棘上筋(Supraspinatus)— 起始・停止・神経支配・作用・触診の完全解剖

SHOULDER / CATEGORY 02

棘上筋

Supraspinatus
起始肩甲骨棘上窩…
停止上腕骨大結節上面…
神経肩甲上神経 (C5, C6)
主作用肩関節外転(初期0-15度の主働)・関節安定化
ILLUSTRATION / 解剖図

棘上筋の解剖学的位置

棘上筋 (Supraspinatus)
棘上筋(Supraspinatus)/肩関節筋群
FUNCTIONAL SCHEMA / 機能スキーマ

棘上筋の神経-筋-腱-骨スキーマ

起始から停止への張力線、神経入力、運動出力を進化思考3色で可視化。シアン=感覚入力、オレンジ=協調制御、パープル=統合・進化。

SENSORY INPUT神経入力肩甲上神経 (C5, C6)COORDINATION筋腱複合体起始肩甲骨棘上窩停止上腕骨大結節上面INTEGRATION運動出力肩関節外転(初期0-15度の主働)・関節安定化棘上筋(Supraspinatus)/肩

SENSORY 神経入力

肩甲上神経 (C5, C6)

COORDINATION 筋腱

起始:肩甲骨棘上窩
停止:上腕骨大結節上面

INTEGRATION 運動出力

肩関節外転(初期0-15度の主働)・関節安定化

OVERVIEW

棘上筋とは

棘上筋は回旋腱板(rotator cuff: SITS)の最上位筋で、肩甲骨棘上窩から肩峰下を通り上腕骨大結節上面に停止します。肩関節外転の初期0-15度の主働筋であり、その後は三角筋中部が主役を担います。肩峰下インピンジメント症候群の責任部位として臨床的に最重要。

日常生活では物を持ち上げる初動、手を頭上に伸ばす開始、髪を結ぶなどあらゆる肩外転動作の起点として動員。スポーツでは投球のcocking phase、水泳のrecovery、テニスサーブのトロフィーポジションで動員。肩関節の動的安定化(求心化)機能は全肩関節動作で持続的に活動。

臨床的に最重要な疾患は棘上筋腱断裂(全rotator cuff断裂の60-80%)。Codman triangle(critical zone)と呼ばれる相対的乏血域での損傷が好発。Drop arm test、Empty can test(Jobe test)、Painful arc signが診断の中核。GETTAでは肩外転位での上肢動作で動員、リハビリでは「動的安定化筋」として重視。

ANATOMICAL DATA

解剖学的基本データ

起始 / Origin
肩甲骨棘上窩
停止 / Insertion
上腕骨大結節上面
神経支配 / Nerve
肩甲上神経 (C5, C6)
血液供給 / Blood
肩甲上動脈
作用 / Action
主作用:肩関節外転(初期0-15度の主働)・関節安定化
・肩関節求心化
・肩外旋微補助
・関節包安定化
PALPATION

触診法

肩甲棘の上方(棘上窩)で深層に触知。直接触知は僧帽筋上部に覆われるため困難だが、肩外転15度位での抵抗外転で活動を感じる。停止部(大結節上面)は肩外側で触知可能(インピンジメント圧痛点)。
トリガーポイント:棘上窩・大結節停止部にTrPが好発。肩三角筋部・上腕外側への放散痛として現れる。インピンジメント・腱炎との鑑別が必要。
SPORT MOVEMENTS

関連競技動作

  • 野球投球・cocking phase(外転外旋)
  • 水泳・クロールのrecovery(外転)
  • バレーボール・スパイクのトロフィーポジション
  • テニスサーブ・準備姿勢
  • ウェイトリフティング・スナッチのキャッチ
CLINICAL SIGNIFICANCE

臨床的意義

棘上筋腱断裂(rotator cuff tear):①Articular-side(関節側)部分断裂が最多、②Full-thickness断裂は60歳以上で増加、③外傷性(30%)vs 変性性(70%)。臨床像:①Painful arc(60-120度)、②Drop arm test陽性、③Empty can test陽性、④夜間痛が特徴的。MRI診断がgold standard。インピンジメント症候群はNeer分類stage I-IIIに進行。
GETTA APPLICATION / 思想体系

鍛えるな、醸せ。
棘上筋は GETTAで「醸される」。

棘上筋は肩単独の筋ではなく、足裏から鳩尾を経由する張力リレーの終点である。GETTAの一本歯が足部に生む微小な不安定性は、骨盤・体幹を経由して肩甲胸郭関節まで到達し、棘上筋を中動態的に動員する。鍛えるのではなく醸す——孤立した肩のトレーニングではなく、全身の張力線が同期して肩を「醸す」。五歳の身体性が持っていた肩甲帯の自由度が回復し、腱優位の弾性が回旋腱板の協調を取り戻す。確率共鳴によりノイズが信号化され、棘上筋はSFAL/DFAL(上肢前面線)の一本の張力線として全身と共鳴する。
鍛えるのではなく醸す/中動態の身体性/腱優位の弾性駆動
EXAM PREP QUIZ / 国家試験対策クイズ

棘上筋・国家試験形式クイズ
鍼灸師 / 理学療法士 / アスレティックトレーナー 各5問

3職種の国家試験・認定試験頻出パターンに準拠した実践問題。クリックで即時採点+詳細解説。

Q1鍼灸師国家試験形式
棘上筋(Supraspinatus)を支配する神経はどれか。
解説
棘上筋は肩甲上神経 (C5, C6)に支配される。鍼灸臨床では神経走行を踏まえた刺入深度と方向の判断が必須。
Q2鍼灸師国家試験形式
棘上筋の起始として正しいのはどれか。
解説
棘上筋の起始は「肩甲骨棘上窩」。経穴の取穴と局所解剖の対応が国家試験で問われる。
Q3鍼灸師国家試験形式
棘上筋の触診について正しい記述はどれか。
解説
触診法:肩甲棘の上方(棘上窩)で深層に触知。直接触知は僧帽筋上部に覆われるため困難だが、肩外転15度位での抵抗外転で活動を感じる。停止部(大結節上面)は肩外側で触知可能(インピンジメント圧痛点)。。鍼灸の取穴・刺入で必須の手技。
Q4鍼灸師国家試験形式
棘上筋の主作用として最も適切なものはどれか。
解説
棘上筋の主作用:肩関節外転(初期0-15度の主働)・関節安定化。経穴選定の際、運動機能との連動性を考慮する。
Q5鍼灸師国家試験形式
一本歯下駄GETTAが棘上筋に与える影響として、東洋医学的観点から最も適切な記述はどれか。
解説
GETTAは棘上筋を「鍛える」のではなく「醸す」。中動態的な張力発生=陰陽の動的バランス。確率共鳴により微細な気血の流れが増幅される。
鍼灸師スコア— / 5
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RELATED MUSCLES

関連筋

DEEP FUNCTIONAL ANATOMY / 深部機能解剖

棘上筋の深部機能解剖学

AT/PT国家試験レベルの深部機能解剖。アナトミートレイン理論・二関節筋協調制御・キネティックチェーン理論・最新エビデンスを統合した、本筋の完全な機能解剖学的位置づけ。

アナトミートレイン(属する筋膜連結線)

属する線:Deep Back Arm Line (DBAL) — 深後腕線

線内での役割:DBAL深層の肩起始系。菱形筋→棘上筋→上腕三頭筋長頭への張力連続を担う深層筋。回旋腱板(SITS)の最上位として肩関節求心化機能の中核。

機能的意味:DBALの「Joint centering specialist」。肩関節求心化(上腕骨頭の関節窩内維持)の最重要筋。Inman force coupleの中核として、三角筋外転モーメントとペアで肩外転を成立させる。

筋膜連結(連動する組織)

  • 菱形筋: DBAL上流(肩甲骨内側縁起始系)
  • 上腕三頭筋長頭: DBAL下流(肩甲骨関節下結節起始系)
  • 回旋腱板(SITS他3筋): 機能的協働
  • 肩峰下滑液包: 機械的近接
  • 烏口肩峰靱帯: インピンジメント部位
  • 肩甲上神経: 棘下筋と共通支配

キネティックチェーン(運動連鎖機能)

Open Kinetic Chain(OKC):OKCで肩外転初期0-15度の主働(その後三角筋中部が主役)。投球cocking、水泳recovery、テニスサーブの準備で動員。

Closed Kinetic Chain(CKC):CKCで肩外転位の支持(プランクvariation、push-up)で関節求心化機能を発揮。

上肢機能における役割:Upper Quarterで「Dynamic joint centerer」。上腕骨頭の関節窩内位置を動的に制御する求心化機能が肩機能の本質。Burkhart 2003で投球選手の機能評価で最重視される筋として確立。

パワー伝達:肩甲骨棘上窩→棘上筋→大結節上面という線で、純粋外転モーメントを伝達。

単関節筋としての協調制御

関与関節:肩関節

協調メカニズム:三角筋(特に中部)との「Abduction force couple」(Inman 1944):三角筋が外転モーメント、棘上筋が上腕骨頭求心化。両者の協調なしには生理的外転は不可能。棘上筋断裂時にdrop arm signが出るのはこのカップル崩壊による。

拮抗ペア:広背筋・大胸筋(肩内転筋群)

筋の協調(Synergy & Force Couple)

共同筋(Synergists)

  • 三角筋中部: Abduction force coupleの相棒
  • 棘下筋: 回旋腱板共同
  • 小円筋: 回旋腱板共同
  • 肩甲下筋: 回旋腱板共同
  • 前鋸筋: 肩甲骨上方回旋共同

拮抗筋(Antagonists)

  • 広背筋: 肩内転・伸展
  • 大胸筋: 肩内転
  • 大円筋: 肩内転

フォースカップル

三角筋+棘上筋 = 「Abduction force couple」(Inman 1944の古典的概念)。SITS全体での「Glenohumeral force couple」:棘上筋(上方)+ 棘下筋(後方)+ 小円筋(後下方)+ 肩甲下筋(前方)が上腕骨頭を関節窩中心に保持する。

AT/PT 国家試験対策・臨床学習

頻出キーワード

Rotator cuff tear(棘上筋断裂)Painful arc sign(60-120度)Drop arm testEmpty can test (Jobe test)Full can testCodman triangle / critical zoneNeer分類(インピンジメントstage I-III)Subacromial impingement

臨床評価テスト

  • Empty can test (Jobe test) — 肩90度外転+30度水平内転+完全内旋(thumbs down)で抵抗下挙上、疼痛・脱力で陽性
  • Full can test — Empty canより推奨される改良版(外旋位)
  • Drop arm test — 肩90度外転位から徐々に下降、痛みで保持できないか落下で陽性(完全断裂示唆)
  • Painful arc sign — 60-120度の挙上中に疼痛
  • Neer impingement test — 肩屈曲位での挙上で痛み

機能不全パターン

棘上筋腱断裂:①Articular-side partial tear(最多、投球選手)、②Bursal-side partial tear(高齢者)、③Full-thickness tear(外傷性or変性)。臨床像:①Painful arc(60-120度)、②Drop arm test陽性、③Empty/Full can test陽性、④夜間痛が特徴。Codman triangle(critical zone)の相対的乏血域で損傷が好発。Neer分類stage I(炎症・浮腫)→II(線維化)→III(断裂)。

リハビリテーション戦略

保存療法(partial tear・stage I-II):①Phase 1—相対的安静+NSAIDs+物理療法、②Phase 2—rotator cuff strengthening(empty can/full can/external rotation)、③Phase 3—scapular stabilization、④Phase 4—機能負荷。Full-thickness tear(外傷性or若年)は早期手術(arthroscopic rotator cuff repair)が標準。術後リハビリは4-6週固定→受動ROM→能動ROM→strengthening→6ヶ月で復帰。

Clinical Pearls(臨床的真珠)

  • Full can test(外旋位)はEmpty can test(内旋位)より棘上筋特異性が高い
  • Drop arm test陽性は完全断裂を強く示唆
  • 夜間痛+Painful arcは回旋腱板病変の典型所見

エビデンスベース(主要文献)

  • Codman EA 1934: Critical zone概念の提唱(古典)
  • Neer CS 1972: インピンジメント症候群の概念と分類
  • Burkhart SS et al. 2003: 投球障害肩のSICK scapula concept
  • Kuhn JE 2009: 棘上筋断裂保存療法のMOON cohort研究
徒手療法エビデンス:Mulligan shoulder MWMsが棘上筋症状で即時痛改善のRCT。肩甲胸郭関節モビライゼーション、AC関節モビライゼーション。
運動処方の科学的根拠:Rotator cuff strengthening protocol:①等尺性external rotation→②同心性ER/IR with theraband→③Full can exercise(推奨)→④機能負荷。週3回×8-12回×3セット×6週間。Reinold 2009のEMG研究に基づく運動選択が標準。

筋膜的連結・固有受容覚的役割

筋膜的連結:棘上筋筋膜は肩甲骨棘上窩から肩峰下を通り上腕骨大結節上面に至る。烏口肩峰靱帯下を通過する解剖はインピンジメントの基盤。Codman triangle(critical zone)はsupraspinatus tendonの相対的乏血域で、変性損傷の好発部位。

固有受容覚的役割:肩関節求心化の主要なproprioceptive contributor。腱内のRuffini小体・Golgi腱器官が肩関節位置覚に寄与。投球選手の機能評価で最重視される筋。

棘上筋(Supraspinatus)とは、腕の外転を始動させる回旋腱板の筋である。肩甲骨の棘上窩から起こり、上腕骨大結節の上面に停止する。外転の最初の角度を担う主動筋でありながら、その本質は上腕骨頭を関節窩へ引き寄せ、肩関節を内側から締め続ける動的スタビライザーである。

一次資料・参考文献(Primary & Authoritative Sources)

  • Standring S. (ed.). Gray's Anatomy, 42nd ed. 棘上筋(supraspinatus)と回旋腱板・肩甲上神経の標準記載。Elsevier, 2021 / 一次解剖学テキスト
  • Moore KL, et al. Clinically Oriented Anatomy, 8th ed. 肩関節と回旋腱板の臨床解剖。Wolters Kluwer, 2018
  • Schünke M, et al. プロメテウス解剖学アトラス:運動器系. 肩甲帯・回旋腱板の図譜。医学書院
  • Kenhub — Supraspinatus muscle: origin, insertion, innervation and function(英語解剖リファレンス)。Kenhub GmbH
  • NCBI StatPearls — Anatomy, Shoulder and Upper Limb, Supraspinatus Muscle(査読オープンアクセス)。StatPearls Publishing / NIH NCBI Bookshelf
  • Physiopedia — Supraspinatus(理学療法エビデンスの集約)。Physiopedia (physio-pedia.com)

一次資料・査読ソースへの直接リンク(HTTP検証済み)

下記は 棘上筋(Supraspinatus) の起始・停止・神経支配・作用について、Kenhub(標準解剖リファレンス)と NIH NCBI(StatPearls/PMC 査読オープンアクセス)等の一次・権威ソースへ直接リンクしたものです。本文の記載はこれら一次資料と相互に照合しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 棘上筋(Supraspinatus)とは何ですか?

肩の回旋腱板(ローテーターカフ)を構成する4つの筋の一つで、肩甲骨上面の棘上窩から起こり、上腕骨の大結節上面に停止します。腕の外転を始動する主動筋であると同時に、上腕骨頭を関節窩に引き寄せて肩を安定させる重要な役割を持ちます。

Q2. 棘上筋の起始と停止はどこですか?

起始は肩甲骨の棘上窩と棘上筋膜、停止は上腕骨大結節の上面です。腱は肩峰と上腕骨頭の間の狭い空間(棘上筋アウトレット)を通るため、ここで挟まれやすい構造になっています。

Q3. 棘上筋を支配する神経は何ですか?

肩甲上神経(C5–C6)です。この神経は肩甲切痕を通るため絞扼を受けやすく、障害されると外転の始動が弱まり、棘下筋とともに筋萎縮を生じます。

Q4. 棘上筋の主な作用は何ですか?

肩関節外転の始動(最初の約15〜30度)が一次作用ですが、より本質的なのは『求心位の保持』です。三角筋が腕を引き上げる際、上腕骨頭が上方へずれないよう関節窩へ引き寄せ続け、肩の支点を安定させます。

Q5. 棘上筋は回旋腱板の中でどんな位置づけですか?

棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋からなる回旋腱板のうち、棘上筋は上方に位置し外転を始動します。4筋は協働して上腕骨頭を関節窩に押しつけ、大きな三角筋が働く土台となる『肩のインナー』を形成します。

Q6. 棘上筋はどこで触診できますか?

肩甲棘の上方、僧帽筋上部の下に位置する棘上窩で深部に触れます。腕を軽く外転させると、僧帽筋越しに棘上窩での収縮を間接的に確認できます。停止部は肩峰の下にあり直接は触れにくい部位です。

Q7. 棘上筋に関わる代表的な傷害は何ですか?

回旋腱板の中で最も損傷・断裂が多い筋です。肩峰下インピンジメント(腱の挟み込み)、加齢性の腱変性・断裂が代表的で、外転時痛や夜間痛を生じます。『empty can(フルカン)テスト』で機能を評価します。

Q8. スポーツ動作で棘上筋はどんな役割を果たしますか?

投球・スイング・スパイクなど腕を振り上げる動作で、上腕骨頭を関節窩に求心させ肩の支点を保ちます。三角筋がパワーを出す前に肩を『締めて』おくこの先行的な安定が、力の伝達効率と肩の保護を両立させます。

Q9. GETTA・一本歯下駄の身体観で棘上筋はどう位置づけられますか?

GETTAの身体論では、棘上筋のような回旋腱板は『鍛える』表層のパワーではなく、関節を内側から整える固有受容のインナーです。一本歯下駄が足裏の不安定を通じて全身の求心的な安定を引き出すのと同じく、棘上筋も能動でも受動でもなく、環境への応答として肩の中心を保ち続ける中動態の安定筋として捉えます。

Q10. 棘上筋の筋線維にはどんな特徴がありますか?

持続的な姿勢保持に適した遅筋線維の比率が高く、長時間にわたり上腕骨頭の求心位を保つ働きに向いています。瞬発的な大出力よりも、肩の支点を静かに保ち続ける持久的・固有受容的な性格が強い筋です。

Reviewed & expanded 2026-06-21 ・ getta.jp 解剖学勉強図鑑
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