背部(Back)完全解剖図鑑|11筋の起始・停止・支配神経と一本歯下駄GETTA

TRUNK / CATEGORY 12

背部

Back
領域体幹
収録筋11筋
臨床例6項目
図版2枚
OVERVIEW / 概要

背部とは

背部筋群は浅層(広背筋・僧帽筋・大菱形筋・小菱形筋・肩甲挙筋)と深層(脊柱起立筋群:腸肋筋・最長筋・棘筋、多裂筋・回旋筋などの横突棘筋)に分かれる。広背筋は人体最大の幅広い筋で、上肢と下半身を架橋する独特の存在。

日常生活では姿勢維持・体幹回旋・物の引き寄せ動作・上肢の伸展動作で動員。スポーツでは水泳のpull・ロッククライミングのpull-up・ボートのストローク・パワーリフティング(デッドリフト)・ゴルフスイング(軸回旋)の主軸。Posterior Oblique System(POS)の中核で、対側殿筋との張力連結を持つ。

臨床的には腰痛(多裂筋萎縮)、Janda上交差症候群(菱形筋・僧帽筋下部弱化)、Scapular dyskinesis(肩甲胸郭機能不全)、広背筋短縮による肩関節制限など。GETTA歩行では体幹安定化筋として動員され、特に多裂筋の局所安定化が「鳩尾起点歩行」の前提条件。

ILLUSTRATIONS / 解剖図譜 (14枚)

背部の解剖学的図版で視覚的に学ぶ

横突間筋
横突間筋
体幹_背部_棘間筋_横突間筋
菱形筋
菱形筋
体幹_背部_菱形筋
板状筋
板状筋
体幹_背部_板状筋
僧帽筋
僧帽筋
体幹_背部_僧帽筋
前鋸筋
前鋸筋
体幹_背部_前鋸筋
脊柱起立筋群
脊柱起立筋群
体幹_背部_脊柱起立筋群
上後鋸筋
上後鋸筋
体幹_背部_上後鋸筋
骨
体幹_背部_骨
腰方形筋
腰方形筋
体幹_背部_腰方形筋
広背筋
広背筋
体幹_背部_広背筋
肩甲挙筋
肩甲挙筋
体幹_背部_肩甲挙筋
筋全体
筋全体
体幹_背部_筋全体
下後鋸筋
下後鋸筋
体幹_背部_下後鋸筋
横突棘筋
横突棘筋
体幹_背部_横突棘筋
MUSCLES / 収録筋

背部の主要筋(11筋)

広背筋
Latissimus dorsi
肩内転・伸展・内旋。人体最大幅の筋。下半身まで連結
僧帽筋
Trapezius
上部=肩甲骨挙上、中部=内転、下部=下制+上方回旋
大菱形筋
Rhomboid major
肩甲骨内転+下方回旋
小菱形筋
Rhomboid minor
肩甲骨内転+下方回旋
肩甲挙筋
Levator scapulae
肩甲骨挙上+下方回旋
脊柱起立筋(腸肋筋)
Iliocostalis
脊柱伸展・側屈(外側列)
脊柱起立筋(最長筋)
Longissimus
脊柱伸展・側屈(中央列)
脊柱起立筋(棘筋)
Spinalis
脊柱伸展(内側列)
多裂筋
Multifidus
深層局所安定化。腰痛との関連最大
回旋筋
Rotatores
脊椎間の精緻回旋
腰方形筋
Quadratus lumborum
骨盤側方挙上・腰椎側屈
ANATOMY TRAINS / 筋膜連結

アナトミートレイン上の位置づけ

MYOFASCIAL MERIDIANS
Superficial Back Line(SBL):脊柱起立筋。Back Functional Line(BFL):広背筋→反対側大殿筋。Spiral Line(SPL):菱形筋・前鋸筋
CLINICAL SIGNIFICANCE / 臨床的意義

代表的な臨床疾患・機能不全

  • 腰痛(非特異的)
    多裂筋萎縮との関連。Hides et al. のエビデンス
  • Janda上交差症候群
    僧帽筋上部短縮+中下部弱化、菱形筋弱化、大胸筋短縮
  • Scapular dyskinesis (SICK scapula)
    肩甲胸郭機能不全。投球肩障害基盤
  • 広背筋短縮
    肩屈曲制限・腰椎前弯増強
  • Latissimus dorsi tear
    クライマー・パワーリフター多発
  • Multifidus inhibition
    腰痛慢性化の核心。stabilization training必須
SPORTS & GETTA APPLICATION

スポーツ・GETTA文脈での活用

スポーツ関連:水泳・ロッククライミング・ボート・パワーリフティング・ゴルフ(軸回旋)・テニス・野球の打撃・柔道(引き手)。背部は上下肢パワー伝達の中継器。
GETTA文脈:GETTA歩行時の体幹安定化で動員。多裂筋の活性化がGETTAの「鳩尾起点歩行」の前提。広背筋を介した上下肢張力連結(Back Functional Line)がGETTA動作の力学的本質。
11 MUSCLES / 個別ページ

背部11筋の個別解剖図鑑

各筋の起始・停止・神経支配・作用・触診・臨床的意義・AT/PT国家試験レベルの深部機能解剖まで網羅。専用解剖図付き完全個別ページ。
DEFINITION — 背部とは(拡充・一次資料準拠)

背部(Back)とは——定義・機能解剖・一次資料

背部(はいぶ、Back)とは、体幹の後面・項部から腰部までを覆い、脊柱とそれを支え動かす筋群が層をなす領域である。 筋は、上肢帯に由来し肩甲骨や上腕骨を動かす外在筋(浅層)——僧帽筋・広背筋・大菱形筋・小菱形筋・肩甲挙筋——と、脊髄神経後枝に支配され脊柱そのものを動かす固有背筋(深層)——脊柱起立筋(腸肋筋・最長筋・棘筋)と横突棘筋群(多裂筋・回旋筋)——に大別される。腰方形筋は厳密には後腹壁の筋だが、背部として扱われる。背部は直立姿勢を保つ抗重力の柱であり、胸郭から骨盤、上肢から下肢を結ぶ連動の要をなす。以下に、各筋の起始・停止・支配神経・主作用を一次・権威資料にもとづいて示し、機能解剖と一本歯下駄GETTAとの接続、そして参考文献とよくある問いをまとめる。背中の地図を持つことは、姿勢や腰痛、肩こりといった日常の不調を読み解き、走・投・打の力の流れを理解し、そして自分の身体の深部に眠るセンサーを呼び覚ますための、確かな足がかりになる。

REFERENCE TABLE — 11筋の起始・停止・支配神経・主作用

背部11筋 検証済み解剖一覧

一次・権威資料(Kenhub/NCBI StatPearls)にもとづき、起始・停止・支配神経・主作用を検証した。色は群の別(シアン=外在筋、オレンジ=固有背筋=脊柱起立筋、パープル=横突棘筋群=深層、グレー=後腹壁の例外)を示す。

筋(和名/英名)起始停止支配神経主作用
広背筋Latissimus dorsi外在筋(浅層)T7–T12 棘突起、胸腰筋膜、第9–12肋骨、腸骨稜上腕骨の結節間溝の底胸背神経(C6–C8)肩関節の内転・伸展・内旋
僧帽筋Trapezius外在筋(浅層)外後頭隆起、項靭帯、C7–T12 棘突起鎖骨外側1/3、肩峰、肩甲棘副神経(CN XI)+頸神経 C3–C4(固有受容)肩甲骨の挙上・内転・上方回旋・下制、頸部伸展
大菱形筋Rhomboid major外在筋(浅層)T2–T5 棘突起肩甲骨内側縁(肩甲棘より下方)肩甲背神経(C4–C5)肩甲骨の内転・挙上・下方回旋
小菱形筋Rhomboid minor外在筋(浅層)項靭帯、C7–T1 棘突起肩甲棘内側端の基部肩甲背神経(C4–C5)肩甲骨の内転・挙上
肩甲挙筋Levator scapulae外在筋(浅層)C1–C4 横突起肩甲骨上角〜内側縁上部肩甲背神経 C5+頸神経 C3–C4肩甲骨の挙上・下方回旋、頸部の同側側屈
脊柱起立筋(腸肋筋)Iliocostalis固有背筋(中間〜表層)仙骨・腸骨稜・胸腰筋膜・下位肋骨(共同腱)肋骨角、頸椎横突起後結節脊髄神経後枝 外側枝脊柱の伸展、同側への側屈
脊柱起立筋(最長筋)Longissimus固有背筋(中間〜表層)共同腱、胸腰椎横突起胸腰椎横突起・肋骨、乳様突起(頭最長筋)脊髄神経後枝 中間枝脊柱の伸展、同側側屈、頭位の制御
脊柱起立筋(棘筋)Spinalis固有背筋(最内側)下位胸椎・項靭帯などの棘突起上位胸椎・頸椎の棘突起脊髄神経後枝 外側枝脊柱の伸展(最内側の柱)
多裂筋Multifidus横突棘筋群(深層)仙骨・腸骨後上棘・乳頭突起(腰)・横突起(胸)・関節突起(頸)起始から2–4椎上の棘突起脊髄神経後枝 内側枝両側=伸展、片側=反対回旋・同側側屈、椎間の分節安定
回旋筋Rotatores横突棘筋群(深層・最深)横突起(胸部で最も発達)1–2椎上の棘突起の基部脊髄神経後枝 内側枝脊柱の安定・伸展・反対回旋、豊富な固有受容
腰方形筋Quadratus lumborum後腹壁筋(背部内の例外)腸腰靭帯、腸骨稜第12肋骨下縁、L1–L4 横突起肋下神経 T12+腰神経叢前枝 L1–L4同側への側屈、腰椎の伸展、第12肋の固定(呼気の補助)
GROUP STRUCTURE — 浅層・固有背筋・横突棘筋群

三つの層を貫いて読む——背部の構造原理

外在筋(浅層)——上肢を動かす背中。僧帽筋・広背筋・大菱形筋・小菱形筋・肩甲挙筋は、発生の上では上肢帯の筋であり、脊髄神経の前枝(広背筋は胸背神経、菱形筋と肩甲挙筋は肩甲背神経、僧帽筋は副神経)に支配される。これらは脊柱そのものではなく、肩甲骨や上腕骨を動かし、上肢の力を体幹へ伝える土台をなす。広背筋は懸垂や漕ぐ動作で上腕骨を引き下げ、僧帽筋と菱形筋は肩甲骨を胸郭に引き寄せて安定させる。

固有背筋(脊柱起立筋)——抗重力の主柱。腸肋筋・最長筋・棘筋からなる脊柱起立筋は、仙骨・腸骨稜・胸腰筋膜の共通腱から立ち上がり、外側の腸肋筋・中間の最長筋・最内側の棘筋という三本の縦の柱として脊柱の両側を走る。脊髄神経後枝に支配され、両側が働けば脊柱を伸展し、片側だけなら同側へ側屈させる。直立した人間が前へ倒れないのは、この柱が絶えず張力を保つからである。

横突棘筋群(深層)——分節の安定装置。多裂筋と回旋筋は、横突起から二〜四椎上(多裂筋)あるいは一〜二椎上(回旋筋)の棘突起へ斜めに走る、最も深い層の筋である。脊髄神経後枝の内側枝に支配され、椎間ひとつひとつのレベルで微細な調整を行う。回旋筋は筋紡錘=固有受容のセンサーを豊富にもち、力を出すより「いまどこがどう動いているか」を脳に伝える役割が大きい。この深部のセンサーが眠ると、表層の脊柱起立筋が過剰に働いて硬くなり、慢性的な張りや腰の不調につながりやすい。

なぜ層が分かれるのか——発生的な背景。固有背筋は、もともと体節から背中側へ伸びた本来の背中の筋であり、脊髄神経の後枝に支配される。これに対し外在筋(広背筋・僧帽筋・菱形筋・肩甲挙筋)は、発生の途上で上肢帯や鰓弓に由来する筋が背面へ広がって覆いかぶさったもので、いまも前枝系(胸背神経・肩甲背神経)や副神経に支配される。つまり背中は、古い「体軸の筋」の上に、新しい「上肢の筋」が後から重なってできた二重構造をもつ。触れて見える表層の大きな筋はあとから来た客であり、その奥に、姿勢を司る本来の背中の柱が静かに働いている。この奥の柱を目覚めさせることが、しなやかな背中を取り戻す出発点になる。

CLINICAL & SPORT — 臨床的意義とスポーツ文脈

背部の不調と、競技動作における役割

臨床的意義。腰部の多裂筋は、腰痛のあとに選択的に萎縮しやすく、その回復が再発予防の鍵とされる(分節安定の低下)。肩甲背神経が中斜角筋を貫く部位での絞扼は、菱形筋の力低下や肩甲骨内側縁の痛みを生むことがある。広背筋の短縮は肩の挙上を制限し、僧帽筋上部の過緊張は頸肩のこりとして現れる。背部を理解することは、姿勢・腰痛・肩こりという日常の不調を読み解く地図を手に入れることでもある。

スポーツ文脈。広背筋と反対側の大殿筋をつなぐ後面のスリングは、走・投・打のすべてで対角の力を生む。投球では踏み出した脚から反対の腕へ、ゴルフやテニスでは下半身の回旋から体幹を経て上肢へ——力は背中を斜めに横断して伝わる。脊柱起立筋と横突棘筋群が体幹を一本の弾むバネとして保つとき、末端のスピードは最大化する。逆に体幹が緩めば、どれほど手足を鍛えても力は逃げる。

腰仙部の安定と呼吸。胸腰筋膜は、腹横筋・多裂筋・横隔膜・骨盤底とともに、腹腔を内側から包む一つの圧の容器をかたちづくる。息を保ちながら腹圧を高めると、この容器が硬くなり、重い物を持ち上げるときや跳ぶときに腰椎が守られる。深部の多裂筋がうまく働かないと、この圧が抜けて表層の脊柱起立筋ばかりが頑張り、腰の疲れや痛みを招きやすい。背部を整えるとは、力を込めて反らすことではなく、深部の筋と呼吸が連動して、腰仙部に静かな安定を生む状態を取り戻すことにほかならない。

FUNCTIONAL ANATOMY — 機能解剖とバイオメカニクス

抗重力の柱・対角スリング・分節安定

抗重力筋柱。脊柱起立筋と横突棘筋群は、脊柱を直立に保つ抗重力の柱である。歩行時には床反力に同期して相動的に発火し、体幹のぶれを抑える(J-STAGEの歩行筋電図研究)。

上肢‐体幹の対角連結。広背筋は上腕骨と腸骨稜・胸腰筋膜を結び、胸腰筋膜を介して反対側の大殿筋と一つのスリングをなす。歩行の対角推進——右腕と左脚、左腕と右脚——は、この後面のスリングが生み出す。背部は上肢と下肢を背中で結ぶ交差点である。

分節安定と固有受容。多裂筋・回旋筋は、椎間ひとつひとつのレベルで微調整を行う深層の安定装置であり、豊富な固有受容のセンサーを備える。大きな筋で固めるより、この深部のセンサーが働くことが、しなやかで疲れにくい背中をつくる。

一本歯下駄GETTAとの接続。一本歯下駄GETTAの不安定な支持基底は、視覚に頼らず足裏の固有受容入力を呼び覚ます。その入力は脊柱起立筋・多裂筋・回旋筋を絶えず微発火させ、抗重力の柱を立て直す。足裏から立ち上がる感覚は、体幹の後面を貫いて中心=鳩尾(みぞおち)へと収束する。これが解像度(足裏→鳩尾の七層)の後面の道筋であり、背部はその七層を後ろから支える柱である。筋で固定する大脳優位から、腱と深部筋で弾む小脳優位へ——腱優位システム五歳の身体性の再起動が、背中から始まる。

SLINGS — 筋膜スリングと後面の連結

背部を貫く後面のライン——胸郭から骨盤へ

後縦ライン(スーパーフィシャル・バックライン)。足底から踵、ふくらはぎ、ハムストリングス、仙骨を経て脊柱起立筋へ、さらに後頭部から眉まで——身体の後面を縦に貫く一本の連なりがある。脊柱起立筋はこのラインの胴体部分を担い、足裏で生まれた張力を頭まで運ぶ。立つ・歩くという行為は、この後面の縦のラインが切れ目なく働くことで成り立つ。

後機能ライン(バック・ファンクショナル・ライン)。一方の広背筋から胸腰筋膜を斜めに横断し、反対側の大殿筋・大腿外側へ至る、X字の対角ラインがある。腕を振って反対の脚を踏み出すとき、このラインが伸ばされて張力を貯め、次の一歩で解き放つ。背部は、上肢と下肢を斜めに結ぶこの対角スリングの交差点に置かれている。広背筋・胸腰筋膜・大殿筋を一つの連続体として捉えることが、走・投・打の力の流れを理解する出発点になる。

胸郭〜骨盤の連結。腰方形筋は第12肋骨と腸骨稜・腰椎横突起を結び、胸郭と骨盤のあいだの距離を保つ。横隔膜が胸郭の底で呼吸を司り、その後方で腰方形筋と脊柱起立筋が壁をなすことで、腹腔は内側から圧を保てる。呼吸と姿勢は、背部の深部でひとつにつながっている。

GETTA PROTOCOL — 背部を立て直す稽古の原理

足裏から背中を起こす——一本歯下駄の原理

一本歯下駄GETTAの一本の歯は、支持基底を意図的に小さくする。その上に立つと、身体はわずかな揺れを絶えず感じ取り、足裏の固有受容が呼び覚まされる。この揺れの情報は、脊柱起立筋と多裂筋・回旋筋という深部の柱を細かく発火させ、視覚や意志に頼らずに背骨を起こし続ける。大きな筋で「固める」のではなく、深部のセンサーで「立て直す」——これが背中における腱優位システムの働きである。

足裏で生まれた感覚は、後縦ラインを通って脊柱起立筋へ、そして体幹の中心=鳩尾(みぞおち)へと収束する。解像度(足裏→鳩尾の七層)とは、この足裏から鳩尾まで七つの層を貫いて感覚が解像していく道筋を指す。背部はその七層を後面から支える柱であり、足裏の解像度が上がるほど、背中の深部もまた目を覚ます。神経のループがまだ開いていた五歳の身体性を、足元から呼び戻すことが、背中を立て直す稽古の核心にある。一歩ごとに足裏が地面を読み、その情報が背骨を駆け上がって鳩尾へ届くとき、身体は固める対象ではなく、感じて応える一つの生き物として立ち上がる。背中はその静かな起点である。

GLOSSARY — 背部を読むための解剖用語

背部解剖の鍵語——用語ミニ事典

棘突起(きょくとっき)。椎骨の後ろへ突き出た突起で、背中の正中線に沿って手で触れる骨の連なりがこれにあたる。僧帽筋・菱形筋・脊柱起立筋・棘筋など多くの背部筋が、ここを起始または停止とする。横突棘筋群は、下位の横突起から上位の棘突起へと斜めに架かる。

横突起(おうとっき)。椎骨の左右へ張り出した突起で、腸肋筋や最長筋、肩甲挙筋、回旋筋などの付着点となる。棘突起と横突起のあいだの溝に、固有背筋が縦と斜めに走り込む。

胸腰筋膜(きょうようきんまく)。腰部から胸部にかけて背中を覆う、厚く丈夫な結合組織の膜である。脊柱起立筋を後ろから包み込み、広背筋・大殿筋・腹横筋がここに付着して張力を分け合う。後機能ラインの対角の力は、この膜を介して左右・上下へ伝えられる。背部のスリングを一つにまとめる「布」のような存在といえる。

脊髄神経の後枝と前枝。脊髄から出た神経は、まもなく後枝と前枝に分かれる。後枝は背中側へ回って固有背筋(脊柱起立筋・横突棘筋群)と背部の皮膚を支配し、前枝は体の前・側方へ向かい、四肢や体壁の筋を支配する。背部の筋が「後枝に支配されるか、前枝(腕神経叢など)に支配されるか」は、その筋が本来の背中の筋(固有背筋)なのか、上肢から移動してきた筋(外在筋)なのかを見分ける手がかりになる。広背筋・僧帽筋・菱形筋・肩甲挙筋が前枝系(胸背神経・副神経・肩甲背神経)に支配されるのは、それらが発生の上で上肢帯の筋だからである。

共通腱(きょうつうけん)。脊柱起立筋の三筋(腸肋筋・最長筋・棘筋)が、仙骨・腸骨稜・胸腰筋膜・下位胸腰椎の棘突起から一枚の幅広い腱として共通に立ち上がる、その起始部を指す。この共通腱があることで、三本の柱は下方で一つにまとまり、骨盤からの力を効率よく脊柱へ伝える。

REFERENCES — 参考文献(権威一次ソース)

参考文献・権威ソース

FAQ — 背部をめぐるよくある問い

よくある質問(背部11筋・新規9問)

背部(はいぶ・Back)とは何ですか。

体幹の後面、項部から腰部までを覆う領域で、脊柱とそれを動かし支える筋群が層をなす部位です。筋は大きく、上肢帯に由来する外在筋(浅層)と、脊髄神経後枝に支配される固有背筋(深層)に分けられます。直立姿勢の維持と、上肢・体幹・下肢を結ぶ連動の要となります。

背部の筋は浅層・中間層・深層でどう分かれますか。

浅層は上肢を動かす外在筋で、僧帽筋・広背筋・菱形筋・肩甲挙筋が含まれます。中間〜深層は固有背筋で、脊柱を伸展させる脊柱起立筋(腸肋筋・最長筋・棘筋)と、その奥で椎間を安定させる横突棘筋群(多裂筋・回旋筋)に分かれます。腰方形筋は厳密には後腹壁の筋ですが、背部として扱われます。

脊柱起立筋の起始・停止・支配神経・作用を教えてください。

腸肋筋・最長筋・棘筋の三筋からなり、共通腱として仙骨・腸骨稜・胸腰筋膜・下位胸腰椎の棘突起から起こります。肋骨角や横突起、頭側では乳様突起などに停止します。支配は脊髄神経後枝で、両側が働くと脊柱を伸展し、片側のみでは同側へ側屈させます。抗重力の主柱です。

広背筋の起始・停止・支配神経は何ですか。

起始はT7–T12の棘突起、胸腰筋膜、第9–12肋骨、腸骨稜で、人体で最も幅の広い筋です。すべての線維が集まって上腕骨の結節間溝の底に停止します。支配神経は胸背神経(C6–C8)で、肩関節の内転・伸展・内旋を行います。歩行の対角推進では、胸腰筋膜を介して反対側の大殿筋と機能的につながります。

僧帽筋を支配するのは副神経だけですか。

運動はおもに副神経(CN XI)が担いますが、固有受容の感覚線維として頸神経のC3–C4も加わる、二重の支配です。上部は肩甲骨を挙上・上方回旋し、中部は内転、下部は下制します。頸部の伸展にも関与します。

菱形筋と肩甲挙筋を支配する神経は何ですか。

大菱形筋・小菱形筋・肩甲挙筋はいずれも肩甲背神経(C4–C5、主にC5)に支配されます。肩甲挙筋にはさらに頸神経C3–C4が加わります。菱形筋は肩甲骨を内転・挙上・下方回旋させ、肩甲挙筋は肩甲骨を挙上し頸部を同側へ側屈させます。

多裂筋と回旋筋(横突棘筋群)の役割は何ですか。

どちらも横突起から、いくつか上の椎骨の棘突起へ斜めに走る深層筋で、脊髄神経後枝の内側枝に支配されます。多裂筋は起始から2–4椎上に渡り、片側では反対回旋・同側側屈を起こし、椎間レベルの分節的な安定を担います。回旋筋は最も深く、固有受容のセンサーとして姿勢の微調整に働きます。

背部の筋と一本歯下駄GETTAは、どうつながりますか。

一本歯下駄GETTAの不安定な支持基底は、視覚に頼らず足裏の固有受容入力を呼び覚まします。その入力は脊柱起立筋や多裂筋・回旋筋を絶えず微発火させ、抗重力の柱を立て直します。足裏から立ち上がる感覚は、体幹の後面を貫いて中心=鳩尾へと収束します。背部は「足裏→鳩尾」の七層を後ろから支える柱です。

背部を鍛えるとき、大きな筋と深い筋のどちらが大切ですか。

脊柱起立筋のような大きな筋で固めるより、多裂筋・回旋筋という深層の固有受容センサーを働かせることが、しなやかで疲れにくい背中をつくります。腱優位システムの考え方では、筋肉で固定するのではなく腱と深部筋で弾むことが要です。一本歯下駄GETTAは、この深部のループを再び開く道具になります。

背部の「アナトミートレイン」とは何を指しますか。

アナトミートレインは、筋を単体ではなく筋膜でつながった連続体として捉える見方です。背部では、足底から脊柱起立筋を経て後頭部へ至る後縦ライン(スーパーフィシャル・バックライン)と、片側の広背筋から胸腰筋膜を斜めに横断して反対側の大殿筋へ至る後機能ライン(バック・ファンクショナル・ライン)が中心になります。背部は、この縦と対角の二本のラインが交わる場所です。

NETWORK — 関連する図鑑・体系・ガイド

背部を、隣接する部位の図鑑・トレーニング体系・実践ガイドとともにたどる。