一本歯下駄の最大の特徴は、支持面積が極めて小さいことです。この不安定な環境下で身体を制御するためには、重心位置の精密なコントロールが不可欠となります。通常の靴では無意識に行われている重心調整が、GETTAでは意識的な努力を要求され、これにより重心制御能力が飛躍的に向上します。

一本歯という不安定な支持面上でバランスを保つためには、体幹部の深層筋群(インナーマッスル)が持続的に活動する必要があります。これは通常のトレーニングでは得られない、体幹筋群の協調的かつ持続的な活性化をもたらし、真の体幹安定性を獲得できます。

足裏は身体と地面を結ぶ唯一の接点であり、豊富な感覚受容器が存在します。しかし現代人は厚底の靴により、この感覚が鈍化しています。一本歯下駄は足裏の感覚を研ぎ澄まし、地面からの情報を正確に読み取る能力を回復させます。これにより、動作の質が劇的に向上します。

一本歯下駄でのトレーニングは、身体のバランス制御システムに継続的な挑戦を与えます。この過負荷原理により、前庭系(三半規管)、視覚系、体性感覚系の三つのバランス制御システムが統合的に発達し、あらゆる状況下での姿勢制御能力が向上します。

効率的な動作は、足部から始まり体幹を経由して上肢へと力が伝達される「動作連鎖(キネティックチェーン)」によって実現されます。一本歯下駄は、この連鎖の起点である足部での力発揮を最適化し、全身の協調的な動作パターンを構築します。

ニュートンの作用反作用の法則により、地面を押すと同じ大きさの力が身体に返ってきます。一本歯下駄は、この地面反力を最大限に活用する身体の使い方を学習させます。支持面が小さいため、地面反力の方向と大きさに対する感度が高まり、効率的な力の利用方法が身につきます。

これまでの12の原理は、最終的にこの第13原理「身体統合」へと集約されます。個別の要素が有機的に結びつき、心身が一体となった全人的なパフォーマンス向上を実現します。これは単なる身体能力の向上を超え、身体感覚の鋭敏化、自己認識の深化、そして人間本来の身体知の回復をもたらします。