棘下筋(Infraspinatus)— 起始・停止・神経支配・作用・触診の完全解剖

SHOULDER / CATEGORY 03

棘下筋

Infraspinatus
起始肩甲骨棘下窩…
停止上腕骨大結節中面…
神経肩甲上神経 (C5, C6)
主作用肩関節外旋(主働)・後方安定化
ILLUSTRATION / 解剖図

棘下筋の解剖学的位置

棘下筋 (Infraspinatus)
棘下筋(Infraspinatus)/肩関節筋群
FUNCTIONAL SCHEMA / 機能スキーマ

棘下筋の神経-筋-腱-骨スキーマ

起始から停止への張力線、神経入力、運動出力を進化思考3色で可視化。シアン=感覚入力、オレンジ=協調制御、パープル=統合・進化。

SENSORY INPUT神経入力肩甲上神経 (C5, C6)COORDINATION筋腱複合体起始肩甲骨棘下窩停止上腕骨大結節中面INTEGRATION運動出力肩関節外旋(主働)・後方安定化棘下筋(Infraspinatus)/肩

SENSORY 神経入力

肩甲上神経 (C5, C6)

COORDINATION 筋腱

起始:肩甲骨棘下窩
停止:上腕骨大結節中面

INTEGRATION 運動出力

肩関節外旋(主働)・後方安定化

OVERVIEW

棘下筋とは

棘下筋は回旋腱板(SITS)の後上方を構成する筋で、肩甲骨棘下窩から上腕骨大結節中面に停止します。肩関節外旋の主働筋で、特に肩外転位での外旋(external rotation in 90 degrees abduction = ER90)が機能評価の重要肢位。投球選手の障害肩で最も評価される筋の一つ。

日常生活では物の高い位置から取り出す、髪を結ぶ、衣服を整えるなど肩外旋動作で動員。スポーツでは投球のlate cocking phase(最大外旋位生成)、テニスサーブ、バレーボールのスパイク、水泳のクロールのcatch phaseで主役。投球障害肩の予防・治療で最も重視される筋。

臨床的にはInfraspinatus tendinopathy(投球選手)、partial articular-side supraspinatus tendon avulsion (PASTA) lesionとの併発、肩甲上神経絞扼性ニューロパチー(spinoglenoid notch)が代表的。GIRD(glenohumeral internal rotation deficit)の根本に棘下筋の柔軟性低下があり、後方拘縮として臨床的に重要。

ANATOMICAL DATA

解剖学的基本データ

起始 / Origin
肩甲骨棘下窩
停止 / Insertion
上腕骨大結節中面
神経支配 / Nerve
肩甲上神経 (C5, C6)
血液供給 / Blood
肩甲回旋動脈
作用 / Action
主作用:肩関節外旋(主働)・後方安定化
・肩水平外転補助
・肩屈曲時の上腕骨頭求心化
PALPATION

触診法

肩甲棘の下方(棘下窩)で表層に触知可能(僧帽筋下部・三角筋後部に覆われる部位もある)。腹臥位で肩90度外転位、肘屈曲位での抵抗外旋(ER90test)で選択的活動を評価。
トリガーポイント:棘下窩中央にTrPが好発。肩前面・上腕外側・前腕橈側への広範な放散痛(古典的なrotator cuff referred painパターン)として現れる。
SPORT MOVEMENTS

関連競技動作

  • 野球投球・late cocking(最大外旋位)
  • バレーボール・スパイクのトロフィーポジション
  • テニスサーブ・back scratch position
  • 水泳・クロールのhand entry
  • 体操・後方支持系の保持
CLINICAL SIGNIFICANCE

臨床的意義

GIRD(Glenohumeral Internal Rotation Deficit):投球選手の後方拘縮、棘下筋の柔軟性低下が根本。臨床像:①投球側で内旋ROM 20度以上の左右差、②sleeper stretch必要、③SLAP損傷・PASTA lesionとの併発高頻度。肩甲上神経絞扼(spinoglenoid notch entrapment):棘下筋単独の麻痺・萎縮、投球パワー低下を呈する。バレーボール選手・体操選手で好発。
GETTA APPLICATION / 思想体系

鍛えるな、育てよ。
棘下筋は GETTAで「育つ」。

棘下筋は肩単独の筋ではなく、足裏から鳩尾を経由する張力リレーの終点である。GETTAの一本歯が足部に生む微小な不安定性は、骨盤・体幹を経由して肩甲胸郭関節まで到達し、棘下筋を中動態的に動員する。鍛えるのではなく育てる——孤立した肩のトレーニングではなく、全身の張力線が同期して肩を「育てる」。五歳の身体性が持っていた肩甲帯の自由度が回復し、腱優位の弾性が回旋腱板の協調を取り戻す。確率共鳴によりノイズが信号化され、棘下筋はSFAL/DFAL(上肢前面線)の一本の張力線として全身と共鳴する。
鍛えるのではなく育てる/中動態の身体性/腱優位の弾性駆動
EXAM PREP QUIZ / 国家試験対策クイズ

棘下筋・国家試験形式クイズ
鍼灸師 / 理学療法士 / アスレティックトレーナー 各5問

3職種の国家試験・認定試験頻出パターンに準拠した実践問題。クリックで即時採点+詳細解説。

Q1鍼灸師国家試験形式
棘下筋(Infraspinatus)を支配する神経はどれか。
解説
棘下筋は肩甲上神経 (C5, C6)に支配される。鍼灸臨床では神経走行を踏まえた刺入深度と方向の判断が必須。
Q2鍼灸師国家試験形式
棘下筋の起始として正しいのはどれか。
解説
棘下筋の起始は「肩甲骨棘下窩」。経穴の取穴と局所解剖の対応が国家試験で問われる。
Q3鍼灸師国家試験形式
棘下筋の触診について正しい記述はどれか。
解説
触診法:肩甲棘の下方(棘下窩)で表層に触知可能(僧帽筋下部・三角筋後部に覆われる部位もある)。腹臥位で肩90度外転位、肘屈曲位での抵抗外旋(ER90test)で選択的活動を評価。。鍼灸の取穴・刺入で必須の手技。
Q4鍼灸師国家試験形式
棘下筋の主作用として最も適切なものはどれか。
解説
棘下筋の主作用:肩関節外旋(主働)・後方安定化。経穴選定の際、運動機能との連動性を考慮する。
Q5鍼灸師国家試験形式
一本歯下駄GETTAが棘下筋に与える影響として、東洋医学的観点から最も適切な記述はどれか。
解説
GETTAは棘下筋を「鍛える」のではなく「育てる」。中動態的な張力発生=陰陽の動的バランス。確率共鳴により微細な気血の流れが増幅される。
鍼灸師スコア— / 5
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RELATED MUSCLES

関連筋

DEEP FUNCTIONAL ANATOMY / 深部機能解剖

棘下筋の深部機能解剖学

AT/PT国家試験レベルの深部機能解剖。アナトミートレイン理論・二関節筋協調制御・キネティックチェーン理論・最新エビデンスを統合した、本筋の完全な機能解剖学的位置づけ。

アナトミートレイン(属する筋膜連結線)

属する線:Deep Back Arm Line (DBAL) — 深後腕線

線内での役割:DBAL深層の外旋専門筋。回旋腱板(SITS)の後上方を構成し、肩関節後方の動的安定化を担う。投球選手の機能評価で最も重視される筋の一つ。

機能的意味:DBALの「External rotator」。肩関節外旋の主動筋として、投球cocking phaseの最大外旋位生成、テニスサーブ、水泳catchで動員される。

筋膜連結(連動する組織)

  • 小円筋: 外旋ペア(後方安定化共同)
  • 棘上筋: 回旋腱板共同
  • 肩甲下筋: 直接拮抗(内旋)
  • 三角筋後部: 外旋補助
  • 肩甲上神経: 棘上筋と共通支配

キネティックチェーン(運動連鎖機能)

Open Kinetic Chain(OKC):OKCで投球late cocking phase(最大外旋位)、テニスサーブback scratch、水泳catch phaseで主働。

Closed Kinetic Chain(CKC):CKCで肩関節の後方安定化に貢献。

上肢機能における役割:Upper Quarterで「External rotation power generator」。投球選手の外旋トルクの50-60%を担う(Burkhart 1998)。投球障害肩の予防・治療で最重視。

パワー伝達:肩甲骨棘下窩→棘下筋→大結節中面という線で、外旋トルクを上腕骨に伝達。

単関節筋としての協調制御

関与関節:肩関節

協調メカニズム:小円筋との「External rotation duo」、肩甲下筋との「Internal-External force couple」。van Ingen Schenau理論で、棘下筋は単関節筋としての一貫した外旋トルクを提供。

拮抗ペア:肩甲下筋・大胸筋・広背筋

筋の協調(Synergy & Force Couple)

共同筋(Synergists)

  • 小円筋: 外旋主動ペア
  • 三角筋後部: 外旋補助
  • 棘上筋: 回旋腱板共同
  • 前鋸筋: 投球時の肩甲骨制御共同

拮抗筋(Antagonists)

  • 肩甲下筋: 直接拮抗(内旋)
  • 大胸筋: 内旋
  • 広背筋: 内旋
  • 大円筋: 内旋

フォースカップル

棘下筋+小円筋 = 「External rotation duo」(後方安定化)。棘下筋+肩甲下筋 = 「IR-ER force couple」、上腕骨頭の前後方向求心化。投球障害肩でこのバランスが崩壊することが多い。

AT/PT 国家試験対策・臨床学習

頻出キーワード

GIRD (Glenohumeral Internal Rotation Deficit)Sleeper stretchInternal impingementPosterior capsular tightness肩甲上神経絞扼(spinoglenoid notch)Infraspinatus atrophyExternal rotation lag signHornblower sign

臨床評価テスト

  • External rotation strength at 0度abduction — 棘下筋特異テスト
  • External rotation lag sign — 受動最大外旋位を保持できなければ陽性
  • Hornblower sign — 90度外転位での外旋不能(小円筋共同)
  • Posterior capsular tightness assessment — 受動内旋ROM測定
  • Sleeper stretch position evaluation

機能不全パターン

GIRD(Glenohumeral Internal Rotation Deficit):投球選手の後方拘縮、棘下筋柔軟性低下が根本。臨床像:①投球側で内旋ROM 20度以上の左右差、②後方関節包硬縮、③SLAP損傷・PASTA lesionとの併発高頻度。Internal impingement:投球late cockingで後上方関節唇とrotator cuff articular sideが衝突。肩甲上神経絞扼(spinoglenoid notch):棘下筋単独麻痺・萎縮、バレーボール選手・体操選手で好発。

リハビリテーション戦略

GIRD治療:①Sleeper stretch(仰臥位での90度外転内旋)、②Cross-body stretch、③後方関節包モビライゼーション、④棘下筋・小円筋strengthening。投球選手の予防プロトコールにsleeper stretchを毎日組み込むのが標準。Internal impingement保存療法はrotator cuff balance trainingが核心。

Clinical Pearls(臨床的真珠)

  • GIRDは投球障害肩の根本原因、sleeper stretchが予防の核心
  • 肩甲上神経絞扼での棘下筋単独萎縮はMRIで確認
  • 外旋筋力低下+夜間痛=回旋腱板病変を必ず疑う

エビデンスベース(主要文献)

  • Burkhart SS, Morgan CD, Kibler WB 2003: GIRDとSICK scapula concept
  • Walch G et al. 1992: Internal impingementの概念提唱
  • Wilk KE et al. 2011: 投球障害肩のrehabilitation guidelines
  • Reagan KM et al. 2002: GIRDの定量化と臨床的関連
徒手療法エビデンス:Sleeper stretchがGIRDで gold standard。後方関節包モビライゼーション、棘下筋筋膜リリース、scapular mobilization。
運動処方の科学的根拠:外旋強化protocol:①等尺性ER at 0度abduction→②同心性ER with theraband→③ER at 90度abduction→④機能負荷(投球前のwarm-up routine)。Sleeper stretch(30秒×3-5回、毎日)を並行。

筋膜的連結・固有受容覚的役割

筋膜的連結:棘下筋筋膜は棘下窩から大結節中面に至る。後方関節包と密着するため、関節包硬縮(posterior capsular tightness)との機能的統合が重要。Spinoglenoid notchを通る肩甲上神経は棘下筋単独支配で、ここでの絞扼が単独萎縮を引き起こす。

固有受容覚的役割:肩関節外旋・後方の主要なproprioceptive contributor。投球selectionの精度に直結。投球選手のリハビリでsensorimotor trainingが重視される。

棘下筋(Infraspinatus)とは、肩甲骨後面の棘下窩から起こり、上腕骨大結節の中央面に停止する回旋筋腱板(ローテーターカフ)の一員である。肩甲上神経(C5〜C6)に支配され、肩関節の外旋を主動作とし、外転時には三角筋の上方剪断力に拮抗して上腕骨頭を関節窩へ引き付け、肩後方の求心性安定を担う。

よくある質問 FAQ

棘下筋の起始と停止はどこですか?
起始は肩甲骨後面の棘下窩(infraspinous fossa)および棘下筋膜の内面で、広い範囲から起こります。停止は上腕骨の大結節(greater tubercle)の中央面(middle facet)で、一部は肩関節包の後面にも付着して関節包を補強します。
棘下筋の神経支配は何ですか?
肩甲上神経(suprascapular nerve、髄節レベルはC5〜C6)が支配します。この神経は肩甲切痕を通って棘上窩で棘上筋を支配したのち、棘窩切痕(spinoglenoid notch)を回り込んで棘下窩へ入り、棘下筋を支配します。
棘下筋の主な作用は?
肩関節の外旋が主作用です。回旋筋腱板の一員として、腕を挙げる際に三角筋が骨頭を上方へずらそうとする力に拮抗し、上腕骨頭を関節窩の中心へ引き付けて肩後方の安定(求心位)を保ちます。線維の上部は外転を、下部は内転をわずかに補助します。
棘下筋は回旋筋腱板(ローテーターカフ)のどれにあたりますか?
回旋筋腱板は棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4筋で構成されます。棘下筋は小円筋とともに肩関節の後方に位置し、外旋と骨頭の後方安定を担います。前方の肩甲下筋(内旋)と前後で釣り合うことで骨頭を関節窩に求心させます。
棘下筋の触診のしかたは?
座位または腹臥位で、肩甲骨の肩甲棘の下方にある棘下窩の領域に指を当てます。肘を体側につけた状態で肩を外旋する(前腕を外側へ開く)抵抗運動を行わせると、棘下窩の筋腹が収縮して硬くなるのを触知できます。大結節へ向かう停止腱は肩峰後外側のやや下方で確認します。
棘下筋テストとは何を調べる検査ですか?
肘を90度に曲げて体側につけ、検者の抵抗に逆らって肩を外旋させ、外旋筋力を評価する検査です。筋力低下や脱力がある場合、棘下筋の腱板損傷や肩甲上神経の障害(棘窩切痕部での絞扼など)が示唆されます。
棘下筋が単独で萎縮するのはなぜですか?
肩甲上神経が棘窩切痕(spinoglenoid notch)でガングリオン嚢腫や靭帯により圧迫されると、その先で支配される棘下筋だけが孤立して萎縮します。より近位の肩甲切痕で絞扼されると、棘上筋と棘下筋の両方が萎縮します。萎縮部位の違いが絞扼レベルの推定に役立ちます。
棘下筋を損傷すると肩はどうなりますか?
外旋筋力が低下し、結帯動作や投球の減速期などで力が入りにくくなります。腱板の後方が機能不全に陥ると、外転時に骨頭が関節窩から上方へずれて三角筋の挙上効率が落ち、肩の動きが不安定になります。投球を多用するスポーツでは腱板断裂や腱の変性が生じやすい部位です。
一本歯下駄GETTAは棘下筋を含む肩甲帯にどう関わりますか?
一本歯の不安定な接地は体幹から肩甲帯まで絶え間ない微小な揺らぎを与え、骨頭を関節窩へ求心させる回旋筋腱板の働きを高頻度で促します。棘下筋による肩後方の求心性安定は、投擲や上肢の精密制御の土台です。筋で固める制御から全身を協調させる制御へ——大脳優位から小脳優位の身体へ移行する入口となります。

参考文献・一次ソース

芝生の広場をはだしで駆ける子ども

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