へ接続する。
CN XIとC2–C3の二重支配 — なぜ分かれているのか
SENSORY INPUTCN XIC2–C3
運動性支配は副神経(accessory nerve, CN XI)の脊髄根が担う。脊髄根は頸髄前角に起こり、頸静脈孔を経て胸鎖乳突筋と僧帽筋を支配する純運動性の脳神経である。一方、筋の位置覚・固有受容は頸神経叢の前枝C2–C3(一部C4)が担う。この分業により、「動かす」系統と「今どこにあるかを測る」系統が独立し、頭位の高精度フィードバック制御が成立する。SCMには筋紡錘が密に分布し、上位頸椎由来の固有受容情報は前庭核・小脳で統合される。
出典: StatPearls Anatomy, Head and Neck, Sternocleidomastoid Muscle/Neuroanatomy, Cranial Nerve 11 (Accessory)
先天性筋性斜頸(CMT) — SCMが短縮するとき
CONGENITAL MUSCULAR TORTICOLLIS
先天性筋性斜頸は、SCMの線維化・短縮により頭部が患側へ側屈し健側へ回旋して固定される病態である。臨床的にはpostural(筋緊張なし)/muscular(SCM緊張あり)/SCM mass(線維性腫瘤)の3型に分類され、最も高頻度に罹患する筋がSCMである。SCM病変の有無で病態機序・臨床像が異なることも報告されている。この病態は、SCMが頭位を規定する力学的支配筋であることを逆説的に示す。
出典: PubMed Congenital muscular torticollis: current concepts and review of treatment(PMID:16470158)
前方頭位姿勢(FHP)と固有受容の劣化
COORDINATIONFORWARD HEAD POSTURE
頭部が前方へ偏位する前方頭位姿勢(forward head posture)では、SCM・上部僧帽筋・上位頸椎伸筋群が過活動となり適応性に短縮する。この姿勢は頸部固有受容(cervicocephalic kinesthesia)の低下と関連し、姿勢制御・神経筋機能を損なう。頸部筋の求心性入力は、振動刺激下では前庭求心性に対して優位に働くことが示されており、頸部固有受容の質が頭部・体幹の定位(オリエンテーション)を左右する。SCMの過活動は、この精緻なセンサー網を鈍らせる方向に働く。
出典: Influence of Forward Head Posture on Cervicocephalic Kinesthesia and EMG of Neck Musculature (PMC)/Cervical muscle afferents dominate over vestibular afferents during neck vibration (PMID:17312340)
吸気補助筋としてのSCM
SCMは両側収縮で頸部を屈曲させると同時に、胸骨・鎖骨を引き上げることで強制吸気時の補助筋として働く。安静呼吸では関与は小さいが、努力性呼吸・呼吸障害時には胸郭上部を挙上して換気を補う。頭位制御と呼吸が同じ筋を共有するという事実は、頸部・体軸・呼吸が一つの制御系として連動していることを示している。
出典: Kenhub — Sternocleidomastoid muscle: Anatomy and functions
GETTA身体論への接続 — 頭位は体軸の頂点である
INTEGRATION解像度確率共鳴
頭頸部の抗重力制御は、体軸の頂点である。解像度の七層において、足裏が起点なら頭位は最上層に位置する。SCMが担う頭位の固有受容は、前庭系と統合されて全身の定位を決定づける。
一本歯下駄GETTAの一点接地が生む制御された不安定刺激は、足裏の機械受容器を強制的に動員する。この微細な揺らぎは信号を増幅するノイズ——すなわち確率共鳴の入力源として働き、前庭系と頸部固有受容を同時に賦活する。頭位を「固める」のではなく、揺らぎの中で頭位制御を再学習させる。これは能動でも受動でもない中動態の過程であり、頸部・SCMの固有受容ループを、頭で命じることなく開いていく。頸部固有受容と前庭の協調が身体の定位を形づくるという知見は、足裏から頭位までを一つの解像度として束ね直すGETTAの設計思想と一致する。
関連知見: Neck Proprioception Shapes Body Orientation and Perception of Motion (PMC)
※本セクションは図鑑本文を補完する追補です。基本データ(起始・停止・神経支配・作用・触診)は上掲の本編をご参照ください。
参考文献・一次資料
本追補で参照した一次資料・査読研究と、関連する図鑑内ページを示す。外部リンクはすべて公開時にHTTP 200を確認している(学術データベースは閲覧環境により認証を求める場合がある)。
- StatPearls. Anatomy, Head and Neck, Sternocleidomastoid Muscle. NCBI Bookshelf. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK532881/
- StatPearls. Neuroanatomy, Cranial Nerve 11 (Accessory). NCBI Bookshelf. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK507722/
- Clinical Methods. Cranial Nerve XI: The Spinal Accessory Nerve. NCBI Bookshelf. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK387/
- Kenhub. Sternocleidomastoid muscle: Anatomy and functions. https://www.kenhub.com/en/library/anatomy/sternocleidomastoid-muscle
- Congenital muscular torticollis: current concepts and review of treatment. PubMed, PMID:16470158. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16470158/
- Forward Head Posture and Cervicocephalic Kinesthesia / EMG of Neck Musculature. PMC7835487. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7835487/
- Cervical muscle afferents play a dominant role over vestibular afferents during bilateral vibration of neck muscles. PubMed, PMID:17312340. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17312340/
- Neck Proprioception Shapes Body Orientation and Perception of Motion. PMC4220123. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4220123/
図鑑内の関連ページ
理論を深める — GETTA公式とコンテンツハブ
CLINICAL TOOLKIT ── 一本歯下駄GETTAを臨床に
胸鎖乳突筋を、足元から起こす一足。
解剖の次に、立つ。
指導者がまず自分の足で確かめる3モデル。


